ARIAとのクロスですがアリでしょうか?
「あれ?ゴロンタ?」
夕暮れの校庭を悠然と歩く一匹の猫に、紅薔薇の蕾こと福沢祐巳は声をかける。猫に声をかけてもと思われるがそれが人の性。祐巳もゴロンタが懐いてくれるとは思っていないので声をかけただけで別にゴロンタに何かをするつもりは無かった。
「ちょっと、悲しいけど………ん?」
本当は近づいて来て欲しいのにと思いながら歩いていくゴロンタを見つめると、ゴロンタは立ち止まり祐巳を見ていた。
「ゴロンタ?」
祐巳は思わず声をかけるが、ゴロンタはプイ!と頭を振って歩いていく。
「ちょっ、ちょっと、ゴロンタ」
祐巳は思わずゴロンタを追いかけた。ゴロンタは追いかけてくる祐巳のことなど無視して歩いていく。
「もう、どこに行くのよ」
祐巳は今日は薔薇の館がお休みでよかったと思った。
祐巳はゴロンタに追いつくことはせず、ゆっくりとゴロンタに合わせて歩いていく。
ゆったりとした時間。祐巳にとって心地よい時間の流れ。
「あれ?ここは?」
祐巳が気がつくとゴロンタは祐巳を連れて志摩子さんがお気に入りの桜の側に来ていた。
「綺麗」
桜は満開で、夕暮れの光を浴びて輝いていた。
「……えっ?なんで桜が咲いているの?」
季節が違う。桜は咲いている時期ではない。祐巳はそう思った。
「ニャ〜」
「ゴロンタ?」
祐巳が桜の下にいるゴロンタを見るとそこには白い狸がいた。
「狸?」
いくら子狸といわれるからといわれてもこんな場所で狸に会うこともないよねと思うが白い狸は「ぷいにゅー」と鳴いた。変な泣き声。
「えっ?」
よく見れば白い狸と思っていたのは、まん丸と太った白い猫だった。しかも、ネクタイをしていてなかなかのお洒落さんだ。
「あっ!」
ゴロンタと白い猫が走り出す。
「まって!!」
祐巳も思わず後を追う。
ザァァァァァ。
祐巳が季節はずれの桜の下をゴロンタたちの後を追って通り抜けようとしたとき。桜の花びらが霧のように祐巳を包み込む。
「なっ、なに?お、お姉さま!!お姉さま!!!!」
祐巳は最愛の人を呼ぶがその声は夕暮れの校舎に響くことは無かった。
「……ん」
あまりの桜にしゃがみこんでしまった祐巳は周囲が静かになったことに気がつき、ゆっくりと目を開く。
「ここは?」
祐巳が目を開くと、そこは古びた電車の中だった。周囲には桜の花の絨毯、壊れた窓から外を見ると草原。そして、ゆっくりと上を見る。
夕暮れの光の中に大きな桜の木が満開に花開いていた。
「綺麗」
祐巳は自分の立場も忘れ、桜を見上げる。
「ぷいにゅう」
「あっ、ネコさん?」
祐巳が変な鳴き声のほうを見るとゴロンタではなく、あの白い猫が祐巳を見ていた。
「ここは何所かな?」
祐巳は自分でも驚くほど落ち着いていたが、白い猫がいてくれるおかげなのだろうと思うと少し複雑だ。
「ぷいにゅー」
白い猫は短い尻尾を振って祐巳に着いて来なさいというように歩いていく。祐巳はこの桜の下から離れるのはまずいような気がしたが、じきに日が暮れそうなので祐巳は白い猫についていくことにした。
不安や寂しさはあるが、ここは落ち着いて行動出来ることに感謝した。もし、一人なら既にパニックになっているのは確実だ。
白い猫のあとをついて錆付いた線路を歩いていく。遠くに夕暮れの染まる桜が見えたが、祐巳は白い猫に促され急いで後を追う。
白い猫は茶色く錆びた廃線を歩いていく。
薄暗くなり始め流石に祐巳は怖くなり始める。
「ネコさん?」
「ぷいにゅ?……ぷいぷい、ぷい、ぷいにゅ、ぷいにゅ!ぷい、ぷい、ぷい、ぷいにゅー!!」
白い猫は歌うように歩き出す。
まるで、祐巳を勇気をあたえるように。
「ネコさん」
祐巳は白い猫の歌を聴きながらついていく。
「ズン、タカ、ズン、タカ、ポーン!!ズン、タカ、ズン、タカ、ポーン!!」
祐巳も何時しか歌っていた。
「アリア社長!!誰かいますかー?」
どのくらい歩いただろう。線路の先に小さな明かりと人の声が聞こえた。
白い猫が走り出し、祐巳もそれについて走り出した。
「あぁ、アリア社長!!」
白い猫が走り出し、ライト……ランタン?を持った白い服の女性にしがみつく。明かりの先には二人の女性がいた。二人とも白い服を着ていて、その一人が祐巳に気がつく。
「あら?貴女は?」
「あっ、ごきげんよう。私、福沢祐巳といいます。申し訳ありませんが、ここ何所でしょうか?」
「あらあら」
「ほぇ?」
リリアンの生徒らしく挨拶できた祐巳を金髪の女性は微笑みながら、もう一人の猫を抱えた女性は祐巳のような反応で祐巳を見る。
「ここAQUAの無人島ですよ」
「AQUA?無人島?」
AQUAの意味が分からない。無人島は分かるって、無人島?
「えぇぇぇ!!無人島!?」
「きゃ!」
「あらあら」
流石に祐巳は叫んでしまった。だが、無人島といわれては叫ぶしかない。
「ねぇ、どうしたの?」
不安になった座り込む祐巳を二人の女性は心配そうに覗き込む。祐巳の頭の中はすでにパニックになり考えがまとまらない。
「あの、携帯とか持っていませんか?」
祐巳は一先ず家かお姉さまに連絡を取ろうと思ったが、二人の女性は困った顔をしていた。
「ここはマンホームではないから携帯は使えないよ」
マンホーム?また、祐巳の知らない言葉。完全に途方にくれる祐巳を二人の女性は優しく慰め着いてくるように促す。一方の祐巳も何時までもここにいるわけには行かないので二人のあとを追う。道すがら、二人は祐巳に名前を教えてくれた。
一人は灯里さん。どこか祐巳に似ている。
もう一人は、アリシアさん。灯里さんの会社の先輩で温和そうな人。二人はARIAカンパニーという会社で働いているらしい。それで社長があの白い猫でアリア社長というようだ。
「これって」
祐巳は二人に連れられ海辺にたどり着く。海といっても波は穏やかでサーフィンなどは無理だろう。その穏やかな暗い海に白い船が浮いていた。
だが、それは普通見る船というよりは……。
「……ゴンドラ?」
そう、修学旅行で乗ったゴンドラだ。ただ、そのゴンドラは真っ白で漕ぎ手である灯里さんにとても似合っていた。
灯里さんが漕ぐ白いゴンドラは暗い海を進む。祐巳は灯里さんたちにいろいろと質問をして教えてもらう。ここが火星で今はアクアと呼ばれていること。
灯里さんたちはネオ・ヴェネツィアと呼ばれる街でウンディーネと呼ばれるゴンドラでの観光業を営んでいること。祐巳は最初修学旅行でのことを思い出し、何処かの町が町おこしで始めたのかと思っていた。
そして、祐巳がいた時代よりもはるかに未来であること。
お互いの話に、祐巳も灯里さんたちも信じられないものを見ているように見つめあう。だが、祐巳の方にはすぐに現実が突きつけられる。
灯里さんの漕ぐゴンドラの先にネオ、ヴェネツィアが見えてきたからだ。
修学旅行で見た街並み。その上に浮かぶ大きな島。行きかう空飛ぶ乗り物。
「嘘?!」
祐巳はその一言だけで精一杯だった。
灯里さんの白いゴンドラはゆっくりと街の先に浮かぶARIAカンパニーに着く。
「さっ、上がって」
まだ、呆然としている祐巳をアリシアさんが手を引いてゴンドラを降り。祐巳は、ゴンドラをなおしてきた灯里さんとアリア社長、アリシアさんたちにお世話になり、夕食をご馳走になった。
「それにしてもアリア社長が連れてきたのなら何かの意味があるのでしょうけど」
「そうですね。でも、過去のマンホームからなんて」
夕食はおいしいパスタだった。祐巳はお腹が空いているとは感じていなかったが、やっぱり空いていたのか全部食べてしまった。
マンホームとは地球のこと。祐巳はなぜか緑茶を頂きながら二人がそれほど祐巳の話に疑問を持っていないことに気がつく。普通なら絶対に信じられないことだが、灯里さんたちは意外にも祐巳の話に驚きながらも信じているようだった。
「……あぁ、ありましたよ。リリアン女学園」
「えっ、本当」
話をしながらパソコンを弄っていた灯里さんが不意に声を上げる。灯里さんはマンホームと通信してリリアンを調べてくれていたようだ。
「リリアン……すごいですね。四百年以上の歴史がありますよ。今もお嬢様学校で、今でも祐巳さんと同じ制服のようですね。あと、伝統は……あの、これ」
「うん、間違いない。薔薇の館です」
灯里さんのパソコンの画面には祐巳が良く知っている写真が載っていた。
「あっ、でも、今は文化財に成っていて使われてはいないようですね……あぁ、生徒会のホームページもあるみたいですよ」
そう言って灯里さんは山百合会と書かれたページを開く。
そこには高等部のロザリオの伝統や三色の薔薇さまの話が載っていた。残念ながら現薔薇さまの写真は無かったが。
「えっ?」
祐巳は画面を見ながら凍りつく。
「どうしたの祐巳ちゃん?」
「薔薇さまの名が……」
祐巳が見つけたのは三色の薔薇さまの名前だった。一つはロサ・ギガンティア。一つはロサ・フェティダそして最後にロサ・カニーナ。
「紅薔薇の名が無い」
これだけの伝統が残っていながらどうして紅薔薇の名が消えたのか?祐巳がここにいることと関係あるのか、それとも別の要因でなくなったのかそれは分からないが今までで一番のショックを受けたのは確かだった。
祐巳はショックのあまりそれ以上画面を見るのをやめたが、それ以上のことは結局何も分からなかった。その後は、お風呂に入り灯里さんのベッドで祐巳と灯里さんと二人丸い窓の外に見える二つの月を見ながら眠りに着いた。
疲れは感じていなかったが、祐巳はベッドの中で灯里さんにいろいろ聞こうと思っていたものの、疲れはあったのだろう簡単に眠ってしまった。
起きたら自分の家のベッドだったらいいなと思いながら……。
「祐巳ちゃん、祐巳ちゃん、起きて」
祐巳は揺さぶられて目を覚ます。
丸い窓の外には青い空が見え、祐巳は自分を起こす相手を見る。一瞬、相手が誰か分からなかった。
「あっ、灯里さん!!」
祐巳は慌てて今の自分を思い出し起き上がる。
「きょうわ!!」
起き上がってアリア社長の顔が目の前にあることに驚いてしまう。ドキドキしながら息を整え。
「ごきげんよう。灯里さん、アリア社長」
「おはよう。さ、もうすぐアリシアさんが来るからそうしたら朝食にしようか」
「あっ、はい」
祐巳は慌ててリリアンの制服に着替え灯里さんのお手伝いに急ぐ。
「あらら、そんなに慌てなくても」
「でも、ただお世話になるわけにも、何か手伝えることがあったら言って下さい」
「それじゃぁ、お手伝いしてもらおうかな」
「はい」
祐巳が手伝いを始めるとすぐにアリシアさんがやってきて、三人とアリア社長とで朝食をいただく。
「それで、祐巳ちゃんはこれからどうしたいのかしら?」
食事の後、アリシアさんは食後のお茶をいただきながら祐巳に聞いてくる。祐巳としてはどうにかして元の場所に戻りたいが、一先ず戻るための手がかりと一緒にこの土地で暮らす方法を考えなくてはいけない。
「アリア社長、元の場所に連れて行ってもらいたいのですが?」
「ぷいにゅ〜」
元の場所に戻る最大の手がかりのはずであるアリア社長は先ほどから食後のお眠りタイムに入っていた。
「アリア社長〜」
「あらあら、アリア社長たら困ったこと」
あんまり困った様子は無くアリシアさんは微笑む。
祐巳も困ったなと思いながらも慌てないのは現実感が少ないせいだろう。唯一、寂しいのはお姉さまに合えないことだ。
「ねぇ、アリシアさん。祐巳ちゃんをどうにか元の世界に帰せないでしょうか?」
「そうね。アリア社長が関わっているみたいだし、このままにもしておけないわね」
祐巳は少しホッとした。本当なら関係ないと祐巳を放り出すことも出来るはずだからだ。
「あっ、でも、お二人はお仕事があるのでは?」
「ええ、だから、申し訳ないのだけど。調べるのは仕事が終わってからでいいかしら?」
「ぷいにゅ〜」
アリシアさんがそう提案したとき、突然、眠っていたアリア社長が起き上がり祐巳を見てから玄関に向かう。
「あらあら、アリア社長たら」
「祐巳ちゃんを見ていましたが、着いてこいと言っているみたいですね」
「えっ?」
「祐巳ちゃん、少しアリア社長について行ってみたら?もしかしたらそのまま戻れるかもしれないし」
祐巳は灯里さんたちに促され昨夜と同じようにアリア社長を追いかけた。
アリア社長は祐巳を連れて街を歩いていく。どうも、アリア社長は祐巳を散歩に連れ出したようだ。祐巳は散歩どころではないのだけどと思いながらも、昨夜、灯里さんに教えてもらった街のことを思い出す。
それは街のリズム。
小道─カッレ。
広場─カンポ。
橋─ポンテ。
運河─カナレッジョ。
それは本当にリズムのような流れ。
「ぷいにゅう」
「アリア社長?」
アリア社長の後を着いてカッレを進む。やわらかい潮風が頬を撫でていった。
「わぁ!!」
カッレを抜けた先にはネオ・ヴェネツィアの街を一望する風景が広がっていた。
「凄い」
「ぷい!ぷいにゅう!!」
アリア社長はなんだか誇らしげに胸を張って立つ。火星猫って本当に立つんだぁと思いながら、祐巳はおかしくなって笑った。アリア社長と散歩してみて少し分かったことがある。ここは似ているのだ時間の流れが、リリアンに。だから、祐巳は落ち着いていられるのかもしれない。
ただ、祐巳の理解力を超えているだけかもしれないが。
その後も祐巳はアリア社長と散歩を続け、少し広いカナレッジョに出る。
「アリア社長〜、祐巳ちゃん!!」
「あっ、灯里さん」
昨夜の白いゴンドラに乗った灯里さんが手を振っていた。祐巳は蔦子さんがこの街に来たら大変だろうなぁと考えつつ、アリア社長と一緒に灯里さんのゴンドラに向かう。
「お仕事ですか?」
「うん、いまお客さんを降ろして来たところ。アリシアさんと違ってまだプリマに成り立てだから、お客さんを探しにゴンドラ乗り場まで行かないといけないから、あはははは」
灯里さんは笑うが、プリマとは一人前と認められているウンディーネのこと。それだけでも祐巳は凄いと思う。
「これから帰るけど乗る?」
「あっ、はい」
祐巳は灯里さんのゴンドラに乗る。ゆっくりと白いゴンドラが動いていく。
「祐巳ちゃん」
「はい」
「アリア社長とどうだった?何か帰る方法とか手がかりは見つかった?」
「いえ、何も……」
「そう」
祐巳が少し落ち込んだように呟いたので灯里さんは少し暗い顔をした。
「でも」
「でも?」
「でも、私、この街が少し好きになりましたよ。こんな出会いでなければずっと住んでみたいそう思えます」
「えっ!本当!!」
「ええ、本当です」
この街は本当に素敵だと思う、祐巳の世界の遥か未来のはずなのに古きよき時代の名残が見えて、まるでネバーランドのようなおとぎの世界。でも、ウエンディが目を覚ますように祐巳はお姉さまの元に帰りたい。帰れるかどうかは分からないが……。
「ねぇ、祐巳ちゃん」
「はい?」
「よければ、帰り方が分かるまでウンディーネの練習してみない?」
「はい?」
灯里さんは少し照れくさそうだ。
「ですが、私は……」
「うん、分かってる。でも、せっかくこのネオ・ヴェネツィアに来ているんだし、駄目かな?」
祐巳は少し悩む。気持ちとしては一刻も早くお姉さまの元に帰りたい、だが、同時に右も左も分からないこの土地での暮らしも考えないといけない。今の祐巳に駄々っ子のような態度は許されないのだ。
普段からお姉さまに考えて行動しなさいと言われていたのがこんな場面で役に立つとは、マリア様でも思っていなかっただろう。だが、祐巳はお姉さまとマリア様に感謝した。ここで泣いていても何も進まないからだ。
「そうですね」
祐巳は小さく呟いて考える。
「……少し、考えさせてください」
それでも結論は早々出ることはない。
祐巳の言葉に灯里さんは残念そうだ。確かに今の祐巳に頼れるのはARIAカンパニーだけだがそれがすぐに結論に結びつくことはない。
そうこうしているうちに灯里さんの漕ぐゴンドラはARIAカンパニーに到着する。アリシアさんはまだ戻ってきていないようだ。
「祐巳ちゃん、ゴンドラ置いてくるから先に入っていて」
「はい」
祐巳はアリア社長とゴンドラを降りて、ARIAカンパニーに入る。
プルルルル!!プルルル!!
電話が鳴っていた。
プルルルル!!ピッ!カッチャ『はい、ARIAカンパニーです。お仕事のご依頼てん…「え?、あぁ、留守電かぁ、残念。仕方ないか」』ガッチャ!プー。プー。
「あっ?!」
留守電と分かり簡単に切れた電話。いくらモニターに顔が映っても、留守番電話が無機質なものであることは変わりないようだ。それに、祐巳はモニターに映る相手の顔を見てしまった。相手は子供連れの家族のようだった。きっと、アリシアさんか灯里さんのゴンドラに乗りたかったのだろう。もしも、これが留守電でなかったら相手は電話を切っただろうか?
祐巳は考える。今の自分に出来ること。
さっき、灯里さんの言葉に考えると言ったのは祐巳自身がお世話になる灯里さんたちに何が出来るのかわからなかったからだ。ただ、お世話になるのは小心者の祐巳には心苦しい。でも、電話の応対程度なら祐巳にも出来そうだ。
「あの、灯里さん!」
「なに?どうしたの?」
「先ほどの話、やらせてもらって良いでしょうか?私、ゴンドラどころかただのボートさえ漕いだことないけど……それに、戻れるときが来たら戻ってしまうかも知れませんけど」
「あは!」
「もちろんよ。祐巳ちゃん」
灯里さんといつの間にか戻ってきたアリシアさんが頷く。祐巳が言った言葉は、祐巳自身かなり身勝手だと思ったが、二人は笑って手を差し伸べてくれた。
祐巳は思う。少しでも前に進むために、今の最善を尽くそうと。
両手に手袋をして、白いARIAカンパニーの制服を着込む。少しだけ、リリアンの制服を見て、ロザリオをリリアン制服のから取り出し、ARIAカンパニーの制服の下にしまった。
「よし!!」
ドアの前の鏡を見て帽子直して部屋を出た。
「ごきげんよう!!今日からお世話になります。福沢祐巳です!!よろしくお願いいたします!!」
そして、祐巳はその日から、ARIAンパニーのペアとしての扉を開いた。
大好きなお姉さまの元に戻る日を思いながら、今を進むために……。
「「ようこそ、ネオ・ヴェネツィアへ!!」」
灯里さんとアリシアさんの声が、ARIAカンパニーに響いた。
「ぷいにゅー!!!」
こ、こんなので大丈夫でしょうか?OKならそのうちにでも……一応、マリみてですが、基本的に私、祐巳ちゃん属性なのでこうなりました。
あと、ぽわぽわした感じの話が好きなものでごめんね。