なんだか嫌な夢を見たような気がして目が覚めた。
昨日はなかきよをやって、お姉さまが目覚ましをセットして寝たんだっけ。
ぼんやりとした頭で回りの状況を確認する。----部屋が暗い、茶色い明かりだけが照らしている。
起床時間の六時半にはまだ早いようだ。周りからはそれぞれ規則正しい寝息が聞こえている。
私だけが目を覚ましてしまったのか。
もう一度寝ようと思いながら、右隣りの乃梨子ちゃんの横顔が･･･

見えない。

すーすーと言う寝息はするし、布団が微かに動いているということは。
と、そっと布団を捲ってみると･･･まるで亀のように両手足を縮めて丸くなった乃梨子ちゃんが居た。
意外と面白い寝相だ。快活な乃梨子ちゃんとは思えない可愛い姿。
面白いものをありがとう、と左隣りも見てみると･･･

令さまの足があった。

えーっと、どうなっているのかな？と足元を見てみると、そこには令さまの顔があった。
布団を被ったままで１８０度逆向きになってる。
なかなか器用だと思った。ま、令さまは運動もやってるし、無意識でも体を動かしているのかもしれない。
まー、そういうこともあるよね、と右斜め上の由乃さんを見る･･･

うつ伏せ？枕に顔がめり込んでるんですけど。

良く見ると、直立不動？ぴんっと真っすぐな所は由乃さんらしいと言えばらしいんだけど。
ちょっと気持ち悪い寝相だと思う。
せめて仰向けに寝ようよ、由乃さん。
ねぇ、お姉さまもそう思いますよね？と今度は左斜め上を見ると･･･

怖っ！

こっちを向いてるみたいだけど、髪の毛が顔にかかっていて･･･祥子さまと言うよりも･･････貞子さま？
うん、なんだか井戸から現れて、ＴＶの画面から這いずり出てきそうな怖さですよ。
右手をこっちに伸ばしてるのも余計に怖さが増してます。
うーん、お姉さまと一緒に寝る時は先に起きないようにしよう。
うんうん、と頷きつつふと思う。志摩子さんはどんな寝相だろう？
あれだけお淑やかな人が布団の上で暴れてる姿は想像出来ないなー。と真上を見てみると･･･

居ない？どこ？

よーく目を凝らすと、布団の向こう側、部屋の端っこで大股開きで大の字になった志摩子さんが居た。
パジャマの上着の裾が捲れお腹が丸出しだ。もしもこれが浴衣だったら、ほとんど半裸？
もしかして、自分でも寝相が悪いの知ってる？
その姿は色気も何もあったものじゃなかった。小林くんや高田くん達、花寺の男の子に話したら絶望のあまりさめざめと涙を流すかも。

十人十色というけれど、山百合会のメンバーだけでもこんなにすごい姿が見られるなんて。
蔦子さんや真美さんが知ったら、何カ月くらいリリアンかわら版のネタにされるだろう･･･。
ま、朝の話題が出来たと思えばいいや。みんな寝相に注意しようね、って話そう。そう思いつつもう一度眠りにつくのだった･･････。







「祐巳！祐巳！起きなさい」
「もう、祐巳さんってばいつまで寝てるのよ」
「しかし、祐巳さまはすごい寝相ですね」
布団の上に立つ五人が見下ろしているのは、両膝を抱えるように･･･そして、パジャマのズボンを半脱ぎでお尻丸出しな祐巳の姿であった。