【1426】 好きですと伝えたい貴女に会えてよかった  (亜児 2006-05-01 05:32:31)


★祐巳の代が3年生。前回同様、乃梨子にはが妹いません。
 そんな状況で迎えた卒業式のお話。


 先生方というのはどうして姉妹での送辞・答辞にこだわるのだろうか?
一昨年の蓉子さま・祥子さまの一件に起因しているような気がする。
乃梨子も私も途中でこみあげるものがあって、所々詰まったものの、
なんとか泣かずに自分の役目を果たした。

 式が終わり山百合会のメンバーで、蔦子さんに写真を撮ってもらう。
マリア像の前でたくさん写真を撮ってもらった。祐巳さん・由乃さん。
山百合会で一緒に過ごした3年間は決して忘れない。ありがとう。
瞳子ちゃん・菜々ちゃん。これから乃梨子と一緒に山百合会を
よろしくね。


 高校生活の最後は乃梨子と一緒に過ごしたかった。私は乃梨子を連れて
乃梨子と初めて出逢った桜の木の下へとやってきた。桜はまだ3分咲きと
いったところ。乃梨子が桜の木を見上げる。私も同じように桜の木を見上げた。
ここでの出会い・小寓寺での再会・マリア祭での宗教裁判・ロザリオの授受・・・。
2年間。言葉にすればたったの3文字だけど、私にとってこの2年は
とても充実していて、忘れることが出来ない大切な時間。それは堂々と
胸を張って言える。桜の木を見上げることをやめた私たちは向かい合っていた。
二条乃梨子。私の可愛い妹。この子がいなければ私のこの1年はどうなって
いたのだろうか?今日は素敵な旅立ちの日。そんなことを考えてはいけない。
しばらく無言で見つめあった後、私は口を開いた。

「乃梨子。」
「はいっ。」
「みんなと一緒に山百合会をリリアンをよろしく頼むわね。」
「はいっ。お姉さまみたいにみんなから慕われる白薔薇さまに
 なってみせます!」
「うふふふ。がんばるのはいいけど、私の真似をする必要なんてないわ。
 貴女には貴女にしかできない白薔薇さまがある。」
「・・・・・・お姉さまっ・・・・・・。」

 乃梨子の目から涙がこぼれる。式ではきっと我慢していたのに違いない。
私は乃梨子に近づいて優しく、しっかりと抱きしめた。今、私の胸にある
気持ちを伝えるのは私のワガママなのはわかっている。それでも今日という日に
それを伝えないことはきっと後悔するに違いない。耳元でそっと囁く。

「乃梨子。私は貴女のことが好き。心の底から貴女に
 出会えてよかったと思っているわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 乃梨子の身体が震えているのがわかる。乃梨子の髪をそっと撫でる。
乃梨子の顔を上に向けて私から唇を重ねる何度目かのキスは少しだけ
乃梨子の涙の味がした。

「・・・お姉さま。私もお姉さまのことが大好きです。」



 乃梨子の顔にはまだ涙のあとがあったけど、とてもいい表情をしていた。
これなら安心して旅立てる。私たちはもう一度抱き合った。校門から出る時は
一度も振り返らなかった。私には新たな人生を。乃梨子には素敵な出会いを。
マリアさま、どうぞ私たちを見守っていてください。


(終わり)



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