【1438】 私だけの特権二人のじゃれあい並々ならぬ  (若杉奈留美 2006-05-03 11:38:26)


その1・旧世代編(祐巳1年生)


「まったくもう、吉田先生ったら人使いが荒いんだから…」

祥子は薔薇の館への道を急いでいた。
先ほどまで吉田先生に、明日の授業で使う資料のコピーを頼まれていたのだが、
思ったより資料が多く、時間がかかってしまったのだ。

(今頃祐巳は薔薇の館で淋しく姉の来るのを待っているのかしら…
待っていなさい祐巳、もう少しで着くから!)

多少妄想モードに足を突っ込みながら、祥子はあくまで優雅に急いだ。

「ごきげんよう祐巳!遅くなっ…て…」

ドアを開けたとき、祥子の目に映ったものは。

「ほら祐巳ちゃん、君の指定席はこ・こvv」
「いやん聖さま、膝抱っこなんて…(///_///)」
「遠慮しないの。祐巳ちゃんはいつもかわいいね〜」
「聖さまだってかっこいいですよ〜、うふふ」

(おのれ佐藤聖!人の妹の髪をなでるな気安くさわるなっていうか抱きつくな、
祐巳、そこから今すぐ降りなさい…!)

噴火寸前の祥子を止める声がひとつ。

「怒ってもムダよ祥子、ああなったら何言っても聞かないから」

蓉子が頭を抱えていた。

「ですがあれをどうにかしないと…!」
「できるものならとうの昔にしてるわよ。今日は頭が痛いから会議は中止よ」

そして蓉子はさっさと帰ってしまった。

「あっ、お姉さま…っ!」

取り残された祥子はしばしドアの前で考えあぐねたが、やがて意を決したように、
携帯でどこかへと電話し始めた。

「もしもし、祥子ですけれど。いいこと、1分以内に来るのよ!」

やがて1分後。

「いくら妹とはいえ…」

何も知らずじゃれあう2人に。

「いくら先輩とはいえ…」

迫り来る異様な風体の集団。

「許さなくてよ…」

「うわっ、ちょっと待て祥子!早まるな!!」

「あなたたち2人を…」

「お姉さま、おやめください!お許しください!」



「粛清します!!」



ドカーン!!
薔薇の館、再び抹消(ちなみに1回目はG退治にきた業者が抹消した)

「ふっ…小笠原爆弾部隊をなめたら身の破滅よ?」

あとには黒こげになった聖と祐巳。
2人はやっと一言発した。

「「…だめだこりゃ。次行ってみよう」」



その2・次世代編(紅薔薇さま=佐伯ちあき)


「え〜、まずは生徒たちから要望の多い、ミルクホールのメニュー増加の件についてですが…」


「はい、真里菜さま、あ〜んvv」
「あ〜ん…おいしい。やっぱり美咲ちゃんのケーキが一番ね」
「真里菜さま、もうひとつデザートがあるんですよ」
「な〜に?」
「それは、わ・た・しvvふふふ」

会議そっちのけでいちゃつく白薔薇さまと紅薔薇のつぼみの妹。
ちあきの怒りメーター、60突破。

「…これにつきましては、地元ケーキ店のご協力を仰ぐことに…」

心なしかちあきの声が震えている。

(ちあきさん、今はこらえて!)
(でも菜々さん、こいつら2人なんとかしないと会議が…!)
(ムダですよ、こうなったら誰にも止められませんから、ちあきさま)
(そうそう、私もさゆみも理沙ちゃんも、馬に蹴られるのは嫌だから)

智子はといえば…

(へ〜、やるじゃん真里菜さま。この落とし方、見習わなくちゃ。メモメモ)

おいおい妹を止めないのか。

「んもう〜美咲ちゃんったら、か・わ・い・いvv」

次の瞬間、ガターン。
なんと2人は、キスしたままの態勢で床に倒れこんでいたのである。
ここに至って、ちあきはついに爆発した。

「今すぐ全員避難して!あの2人は残してね」

言われるがまま避難するメンバー。
そしてちあきが壁のスイッチを押した、そのとき。
薔薇の館の四方八方から、豪雨のような放水攻撃。
ついでに天井から氷も降ってくる。

「「うわっ、うわ〜っ!」」

「今日の会議はこれにて終了。さて、帰りましょうか。
ああ真里菜、美咲ちゃん、あと始末お願いね(魔笑)」
「「わ、わかりましたっ!!」」





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