「ハハハハハハ、私だよ、怪盗ロッサ・フェティダ、私が怪人百面相だ」
「……って祐巳さまなんの練習ですかそれは。自分で自分を笑いものにしてどうするのです?それにこれは『怪盗』紅薔薇シリーズ(【No:126】の続き)であって、怪人ではありませんことよ」
「違うよ瞳子ちゃん、笑いものになるんじゃなくて、笑いをとるの。それにがちゃがちゃで出たお題なんだから、細かいことをごちゃごちゃいわないの」
「う"ー。それでも今の笑い方には注文をつけさせていただきますわ」
「笑い方?そんなに変だった?」
「ええ。同じ笑うのでも、状況によっていろいろあるのですわ。たとえば――そうですわね、声を出さずに笑う場合でも、白薔薇さまが微笑むのと、黄薔薇のつぼみがニヤリとするのと、祐巳さまがへらへら笑うのとでは全然違いますよね」
「うわぁ、傷つくなぁその言い方。でも確かにわかるような気もする。志摩子さんがニヤリと笑った日には身の危険を感じるもの」
「まあそういうことです。そして声を出して笑う場合でも同じなのです。いいえ、台詞にある分、表現は簡単なのですわ」
「こうやって会話だけで進めていく場合は特にそうだね」
「ええ。でも先ほどの祐巳さまの台詞には感情表現が足りないのです」
「感情表現?」
「はい。祐巳さまには実際に体験していただいたほうが早いかも知れませんね。――えいっ」
「ちょ、ちょっと瞳子ちゃ――ヘ、はは、ふひゃひゃひゃ、あひゃひゃほへ、や、やめ、はひょふひゃ、やめ瞳、はは、――ふぅ。突然くすぐるなんてひどいよ、瞳子ちゃん。祐巳、泣いちゃうからぁ」
「祐巳さまこそ突然キャラ変わらないでください。それより、判っていただけまして?それが、感情がこもっているというのです」
「そうなの?じゃあ―――
ヘ、はは、ふひゃひゃひゃ、あひゃひゃほへ、私だよ、怪盗ロッサ・フェティダ」
「ああもう、台詞部分をコピ&ペーストしてしかも平坦に読まないでくださいっ。私が言いたいのは、台詞が最初にあるのではなくて、まずくすぐったいという感情があって、その感情の発露として台詞があるのだということですわ」
「それならそうと初めから言ってくれればいいのに(ぷちぷち)」
「そこで最初に戻りますが、悪役笑いというのはあくまでも気障でなければならないのです。相手がどんなにがんばっても自分には敵わないのだという絶対の自信をもって笑い飛ばすのです。何の裏付けもない、薄っぺらな自信ではいけないのですわ」
「おーほっほっほ。あなたではミーには敵わないザンス」
「ぺらっぺらじゃありませんかっ」
「フォッフォッフォ……」
「そうそう……ってバルタン星人?!」
「あれ?瞳子ちゃんもバルタンさんとお友達なの?」
「も、って……? とにかくそれも違いますっ!」
「ねーねー、お手本見せてよ」
「仕方ありませんわね。それでは(すぅ)
ハハハハハハ、ウワッハッハッハッハ。私だよ、怪盗ロッサ・フェティダ、
――いかがです?最初の『ハハハハハハ』はもう少しさわやかに、柏木の優お兄さまのように笑ってもいいと思います。後半はもっと豪快に笑ったほうがよいのですが、私もまだまだですわ」
「そんなことないよ、瞳子ちゃんはすごいよ。あ、でも」
「なんですの?」
「市立体育館に着いたよ」
「つづく」
「結局ストーリーをまったく進めないままですのね」
「うん、今は何を書いてもネタバレになるかもって思っちゃうから」
「でも新刊では祐巳さまがバルタン星人とお友達に」
「うわぁそれ言っちゃだめ」