【1471】 あなたと二人でちょっぴりオトナ味  (雪国カノ 2006-05-14 21:25:44)


まえがき。
えー私のサイトに足をお運び頂いている匿名希望さまからのリク作品です(笑)百合要素(16禁くらい?)を含んでますのでご注意を…管理人さま、アウトな様でしたら削除お願いします。

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少しだけ騒がしいリビングに由乃さんが戻ってきたのを見て祐巳は立ち上がる。

「――皆入ったよね?」

わかっていることだけど念の為確認した。

(私が入ったら種火落としちゃうし…落とした後でまだだった、なんて笑えないしね)

「ええ。皆お先に頂かせてもらったわ。後は祐巳さんだけよ」

志摩子さんがそう言ってくれた。これで祐巳も一安心。

「じゃ、福沢祐巳。お風呂行ってきます♪」



7月のとある土曜日。今日は祐巳の家に合宿と言う名のお泊り会なのだ。

薔薇の館で、昨日から両親も祐麒も留守だと話の種にしていたら由乃さんと菜々ちゃんが『女の子一人は危ない!ここは合宿よ』なんて声を揃えて言いだして。

実はまだ話の続きがあったのに白薔薇姉妹がのほほんとOKを出したものだから、黄薔薇姉妹によってどんどん進めらていく。なぜか紅薔薇姉妹はおいてけぼりで。

そんな訳で急遽決定した『祐巳さんが危ないのは見過ごせないから山百合会合宿in福沢家』だった。

(楽しい夕食。そして今に至る、と。でも由乃さんもネーミングセンスないような…)

リビングを出るときにそう思った祐巳だった。

◆◆◆

コックを捻ると勢い良くお湯が吐き出される。全身にシャワーの雫を受けながら暫くそのままでいる。

祐巳は今日これからのことを考えると楽しくて仕方がなかった。

(二人になれないのが…ちょっと残念だけど)

大好きなあの子の顔を思い浮べて、抱き締められないのを淋しく思う。…でも。

(昨日も…泊まりに来てたんだし。合宿だけど今日も、なんて思うのは贅沢だよね)

お湯を止めながら、欲張りだと自分に苦笑い。そう。話の続きとは、あの子が昨日から泊まりに来てくれていたことだった。

気を取り直して髪の毛を洗いにかかる。シャンプーでわしゃわしゃと洗うのが実は好きだったりするのだ。子供の頃は祐麒とウルトラマンだのサリーちゃんのパパだのやって遊んだりもした。

「――ふんふんふふん♪」

次は体、と鼻唄混じりにスポンジを手に取った所で。

――カラッ

「へ?」

突然扉が開けられた。何事かと祐巳が振り返ったその先にいたのは、さっきまで頭に思い描いていた――バスタオル姿の瞳子だった。いや、頭の中ではちゃんと服を着ていたのだが。

「お背中流しますわ」
「……え?」

瞳子は祐巳がいいとも駄目とも言わない内にさっさと中に入ってくる。呆然としていた祐巳だったけど、カラッと扉の閉められる音で我に返った。

「と、瞳子!ななな何してっ」
「…だからお背中を流しにって今さっき言ったではありませんか」

言ってることが理解できない。何が何だかわからなさすぎてもう言葉すら出ない状態だ。金魚のように口をパクパクさせて、そして自分が何も身に付けてないことに、はたと気付く。

「き、きゃぁぁぁ!」
「…お姉さま。そんなに騒がなくとも宜しいでしょう」

今更ながらに悲鳴をあげて瞳子に背中を向けたら呆れられた。

「スポンジ、貸してくださいな」
「あ…ちょっと!」

言ったそばからスポンジを奪い取られた。取り返そうとするも『駄目です』と突っぱねられて敢えなく失敗。スポンジは既にボディソープがつけられて泡々になっている。こうなると祐巳に為す術はなく仕方なく諦めた。

(…本当は嬉しかったりするんだけど)

瞳子が祐巳の背中を流してくれている、と思うと自然に頬が緩んでくる。

「痛くないですか?」
「うん。大丈夫。むしろ丁度良くて気持ちいいよ」

丁寧に、でも肌を傷つけない程度の力で。背中越しに瞳子の優しさが伝わってくる。思ったことを口にすると気を良くしたみたいでスポンジがやたらとリズミカルに弾みだした。

「ふふ♪背中は済みました。ではこちらを向いてください」
「?」

こちら、とは即ち瞳子のいる方で…とつらつら考えてやっと答えに辿り着く。

(って…ええええ!?ま、前も!?)

「ほらお姉さま」
「いっ、いいよ!こっちはいいから!!」

祐巳は全力で拒否する。が瞳子も引く気はないみたいだ。

「何言ってるんですか。早くこっち向いてください」
「やだ!!自分でするってばっ」




――擦った揉んだの言い争いの末、祐巳は何とか勝利を(じゃんけんで)もぎ取った。瞳子には先にお湯に浸かってもらっている。むすっとしていて見るからに不満そうだ。

「お姉さま。これ、何ですか?…桃?」

今も不機嫌なのかと思っていたらそうでもないらしい。湯船に浮かんでいる布袋をこれと指差して聞いてきた。

「んー?…ああ、うん。桃の葉だよ」
「へぇ…桃の葉風呂ですか。珍しいですわね」
「そうかな?まぁ蜜柑とか菖蒲の方がメジャーだよね……瞳子。もうちょっとそっち寄って」

お湯を掬って遊んでいた瞳子と向かい合わせになるように湯船に身を沈める。

福沢家のお風呂は広い。大人一人がかなりゆったりできる程のスペースがある。まぁ一般家庭に比べたらというだけの話で、瞳子や祥子さまの家には足元にも及ばないに決まってるけど。

「香りがいいでしょ?それにね。桃の葉は汗疹とかかぶれにも効くんだよ」

トロッとしたお湯を掬って笑顔を向ける。そして暫く桃の香りを楽しんでいたら…あることを思い出した。

「あーっ!!」
「な、何です?」

祐巳が急に大声をあげたから瞳子を驚かせてしまったみたいだ。

「皆は!?瞳子がここにいること、気付いてるんじゃないのっ!?」
「そのことでしたら大丈夫ですわ。皆さんは今頃、乃梨子さんが持ってきて下さった映画を御覧になってるでしょうから」

何だそんなこと、みたいな顔して澄まして答えてくれる。

「映画?乃梨子ちゃんが?」
「…気を利かせてくれたんです。わざわざ部屋の明かりまで消してくれて」
「気を利かせる?何でまた…」

瞳子の言ってることはわからないことばっかりだ。

(誰に気を利かす必要なんてあるんだろう?それに電気を消す理由って何?)

「………瞳子は」

一人?マークを飛ばしながらうんうん考えていると瞳子が俯いて何か呟いた。

「え?」

聞き取れなくて問い返すとがばっと顔をあげて…

「瞳子はお姉さまと二人になりたかったんですっ」

と言った。いや、どちらかというと叫んだに近かった。

「確かに昨日も二人で過ごしましたわ!でもそれだけじゃ足りないんですっ!もっと一緒に…今日もっ」

瞳子は早口で捲くし立てた。喋るスピードに比例するように顔が赤くなっていく。

「瞳子…」
「二人になりたいって思ってたのは……瞳子だけなのですか?」

ぽつり、と洩らす瞳子。その瞳には涙が浮かんでいて不安気に揺れている。

(同じこと…瞳子も思ってたんだ)

今にもその涙を溢しそうな瞳子を安心させたくて微笑みと共に言葉を紡ぐ。

「そんなことないよ。私も…思ってた。瞳子と二人になりたいって」
「お姉さま…」

抱き寄せようとして、一点に目を奪われた。そこには紅い痕。鮮やかな紅い花が一輪…昨夜、祐巳が咲かせた花。

白桃のような滑らかで白い胸元が薄赤く色付いて、目立たない筈なのになぜか更に際立って見えて、思わず息を飲んだ。

(ちょっと…まずいよ…)

慌てて目を逸らす。目に涙を浮かべて全身がほんのり赤く染まっている瞳子は綺麗だった。

「お姉さま?」

訝しんだ瞳子は顔を背ける前の祐巳の視線を追っていく。

「あ…これ…。昨日の?」
「――っ!」

自分が見ていたものに気付かれて祐巳は肩を震わせた。瞳子はそんな祐巳を見て何を思いついたのか含んだような笑みを浮かべる。

「昨日お姉さまがつけたものですわね。…あら?お姉さま。どうしたんですの?」
「別…に。何でもないよ」

さっきまでの不安に彩られた儚い表情は消えて、代わりに楽しむような妖しい微笑み。意識しないようにしてるのを完全に見透かされている。

「ね…お姉さま。キスして下さい」
「なっ!な…に言って…」

ぱしゃっと水音を立てて瞳子が距離を詰めてくる。近づくことで肌が触れ合い祐巳の鼓動をより一層早めた。

「お姉さま」
「とう…こ…」

頬を一撫でされて唇が重ねられた。甘い痺れが祐巳を襲う。

「ん…んんっ」

息をつく暇も与えられずに深く口付けられる。奪うように、だんだん激しさが増していく。

(これ以上は…だめっ…止まれなく…なっちゃう!)

「み、皆がっ」

堪らなくなって祐巳は声をあげた。既に手には力が入らなくなっていたけど無理矢理に体を離す。荒い呼吸を整えようと一つ深呼吸。

「…そろそろ出ないと。皆気付くし…もう出よう」

返事を待たずに先に立ち上がった。一呼吸分間をおいてから『仕方ないですわね』と言う瞳子の声を背中に聞いて浴室を後にする。




(あんな瞳子…初めて…)

――思い出しただけで頭がクラクラする。体が熱いのは…きっと。お風呂の所為だよね?


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