【1484】 ドリル魔術どりるみるきーぱんち目からドリル  (くま一号 2006-05-17 20:13:00)


(なななな、なんなんですか、このタイトルは!!! 瞳子許せませんわ)

− 出ちゃったものはしかたないだろう。

(つまり要するに簡潔にまとめて言うと、クロスオーバーでやりますのね。そりゃあ、今日、第六巻(和訳)の発売日で、盛り上がってますけど、今までこのクロスオーバーはぜっっったい誰かやってますわよ)

− 二番煎じも気にしないのがくまのいいところだからいいんだ。

(いいところなんですかあああぅぅ)




† ドリー・ポッターと賢者の石 †

 リリアン通り四番地の住人、ミナコ・ダーズリー、マミ・ダーズリー夫妻は、「おかげさまで、私どもは『どこから見ても『まとも』な人間です』」というのが自慢だった。不思議とか神秘とかそんな非常識はまるっきり認めない人間で(でもフィクションは大暴走しても認めるらしい)摩訶不思議な出来事が、マリアさまの庭の彼女らの周辺で起こるなんて、とうてい考えられなかった。

 ミナコ氏は『穴あけ瞳子』を製造している、松平電動工具有限会社の社長だ。



(ちょぉぉっと待ったあぁぁ。ナレーター!! やっぱりくっきりはっきりこのネタですのね。少なくとも七千八百回は使われたネタだと思いませんの? なんですかドリー・ポッターって!)

− 登場人物がナレーターに話しかけちゃいけないね。

(その、無駄にさわやかで、いやみなくらいにイヤミな声はスグルお兄さまですのね)

− よくわかったね。いやあ、そこまでおだてられると照れるなあ、瞳子。

(おだててませんっっ。いきなり、三つめの文から『穴あけ瞳子』ってなんなんですか、穴あけ瞳子って)

− 原文通りだよ。

(うそ。……ほんとだ……って『穴あけドリル』じゃないですかぁorz。ここここ、こんなの翻訳の時にわかりやすいように書き換えたに決まってますわ)

− じゃ、原書を持ってこようか。ほら、ブルームズベリー版の英国バージョンだよ。

(えーと、いきなり冒頭ですよねえ)

− 読んであげよう。"Mr Dursley was the director of a firm called Grunnings, which made 『DRILLS』 . " ほら、間違いないだろう。

(あああああ、そこだけ大文字全角二重カギ括弧付きにしなくてもよいのですわあぁぁぁぁ。やめましょう。即刻おやめください、お兄さま)

− 主役だぞ。

(は?)

− 女優が主役を振られて、役をえり好みしてもいいのかな?

(うぐ)

− そんなこというから、彼女の配役は教えてあげないよ。

(わわわ、わたくしは、祐巳さまがどの役をやろうと関係ないのですわ。ええ、関係ありませんとも。たとえ誰が相手役であろうと、演じきるのが女優というものです)

− 祐巳ちゃん、なんて一言も言ってないけどね。

(あわわわ、それはそのあの、ですから、やりますわ、やりますからつづけてくださいませ、スグルお兄さま)

− うむ。


 ミナコ氏は『穴あけ瞳子』を製造している、松平電動工具有限会社の社長だ。




(だあかあらあ、瞳子じゃなくてドリルぅぅぅぅ)

− どっちでも同じじゃないか。

(同じじゃありませんっ)

− もう、とにかく先に行くぞ、瞳子。


 ミナコ氏は『穴あけ瞳子』を製造している、松平電動工具有限会社の社長だ。
すらり、として意外にスタイルがよく、腰まで伸ばした髪をポニーテールにしているのがチャームポイントである。マミ氏の方は、ばっさり切った短髪を七三にわけて、なんの飾りもない大きなピンを三つ目立たせて、いかにも『書くぞ』という雰囲気をただよわせている。二人とも垣根越しにご近所の様子を詮索するのが趣味だったので、この髪型が便利なのだ。ダーズリー夫妻には、ヒデミという女の子がいた。どこを捜したってこんなにデキのいい子はいやしない、というのが二人の妹馬鹿の意見だった。

 そんな、絵に描いたように満ち足りたダーズリー家にも、たった一つ秘密があった。

−−あのポッター一家のことが知られてしまったら一巻の終わりだ。
 ダーズリー家の家風とはまるっきり正反対だったからだ。

 ポッター家にも小さな女の子がいることを、ダーズリー夫妻は知ってはいたが、ただの一度も会ったことがない。



 さて、ある火曜日の朝のことだ。物語はここから始まる。
 窓の外を大きなたぬきが滑空していったが、二人とも気がつかなかった。
ミナコ氏が家を出て通りに出たところで、初めておかしいぞ、と思った。猫が地図を見ている? ネコ耳のメイド喫茶のアルバイトが出てきたんだろう、と、言い聞かせ、町はずれまで来ると、なんと、マントを着た集団がいた。旗幟に「青田刈られ隊」とか「つっこまれ隊」とか書いてあったような気がしたが、ひたすら見ないことにして、とにかくオフィスに着いた。

 ミナコ氏のオフィスは十階で、いつも窓に背を向けていた。そうでなかったら、今朝は穴あけ瞳子に集中できなかったかも知れない。真っ昼間からタヌキが空を飛び交うのを、ミナコ氏は見ないで済んだ(見たら記事にできたのに)が、たくさんのひとが目撃した。

 いつものように、朝礼の前に社歌が流れる。ミナコ氏作詞のこの曲で、一日の仕事を始めるのだ。

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 ドリ〜ル ドリ〜ル あなたの街の〜♪
 逢いたい 逢いたい 祐巳さまに逢いたい〜♪

 細川可南子が尾行(つけ)てゆく
 扉の陰に佐藤聖
 地球の平和を乱すやつらさ〜〜〜♪

 松平ドリ〜ル工業
 ダイヤモンドドリル ダダッダー!!
 松平ドリ〜ル工業
 電動モーター 大地に響け!

 壁に穴あけ 家に穴あけ 大地に穴あけ
 東へ西へ〜 あける〜 あける〜

 松平ドリ〜ルこーーーぉーーぎょーーーーー  あーーーーーー

 んじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃ♪

 どりーる あーうと♪

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 今日も、この騒々しい歌と共に、仕事が始まる。



(ちょっとーー。待てやコラ。社名かわってるやんけ。電動工具じゃなかったんかい。だいたい、どりるあうとってなんやねん、オラ)

− 瞳子、言葉遣いが悪くなったね。

(そういう問題じゃないでしょう、スグルお兄さま)

− ここはすらっとスルーしてほしかったんだけどね。関係ないけど瞳子、スグル、とカタカナで呼ぶのはやめてくれないか。

(どうしてですの?)

− いや、なにか額にいやな気を感じるんだけど。

 そこへ、さっきの緑色のマントを着た、『乃梨子さまにつっこまれ隊』がどどどどどどどどど、と乱入して、無言でナレーターの額に黒マジックで『肉』と書いてそのまま走り去っていった。

−ああああああ、ボクはマッチョは嫌いなんだよぉーーー

(なんか、まとまりもなにもないですわね、これ、投稿ボタン押すんですか?)

−つづかない。


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