【1485】 スペシャルデラックスみんなでやろうか?  (? 2006-05-18 00:20:39)


スポットライトに浮かぶ人影。椅子に座って俯いた少女が一人。顔を上げる。
「みなさん、ごきげんよう。私は福沢祐巳。タヌキとか、百面相とか色々と言われていますが、
 そうではありません。ただのこの物語の語り手です。そこのところ決して間違えないように」
すっと、指差す。その方向には池があって、大きな桃が浮いていた。
「今から私は、ある有名な物語の真実を語ろうかと思います。それでは、お楽しみください」
スポットライトが消える。


「ねぇ、私の出番って本編にあるの? へ? マイク入ってる? うわ――――」


昔々、ある私立リリアン女学園・高等部の薔薇の館に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんの名前は佐藤聖さま、おばあさんの名前は小笠原祥子さまと言いました。
「ちょっと、なんでよ!? 聖の相手は私のはずでしょ!?」
……そして、蓉子さまの出番はまだのはずですが、なぜだか出てきてしまったようです。
「あのね祐巳ちゃん。そんなことを聞いているんじゃないの。私は『可南子ちゃん』『はい』……」
蓉子さまが何事も無く立ち去ったあと、おじいさんは山へ芝刈り「えー、そんなの面倒くさい」……。
芝刈りに「そんな事より、祐巳ちゃんと遊びたいな」素直に行ってよ……。
芝刈りに行くと栞さまが「え? マジ!?」……ようやくおじいさんが芝刈りに行きました。
ついでに縛られてしまえ、とナレーターが思っていると、次におばあさんが川へ洗濯に行きました。
「ちょっと祐巳、私はおばあさんではなく、お姉さまよ」
おばあさん、早く川へ洗濯に行ってください。
「今後、私は祐巳に『おばあさん』と呼ばれても、返事をしないことにしましたから」
早く川へ行ってくれると、あとでネコミミ付けて『お姉さま大好きニャン』と言っ「行くわよ」……。
おばあさんがマリアさまのお庭にある池で洗濯をしていると、
「祐巳。これは池っていうのよ」とナレーターにツッコミを入れてきます。
ナレーターが無視していると、川上から「この池に川上も何もあったものではないわ」大きなモノ? 
由乃さん。これって桃だよね? 間違えてるよね? 何を考えながら『モノ』なんて書いたのかな? 
あ! そういえば、祐麒のってあんまり大きくないのよ。なんで知ってるのかって? この間偶然、
お風呂で「やかましい!早く続けろ!」川上から大きな桃が流れてきました。祐麒気にしてたんだね。

おばあさんが、なんとか桃を「重かったわ」「瞳子は重くなんてありません!」家まで持って帰ると、
「嘘だと思うのなら、祐巳さまに聞いてみて下さい。瞳子の体の事は祐巳さまがよくご存知ですわ」
「どういう意味なのかしら?」
「ふふん。祐巳さまは祥子お姉さまよりも、瞳子を選んだのですわ」
桃とおばあさんがケンカを始めてしまいました。
二人が息詰まる攻防を繰り広げていると、ちょうどそこへ、
「ごきげんよう。今、帰ったよ」
なんだか荒い息で、体のあちこちに縄か何かの痕を付けたおじいさんが帰ってきました。
「ごきげんよう、おじいさま」
桃から、次々に飛び出てくるドリルのような物を避けながらおばあさんが挨拶を返しました。
「余所見をしている暇はないですわよっ!」
それを見て、益々ヒートアップする桃。
「美味しそうな桃ね」
と、言ったおじいさんの腹部を、桃から飛び出たドリルらしきものが直撃しました。
「やたらと殺傷力の高い桃ね……」
おじいさんがそう言い残して、うつ伏せになって倒れました。
今のはとても危険な倒れ方です。おじいさんは大丈夫なのでしょうか? 
「よくもおじいさんを!」
「次は祥子お姉さまの番ですわっ!」
おばあさんと桃が同時に飛びました。空中で交差して、床に着地します。
「くっ!?」
桃が、がくりと膝をつきました。
「勝負ありね」
おばあさんが誇らしげに言います。
次の瞬間、桃が真っ二つに割れて、中からとても可愛い『私の』瞳子が生まれました。
「ゆ、祐巳っ! 正気なの!?」
「勝負には負けましたが、それでも祐巳さまは瞳子のものですわ」
桃から生まれたばかりの瞳子が、おばあさんに向かってニヤリと笑いました。
「くっ、あなたの名前はドリルよ」
悔しそうにしながら、おばあさんは瞳子をドリルと名付けました。
「な、何を仰っているんです?」
「瞳子ちゃんを拾ったのは私よ。それなら名前を付ける資格くらいはあるでしょう?」
「横暴ですわ! 祥子お姉さまの意地悪!」
そんな事を言っても、どうにもなりません。残念ながら、親は強いのです。
こうして、桃から生まれた瞳子はドリルと名付けられました。

復活したおじいさんと不貞腐れているおばあさんが、二人して無理やりドリルにご飯を与えていると、
一杯食べさせると一杯分、二杯食べさせると二杯分と、食べさせた分だけドリルが大きくなりました。
「も、もう食べられません――――」
「もっともっとたくさん食べていいのよ、ねぇ、お母さま」
「ええ、まだたくさんあるもの」
おじいさんとおばあさんの後ろには、今なお、山ほど料理を作っている清子小母さまの姿があります。
「祥子。いくらなんでもドリルちゃんが可哀相だと思う」
流石にドリルを可哀相に思ったのか、おじいさんがおばあさんにそう言いました。
「ギ、ギブ。もうギブアップですわ……」
ですが、その前にドリルは倒れてしまいました。

ある日のこと、ドリルは夢を見ました。悪い事をする鬼たちを次々に倒して大活躍する夢です。
そのせいで、ドリルは無性に鬼退治がしたくなってきました。
本当に突然だったのです。神の啓示です。電波ともいいます。なんということでしょう。 
きっと春の陽気に頭をやられ「祐巳さま」、これは運命だったのです。
この鬼婆のいる家から逃げ出すチャンスです。
ドリルはおじいさんと鬼婆に向かって言いました。
「鬼婆って誰のことかしら?」
まだ鬼婆のセリフの番ではありません。
「ねぇ祐巳。もう一度だけ聞くわ。鬼婆って誰のことなのかしら?」
あわわわわわ……ど、ドリルはおじいさんと、世界で一番お美しいおばあさまに向かって言いました。
「鬼退治に行きたいのですわ」
「はぁ?」
「ああ、ドリルがどんどんおかしくなってしまうはっ!?」
おじいさんに必殺の右ドリルをお見舞いするドリル。
なんだかドリルばかりで意味がよく分かりません。
ねぇ、由乃さん、これ勝手に直してもいいのかな? え? うん、そうね。分かった、やってみる。
じゃ、少し前からやり直すね。用意はいい、瞳子、聖さま?
「大丈夫です」
「え? ちょっと祐巳ちゃん、ドリルならさっき喰らったよ? まさかまたドリっ!?」
おじいさんに必殺の右ドリルをお見舞いするスパイラルドリル「ってなんですかそれはっ!?」。
おじいさんは今度こそ完全に沈黙しました。
「祐巳さま、私の質問に答えてください!」
スパイラルドリルとは、瞳子の為に私が名付けた、最も美しいスパイラルなドリルのことなの。
「意味はよく分かりませんが、祐巳さまがそこまで言われるのでしたら、それで構いませんわ」
気を取り直して、おばあさんの方に振り返るスパイラルドリル。
「とにかく、鬼退治に行きたいんです!」
「仕方ないわね。お母さま、日本一のきび団子をお願いします」
「日本一のきび団子ね、はいどうぞ」
後ろでまだ料理を作っていた清子小母さまが、おばあさんに日本一のきび団子を渡しました。
渡された日本一のきび団子を見て、おばあさんが驚いています。
「お母さま。ソフトボール大の、きび団子は初めて見ましたわ」
「だって、祥子さんが日本一って……」
「いえ、いいです。これはこれで立派ですもの。スパイラルドリルはこれを持っていきなさい」
こうしてスパイラルドリルは日本一のきび団子を手に入れました。
「ついでに面倒だから、私がお供となる者たちを連れて来たわ。来なさい下僕ども」
「イヌです……」
「サルです……」
「キジよ……」
上から順に由乃さん、菜々ちゃん、江利子さまです。
やたらと元気のなさそうな下僕どもです。本当に使えるのでしょうか?
「サルとキジはそれなりに使えるわね。イヌは夜のお供にでも使いなさい」
「瞳子の夜のお供は祐巳さまですから、そんなイヌはいりませんわ」
「イヌ、イヌって何度も言うな!」
二つの長い三つ編みを振り乱してイヌが牙を剥いて怒っています。
とても凶暴そうです。おばあさんはああいいましたが、実は一番使えるのかもしれません。
ですが、目が赤くなって口からは涎を「誰がよ!?」由乃さ「へぇ……」……冗談だから怒らないで。
ともかく、これでお供の下僕も揃ったようなので、さっそく鬼が志摩に向かうスパイラルドリル。

あっと言う間に鬼が志摩に辿り着きました。武道館です。ここなら少々暴れても大丈夫です。
ですが、その扉となるべき場所には二匹の巨大な「日光先輩に月光先輩っ!?」祐麒は黙ってて。
二匹の巨大な鬼がいました。下っ端のクセにやたらと強そうです。
スパイラルドリル一行は困りました。
みんなで集まって、どうしようかと悩んだ末に、一つの結論を出しました。
「こういう時こそ、日本一のきび団子ですわっ!」
ええ!? きび団子の使い方が違うんじゃない? 「祐巳!」すみません。つい驚いてしまいました。
スパイラルドリルは袋からきび団子を取り出すと、二匹の巨大な鬼に投げつけました。
「痛い」
「参ったぁ」
なんだかすごくワザと臭い悲鳴です。プンプンして「祐巳、はしたなくってよ」すみません。
このままではなんですので、スパイラルドリルはなんとなく、ドリルを発射してみました。
「え?」
「ちょ……」
「なんとなくドリル・発射、ですわっ!」
『なんとなく・ドリル』ではなく『なんとなく、ドリル』だったんだけど「そうなんですの?」……。
ううん、別にいいよ気にしないで。
スパイラルドリルは見事に、二匹の鬼を扉ごとぶち破って退治しました。
「祐巳、ちょっと酷すぎないか?」
祐麒が先程から何か言ってますが、可南子ちゃんに粛清「了解です祐巳さま」「え――」されました。
鬼が志摩の中に入ったスパイラルドリル改め瞳子が見たのは、数匹の鬼達です。
「何で名前を戻したのよ?」呼びにくいんです、お姉さま。
「ふ、よく来たね。瞳子ちゃん」
瞳子にそう言ってきたのは、黄色い鬼の令さまです。
「なにが『よく来たね』よ?」
「令さま、覚悟!」
「令ちゃんのばかーーーー!」
「うわぁぁ」
ああっ! 江利子さまと菜々ちゃんと由乃さんに瞬殺されています。
タコ殴りです。酷い、私には正視できません。どうして自分達の姉妹にここまでできるのでしょう? 
「あなた達、その位でやめておきなさい。もう気絶してるじゃない。はぁ、なんで私がこんな役を」
そうぼやいているのは安達ヶ原の鬼婆こと、蓉子さま。
「なんで私だけ名のある鬼婆なのよ!」
じゃ、赤鬼で「それはそれで弱そうで嫌だわ」我侭ですね。
実は令さまなんて茨城童子だったんですよ。
「いくらなんでも出てくる時代がムチャクチャよ?」
いいんです、そんなもの。そんな事よりも、そんな名のある令さまが瞬殺だったんです。
名などあっても仕方のな「祐巳さん、私にケンカ売ってるのね?」……あ、桂さんいたんだ。
「小道具の係で……」……ガンバレ。
ええっと、何を話してましたっけ? まぁいいや、とにかく頑張って下さい。
「仕方ないわね。瞳子ちゃん、私が相手をしてあげるわ」
「そういえば少し前に、おじいさんが栞さまといいコトをしていましたわ」
「聖ーーーー!」
赤鬼が物凄い形相で走っていきました。その姿はまさしく鬼婆。
瞳子が、ほっとした表情をしながら、ハンカチでちょっぴり滲んだ涙を拭いています。
「お姉さまも、ああ見えて昔はマトモだったのよ……くすん」お姉さま、泣かないで下さい。
さて、黄鬼も赤鬼も退場してしまいました。
このまま鬼が志摩を制覇できる! と瞳子が思った時、辺りに声が響きました。
「志摩子さんはこの私が守る」
そう言って現れたのは、
「酒呑童子・乃梨子、参上!」
なんだかヤケになっているようにしか見えない白鬼でした。
これは流石の瞳子でも苦戦は必死です。
「掛かってこい、瞳子!」
なにしろ相手はかの有名な酒呑「ドリルインパクト!」…………。
乃梨子ちゃんの胸に瞳子のドリルが突き刺さり、そして――――。
一発でした。一発で乃梨子ちゃんが沈みました。恐るべしドリルインパクト。
まさか……、まさか当たった瞬間、爆発炎上するとはっ!!
しかもドリルは無傷? ありえません! すさまじい技です。アレ欲しいなって思ってしまいました。
瞳子があまり役に立ってない下僕どもと手をとりあって喜んでいると、恐ろしい声が響いてきました。
「騒々しいわ」
ふわふわ巻き毛の、それは美しい鬼です。
きっと彼女が鬼が志摩のボスです。アレが温羅に違いありません。
「ごきげよう瞳子ちゃん」
「ご、ごきげんよう」
挨拶をしただけなのに、なんという迫力。これが鬼が志摩のボス……、と瞳子は思った。
同時に、話の展開が早い! 
『一刻も早くこの話を終わらせたい』という作者の心意気(?)が伝わってきますわね、とも思った。
でも戦わなくてはなりません。ヤツの持つ金銀財宝を奪って末永く幸せに暮らすためです。
「金銀財宝?」
温羅こと志摩子さんが不思議そうな顔をしました。
「そんなもの、ここにはないわ」
「え?」
衝撃の事実に固まってしまう瞳子。
志摩子はそんな瞳子に向かってビニール袋を取り出した。
アレは――――!
「銀杏ならあるけれど、いる?」
臭っ! 志摩子さん、それしまって! と瞳子は思いました。
「思っているのは祐巳さんよね?」
ナレーターにツッコムのはやめて。
「それで、どうするの?」
「どうしましょう、祐巳さま?」
だから、ナレーターに聞くのもやめて。……仕方ないなぁ、ちょっと待っててね。今、考えるから。
……ええっと、志摩子さんと一緒に二人で仲良く暮らすのはどうかな?
「祐巳さまがいないとイヤですわ」
「私は乃梨子がいないとイヤよ」
じゃあ、四人で。
「いいわよ」
「いいですよ」
決まりました。



「祐巳ーーーー! 私の元に帰ってきてーーーー!」
おばあさんが夕陽に向かって叫んでいます。でも祐巳は帰ってきません。
「聖、今度はこのコスチュームで愉しみましょうね」
安達ヶ原の鬼婆がフリフリレースのピンクの服を手に持って、ニヤリと笑いながら言っています。
「お、鬼……」
おじいさんは以前より、大分痩せたように見えます。


「令ちゃんはどっちを選ぶの!?」
イヌが黄鬼をじろりと睨みながら尋ねています。
「ええっと……」
おろおろとして答えられない黄鬼。
「もちろん私よね、令?」
キジが両腕を組みながら黄鬼に聞いています。
「え、 ええっと……」
やっぱり答えられない情けない黄鬼。
「由乃さま、いつまで続けるんです? 早く家に帰りたいんですけど……」
サルが溜息をつきながら呟くように言いました。


「祐巳さま、はい。あーん」
瞳子が、瞳子手作りの卵焼きをナレーターに食べさせてくれました。
「んぐんぐ。ありがと瞳子。ねぇ、志摩子さん」
祐巳はずっと気になっていた事を聞こうと思いました。
「どうしたの?」
志摩子さんが首を傾げました。
「二人は銀杏ばかり食べてて大丈夫なの?」
そう。
さっきから志摩子さんと乃梨子ちゃんは銀杏しか食べていません。
「ふふ、私は鬼だもの」
なるほど、だから大丈夫なのか、と祐巳は思いました。
けれど……。
「乃梨子ちゃんは?」
乃梨子ちゃんを眺めながら祐巳。
「乃梨子も鬼だもの」
同じように乃梨子ちゃんを眺めながら志摩子さん。
「た、助けて……体が痛いよぅ…………」
なんだか切羽詰った様子の乃梨子ちゃん。
「……鬼って、……それでいいの?」
祐巳は冷や汗が出た。



こうして……、
瞳子は、祐巳と志摩子さんと乃梨子ちゃんの四人で、鬼が志摩で末永く幸せに暮らす事になりました。
めでたしめでたし。




あ、静さま。エンディングの歌をお願いします。
任せて、と静さま。
「久しぶりの休暇で、帰ってきたらこんな大役を貰えるとは。リリアンで歌うのも久しぶりね……」
流れる曲はもちろんあの曲。
アヴェ・マリア。
静さまが息を吸った。
両手を胸の前で合わせて、歌い始める。
とても美しい歌声が響いた。




「萬福馬利亞 滿備聖寵者 主與爾皆焉 女中爾為讚美――――」


ええっ!? 中国語!? 

静さまどこに留学してるのっ!?



――キャスト――

桃太郎(ドリル スパイラルドリル) 松平瞳子
おじいさん 佐藤聖
おばあさん 小笠原祥子
イヌ(下僕一) 島津由乃
サル(下僕二) 有馬菜々
キジ(下僕三) 鳥居江利子


鬼が志摩の鬼 日光先輩・月光先輩
茨城童子(黄鬼) 支倉令
安達ヶ原の鬼婆(赤鬼) 水野蓉子
酒呑童子(白鬼) 二条乃梨子
温羅(うら、と読む) 藤堂志摩子


お手伝い 小笠原清子
粛清係 細川可南子
観客A 福沢祐麒
? 久保栞
小道具 桂さん

歌 蟹名静


ナレーター 福沢祐巳


脚本・監督 翠


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