【15】 お姉さま志摩子が暗躍  (くま一号 2005-06-11 23:59:02)


【No:14】のつづきです。

朝早く、古い温室で。
「ごきげんよう、令さま」
「ああ、志摩子、ごきげんよう。志摩子の呼び出しなんてめずらしいね」
「いえ、この間のウサ耳のお礼が言いたくて」
「あははは、乃梨子ちゃんめろめろになったんだって?発明部まで秘密で手を回してメカを作らせた甲斐があったわ。(ロザリオちらつかせながら『作って(にこっ)』って由乃が、由乃ぉ・・)」
「令さま、どうかなさいましたか?額に汗が」

「い、いやなんでもない。ところでその後の猫耳と狸耳はどうだったの」
「そうそう、写真をお持ちしたんですよ、これが猫耳瞳子ちゃんに迫られる祐巳さん」
「おー、祐巳ちゃんかわいっ」
「こっちが瞳子ちゃん」
「うわっ、おろおろ度いつもの3倍(当社比)」
「それで志摩子はこれを見せるためにわたしを呼び出したのかな?」
「いいえ、令さま、」
「そうじゃなくて、こーーーんなめろめろ顔の由乃さん、見たくはありませんか」
「・・・・・・・・・」
「令さまが『由乃?』って上目遣いに見上げると由乃さんは・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」

「令さま、令さま、あああ異世界に飛ばないでください令さまっ」
「わかったっ」
がしっと志摩子の肩に両手を掛ける。
「全霊をかけて作るっ。発明部も手芸部も美術部も動員する。放課後までにはできあがるわ」
「でも、黄薔薇定番の猫ネタはだめです。瞳子ちゃんで使ってしまいましたから」
「うーん、そうすると、話題のあれかな?」
「そうです。あれです」
「よーし、すぐ型紙を。ありがとう志摩子」
「協力いたしますわ」
後ろ手にVサインをする志摩子。その背後の植え込みの陰には乃梨子、瞳子、祐巳となぜか笙子の姿が・・・・・。

 放課後、由乃はいつもの通り薔薇の館に向かった。
「ふふふっ、昨日の瞳子ちゃんったら。いつもの通りの反応じゃつまんないと思ってたら、祐巳さんのポコにノックアウト。ドリルの揺れ方もいつもの3倍(当社比)だったじゃない。くすくすくすあれならロザリオ素直にもらう日も近いわ。友情よ。友情」
などと自己正当化しつつ薔薇の館の二階、ビスケット扉を開けて・・・

「ごきげんよう」
「ごきげんよう由乃」
「れ・れい・・・・
「冷凍」
「トンボ」
「ボンゴレ」
「レッサーパンダっ」

ってええっ、れっさーぱんだあああ!! なんで令ちゃんまでレッサーパンダ耳にしっぽなんかつけてるのよっ。・・・・やられた。
 まるでアライグマだと思って捕まえてみたら直立してしまった絶滅危惧種のように、令ちゃんが立っている。給湯室の方に目をやると当然のように人の気配が・・・。

 令ちゃんってスタイルがいい。美少年と見まごう(暴走してないときには)由乃でもつい見とれてしまう美形の令ちゃんに、れっさーぱんだ耳としっぽなんて反則だよ。

「由乃?」
ぴこっ 耳が動く

「令ちゃん?あ、あの黄薔薇さまの威厳というものが・・・」
「だめ・・・?」
身をかがめて下から上目遣いで
「れれれれれ、れいちゃん」

だめ、そんな顔してみたら、由乃は・・・
「だって、志摩子や祐巳ちゃんが幸せそうなのに、由乃だけかまってくれないなんて」
寂しそうな顔をする令。耳がぴこっと下がる。
「それはその・・・」
顔に血が昇る。
「由乃が始めたことなのに」しょげた顔
令ちゃん…
「世界で一番由乃が好きだよ」しっぽフリフリフリ
「(ぐらっ)」

令ちゃんの顔が迫ってくる。きっと給湯室からみんながみてる、なんてことはもう意識から飛んで、令ちゃんの顔しか見えない。唇が迫る。膝がくだける。
「令ちゃんっ」

パシャッ ストロボが光る。

「黄薔薇様、ご協力ありがとうございました。あとでお写真をお渡ししますわ」
「笙子ちゃんっっっ」
「公開を許可して頂けますか?今度の写真部展示会でパネル展示致しますの」
「私に焼き増しをくれる条件だよ」
「わかっておりますわ。それもパネルにしますから黄薔薇様だけに特別価格でお渡しいたします」

「やっぱりねえ、いいだしっぺがなにもしないってねえ」祐巳さん
「由乃さま、これでおあいこですよ」乃梨子ちゃん
「乃梨子さんだけじゃなくて瞳子まで巻き込むからいけないのですわ」
「ふふふふふ、とってもうまくいったわね」ずずずとお茶をすする志摩子さん
って、令ちゃんが耳を作ったのを知ってるのは志摩子さんだけだった筈じゃあ・・・

「志摩子さん?」
「なあに由乃さん」
「令ちゃんをそそのかしたのはあなたね」
「令さまが寂しそうだったからよ」
「笙子ちゃんを呼んだのも」
「ええ、しあわせは全校に分けてあげなくちゃ」
がっくりと肩を落とす由乃

「志摩子さん、由乃さまにひっかかった私のために?」と乃梨子。
「いいえ、退屈だったのよ」と志摩子。
「志摩子さんのばかーーーー」由乃の絶叫が薔薇の館にとどろいた。


翌朝早く、古い温室に令を呼び出す祥子の姿が見られた。
目撃者の話では、なぜか新しいカメラに買い換えた笙子ちゃんの姿もみられたという。


一つ戻る   一つ進む