「瞳子ちゃん、まず最初に注意事項よ。」
「はい祐巳さま。これは【『薔薇のミルフィーユ』のネタバレをめいっぱい含む】のですわ。」
「怪盗紅薔薇ファイル 【No:147】『笑う怪人百面相(天晴さま)』の続きなのよ。」
「いつの間にか市立体育館についていますね。」
「ふぉっふぉっふぉっ」
「うーん、祐巳さま、私のお友達のバルタンさんはもうちょっと頭のFにチカラをこめるのですわ。」
「あ、やっぱりお友達なんだ。」
「いいから練習です。振りもつけてください。はい、両手はちょき。」
「プふぉっプふぉっプふぉっ(V)o\\o(V)。」
「それアタマ強すぎ。腹式呼吸わすれてますよ。両手チョキじゃらしくないですね、これ持ってください。」
「なにそれ。あっぱれ扇子じゃない。」
「いいから持って持って。はいどうぞ。」
「ふおぉぉっふおぉぉっふおぉぉぉっ(天晴)o\o(天晴)。」
「公衆の面前でなーに恥ずかしいことやってるのよあなたたち。声かけるかどうか迷ったわよ。」
「あ、由乃さま。」
「ふぉっふぉっふぉぉお?」
「えーいやめんかい。その悪夢を思い出す扇子はどこから持ってきたのよ。」
「薔薇の館の倉庫ですわ。」
「ふーん、瞳子ちゃん他にもなんかなかった?」
「ピアニカとか手品セットとか。」
「ほかには。」
「なんかザルとか手ぬぐいありましたよ。」
「それは紅薔薇一子相伝だからね。女優ならどんな役が来てもやるわよね。」
「え゛。」
「わーい瞳子ちゃんのうぐっ。ぐーでボディブローいれたああ。」
「ぷんっ。」
「そんなことより、由乃さん。」
「凸と菜々ね。」
「あーあ、とうとう怪盗ロッサ・フェティダも凸なのですわね、由乃さま。」
「江利子さま、菜々ちゃんどうするつもりなのかしら。」
「ちっちっちっちっ」人差し指を振る由乃さん。
「祐巳さん、『薔薇のミルフィーユ』読んだ?」
「えーと、紅薔薇のとこだけ。」
「瞳子、出番がなかったのですわ、えぐえぐえぐあーん。」
「よしよしよしよし、まだ先は長いわ。けど、今は黄薔薇の話ね。」
「うん、祐巳さん、とにかくこれ、読んでみて。」
「うーん、聖さまみたいに一冊1時間じゃ読めないわよ。」
「黄薔薇のところだけだから三分の一だもの。読まないと話が進まないのよ。」
「んーわかった。読むわよ、瞳子ちゃん。」
「はい、祐巳さま。ぐすん。」
「由乃さんはその間どうするの?ラーメンの食券なんかないわよ。」
「ふふふふ、ちょっと仕掛けをしてくるわよ。」
「仕掛け?」
「いいからいいから。」
「祐巳さん、瞳子ちゃん、読んだ?」
「読んだわ。」
「菜々のこと、どう思った?」
「えーと、江利子さまのおもしろ好きと…」
「由乃さま以上の青信号に…」
「令さまの剣道の腕を合わせ持った…」
「「『史上最凶の黄薔薇!!!』」」
「そうなのよ、って凶の字が違うような、まあいいか。」
「それでこのリリアン瓦版の写真を見てよ。菜々の顔、驚いたりびびったりしてる?」
「してない。ムーミンパパみたいだけど、なんか無表情と言うか、」
「面白がってますね。」
「ね、ね、ね、そう見えるでしょ。すましてるようだけど、これは菜々が面白がってる時の顔なのよ。」
「どういうことなの?由乃さん。」
「その菜々があの凸につかまった、いえ一緒になったら。」
「江利子さまとぐる、どころか江利子さまの主導権を奪ってるかもしれないわ、由乃さん。」
「なんて中学生、ですわ!」
「気をつけないと菜々に足元すくわれるわよ。」
「わかったわ、由乃さん。それで、なんか仕掛けてたようだけど、どうするの?」
「ふふふ。青信号には青信号の考えることはわかるのよ。まあみてらっしゃい。行くわよ。」
「どこへ行くのですか、由乃さま。」
「決まってるじゃない。トイレに向かう廊下の角よ瞳子ちゃん。」
「ああ、山百合会恒例暴走激突現場。」
「瞳子も暴走してみようかしら。」
「島田さまぁ。」
「それじゃ紳助よ。」
「洋七洋八と言わないだけましね、由乃さん。」
「女優なら陽子さま。」
「あんたらねえ。『島津』由乃よ。菜々っ、無事なの?」
「江利子さまに連れ去られて。」
「ふぉふぉふぉ私が怪盗ロッサ・フェティダよ。」
「出たわね。凸。」
「江利子さま、悪役のセリフまわし、完璧ですわ。」
「そりゃ、江利子さまは継母で鍛えてるもの、瞳子ちゃん。」
「菜々を返して。」
「あーら、いつから由乃ちゃんのものになったの?」
「この前ここでお話ししましたわ。」
「そうかしら。『中等部三年』の菜々ちゃんに聞いてみましょ。」
「由乃さまぁ、そのきれいなロザリオをわたしにください。そうしないと江利子さまが離してくれないんですよぉ。」
「あらあら、フライングなの?菜々ちゃんこう言ってるわよ。どうする由乃ちゃん。」
「こうするのっ。びびでばびでべーーーーっだ。ひもひっぱる。」
「きゃああっなにこれ小麦粉?」
「メリケン粉パン粉、え?消火器?」
「わーーっ、あたり一面真っ白なのですわ。」
「菜々っ。こっち。」
「由乃さまっ、むちゃくちゃしますねっ。」
「走るわよっ。菜々っ。」
「はいっ。」
「はあはあはあ。」
「ありがとうございます。由乃さま。それでロザリオは?」
「欲しい?ちゃんと高等部に入ってからの方がいいわよ。ほらあれ。」
「由乃さーん、やっぱりいたわよー。」
「大山鳴動メガネ一匹、ですわね。」
「あーん、レンズに小麦粉なんかまぶしたら傷んじゃうわよぉ。」
「蔦子様、見つかっちゃったんですか。」
「はあ、みつかっちゃったわ。菜々ちゃん。」
「二年も撮られ続けてればだいたいどこに潜んでるかわかってくるわよ。」
「祐巳さんなんかにつかまるとは。わたしも焼きが回ったわね。」
「つまり菜々は。」
「ロザリオを渡してるところを」
「蔦子さんに撮ってもらって瓦版に載せて」
「既成事実を作っちゃえっと」
「ごめんなさい。」
「はああ、なるほど青信号由乃さん超えてるわ。」
「だって菜々は島田さまの妹になりたいんですー。ぐすん。」
「紳助じゃないってば。よしよし。あと4ヶ月もないじゃない。もうちょっと待つの。」
「由乃さまぁ、ぐすん。」
「取ったあ。」
「あ、こら、菜々、ロザリオ。」
パシャ
「ばっちりよ、菜々ちゃん。撮れたわ。」
「江利子さま!」
「あーあ『写るんです』だよあのカメラ。」
「ふはははははは。諸君、また会おう。」
「一千億年来るなあああ。」
「また会いましょう、島田さま。はい、ロザリオお返しします。」
「完璧なセリフですわ、江利子さま。」
「そういう問題かい。瞳子ちゃん。」
「だから紳助じゃないってば・・・・・・。」
「やられたわね。」
「やられましたわ。祐巳さま、怪盗紅薔薇初の敗北ですわね。」
「いいえ、負けてないわ。」
「どうしてですの?」
「そのうちわかるわよ。」
「やっぱり『史上最凶の黄薔薇』菜々ちゃん、ほんとにアレを妹にするの?由乃さん。」
「ふふふふ。おもしろいじゃない?あのくらい噛みごたえがなくっちゃ。」
「なんか、由乃さんも面白好きになってきたわよ。これで剣道が上達したらどうなるの?」
「黄薔薇ファミリーおそるべし、ですわ。」
「笙子ちゃん、ちょっと見てよぉ。」
「昨日、市立体育館で江利子さまが撮った写真ですね。」
「そうよ。うまく撮れてるのに使えないのよ。」
「蔦子さま、なんかまずいんですか?」
「後ろにあっぱれバルタン星人が写ってるのよ。」
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「あとがき『だけ』が好評なので」
「あとがき姉妹ですぅ」
「はーあ。なんとか結末をつけたわね。」
「これが結末というのならば、天晴さまにつけていただいたようなものですわ。」
「あれ?蔦子さん、またカメラ新しいの買った?」
「いいえ、これは桂さんのプレゼント。」
「えっ、桂さん?」
「祐巳さんにもあるのよ。これ、桂さんから。」
「わあ、メープルパーラーのシフォンケーキとケーキセット券こんなに。どうして?」
「どうしてって、覚えてないの?私たち、新刊で一度ずつ桂さんの名前を口にしてるのよ。」
「あ、あああああああ、はぁ。」
「『パラソル』以来、11冊ぶりの出番、じゃないけど名前が出たんだもん、わかってあげて。」
「うっ、桂さん・・・・強く生きるのよ・・・うっく。」
「そうそう、あなたたち新刊が出てから何とか作戦のNo.132がどうとか…」
「逃げるわよ、瞳子ちゃん。」
「はいっ祐巳さまっ。」
「あ、待て、結局それかいっ。」