はじめまして紗々(さしゃ)と申します。今までずっとROMるだけでしたが、見ているうちに「いつかは自分も書いてみたいな」と思っていました。今回意を決して投稿してみます。お見苦しい点も多々あるかと思いますが、ご意見・ご感想いただけましたら幸いですm(__)m
「はぁ・・・」
みきはベットから上半身を起こすと溜息をついた。どうも寝付けない。現在、寝室にいるのはみき1人だ。主人の祐一郎はまだ事務所で仕事をしている。これまで個人住宅しか請け負ったことのなかった祐一郎は、初めての公共建築の設計に追われている。
「初めての仕事にしてはなかなか規模が大きい。これは骨の折れる仕事だよ」
と、口では言いながらもうきうきした目で話していたのはもう何ヶ月も前のことだ。それ以来、祐一郎はクライアントや様々な業者との打ち合わせに追われている。
「大変な時期に仕事に追われてすまない」
と言う主人に対して
「気にしないで。それよりもお仕事頑張って」
と笑顔で答えたのは自分だ。しかし、今現在1人で寝室にいると「どうして私を一人ぼっちにするの?仕事よりも私のほうが大切なの?」と考えてしまう自分がいる。
これが、マリッジ・ブルーと呼ばれる症状なのは知っている。妊娠によってホルモンバランスが崩れ、情緒不安定になるのだ。頭では分かっている、しかし、人間とはそううまくは出来ていないようだ。
「はぁ・・・」
再び溜息をつくと、みきは布団から足を出してベットに腰掛けるような姿勢をとった。少し大きくなったお腹をさすりながら考える
(私はこの子の親になれるのだろうか・・・?)
(この子をちゃんと育てられるのだろうか・・・?)
最近夜になるとこんなことばかり考えている。そして、どうしようもなく不安になってsまう。
(せめて、祐一郎さんがいてくれれば・・・)
こんなに不安になることもないのだろう、とそこまで考えて自分の考えを否定した。
笑顔で送り出したのは自分だ、こんなことを考えてはいけない、と
その時
「みき、まだ起きていたのか」
控えめにドアを開ける音と共に祐一郎が寝室に入ってきた。
「祐一郎さん・・・お仕事は?」
「あまりこんを詰めすぎてもいけないんでね」
そういうと、みきの隣に腰掛けた
「それに、最近みきの様子が気がかりだったから」
そして、そっとみきの肩を抱き寄せた。
「祐一郎さん、私ちゃんとこの子の親になれるかしら?」
祐一郎に寄りかかりながら、そっとお腹に手をあてる。その手に祐一郎の手がそっと重なる。
「みきなら大丈夫さ。それに僕もいる」
「でも・・・」
みきが言葉を発するのと同時に祐一郎が立ち上がった。そのまま窓際まで移動すると、みきの方に振り返りこちらへくるよう促した。
祐一郎が何を考えているのかわからないまま、みきは窓の前まで移動した。
祐一郎がゆっくりとカーテンを開くと、みきはやさしい光に包まれた。空には見事な満月が輝いていた。
「きっとこの月の光のようにやさしい子供になるさ。だって、みきと僕の子供なんだから」
そう言って祐一郎はそっとみきを抱きしめる。やさしい月の光と祐一郎のぬくもりに包まれてみきは
(大丈夫。きっと大丈夫だ。)
そう思うことが出来た・・・。