【1515】 そして私は妹になった祥子が留年!?スクリーン…アウト!  (HLJINN 2006-05-22 13:48:14)


パラレルなお話




私こと小笠原祥子には気になる同級生がいた。
福沢祐巳。
みんな小笠原の名に怯み、慕ってはくれるが友達のいなかった私。
そんな私にも気さくに声を掛けてくれた、高等部に入りようやくできた唯一の親友。
彼女と出逢えたおかげで、段々と友達と呼べる存在が増えていった。
休日などに友達と遊びに出かける楽しさも彼女に教わった。
今まで一度もそういったことはしたことがなかったから。
彼女に嫌われない為の努力は怠らなかった。絶対に失いたくはなかった。
だが、不安もあった。
彼女とは同級生で親友だが、スールではないのだ。
私はいまだ独身だが、彼女には既にお姉さまがいる。
紅薔薇の蕾、春日せい子さまが。
彼女の魅力はわかっていたので、紅薔薇の蕾の妹になったことは別段不思議ではなかった。
だが、一緒にいられる時間は少なくなってしまった。
山百合会の仕事が忙しいのに加えて、やはりお姉さまというのは特別な存在らしく、
最近は私たちと出かけるよりもせい子さまとデートをすることが多くなったほどだ。
今はまだいいのだ。姉しかいないのだから。
だが来年、少なくとも再来年には彼女は妹をつくるだろう。
仮にも薔薇に属するものがずっと妹をつくらないわけにはいかないのだ。
山百合会の仕事に姉や妹とのデート。
私が共に過ごせる時間はほとんどなくなってしまうだろう。
そして私は彼女にとって唯のクラスメートとしか思われない存在になってしまうかもしれない。
嫌だ!わたしは焦っていた。


私は自室で祐巳グッズ(孫バカな祖父に頼み作らせた)に囲まれながら考えた。
そして閃いたのだ。
以前、祖父はそろそろ引退したいと言っていた。
では引退させてあげよう。
祖父が死に(世間的に)、私はその悲しみの為に篭りきりになり留年。
そして来年2年生になった祐巳に悲しみを慰めてもらう。
その2人は姉妹の関係に・・・・・。
カンペキダ!






そして計画は実行された。
父は渋ったが、祖父は快く協力してくれた。母は笑っていた。
こうして祖父は世間的に死んだことなり、私はしばらく家に篭りきりになった。
その間は祖父とゆっくりした時間を過ごす事ができた。
だが、イレギュラーも起きる。
学校側が留年しないように手を回そうとしたり、心配した祐巳が家にやってきたことだ。
学校には、休んでいることに変わりはないのだから遠慮なく留年させてくれと頼み、
祐巳のことは事前に盗聴により情報を得た為、
急遽特殊メイクをしていかにも心労でやつれているように見せかけて場をしのいだ。
このとき祐巳に留年する事を伝え、同級生に姉にしたい人がいることを伝える。
その人は、私のことをとても思ってくれているし、きっと姉になってくれるだろうと。
祐巳は優しく頭を撫でてくれた。私の思いは伝わったのだろうか?



そして、私は計画通り留年し、祐巳は2年生になた。



今日は始業式の日である。
私はマリア像の後ろの茂みに隠れて祐巳が来るのを待っている。
暫くすると、祐巳が登校してきた。
ちょうど祐巳がマリア像の前に来た時、私は飛び出した。
ビックリしている祐巳に、私は頭を下げて頼みこんだ。

「貴女に伝えたい事があります。わたしにはずっと友人がいませんでした。
 貴女が親友になってくれたから、私にも友人と呼べる存在ができました。
 お爺様が亡くなって落ち込んでいる時も、心に浮かぶ貴女の笑顔が支えでした。
 今までは同級生として私を支えてくれていましたが、
 これからは親友として、そして姉として私を導いてくれませんか?お願いします!」

そして私は、頭を下げたまま目の前の相手に右手を伸ばす。

「・・・・・・私でよければ」

彼女はそう言って、私の手に自分のロザリオをかけてくれた。

「ありがとう!お姉さ、ま?」

顔を上げた私は凍りついた。目の前にいたのは祐巳ではなかった。

「・・・・・そっか。祥子さんの思い人って桂さんのことだったんだね。ちょっぴりやけちゃうかな。
 祥子さんは悲しい事があったし、これから桂さんと幸せになれるといいね。おめでとう!」

「「「「「おめでとう!おめでとう!」」」」」

パチパチパチパチ

と、周りにいた生徒達から惜しみない拍手が送られる。祐巳も、涙を流しながら私たちを祝福する。
そしていまや私の姉となった桂さんが言った。

「ありがとう!父にありがとう、母にありがとう。そして親友達にありがとう。並薔薇にさようなら」








桂と祥子はこの告白劇で学園一有名な姉妹となったが、所詮並薔薇はどうあがこうが並薔薇であり、
1ヶ月たつ頃にはみなに忘れさられてしまっていた。
そして松平瞳子という妹のできた祐巳はさらに2人と接する機会がなくなり、
いつの間にか祥子の存在を記憶のかなたに忘れてしまったのだった。

こうして、薔薇になった少女と間違って並薔薇の仲間入りをした少女の人生は、
このさき再び交わる事は2度となかった。




+++++++++
後書き
もう10回も「祥子が留年!?」のKeyがでたので、
とりあえず書いてみることにしました。
最期の方がちょっといまいちになってしまいましたが、他にネタがうかばないのでこうなりました。
ちなみに、この世界の松平家は小笠原家とは何の関係もありません。

※私の桂さんについての考え。
彼女はスタンドを持っている!スタンド名は「並薔薇の縛り」。
桂さんの意思に関係なく、彼女に関わった者の存在感を限りなくゼロにする。
だから桂さんとよく一緒だった祐巳の魅力にそれまで誰も気がつかなかったのです。
山百合会に関わるようになって段々と桂さんとの接点がなくなるにつれ、
スタンドの効果が薄れて祐巳の魅力が浮き彫りになったのです(あくまで私の考え。というか脳内妄想)。


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