「令ならベッカムよね」
3人しかいない薔薇の館。沈黙を破るのはいつも黄薔薇さまである。
「ベッカムって、サッカーの?」
「ええ。男前でしょ?」
白薔薇さまが話に乗る。
どうでもいいが、男前は褒め言葉なのだろうか。
「令がベッカムだったら、由乃ちゃんは?」
「……グレン・ジョンソン?」
「あー、前線行ったら戻ってこないもんね」
「グレン・ジョンソンは代表に入ってないわよ」
結局突っ込んでしまう紅薔薇さま。
どうでもいいけど、詳しいですね。
「うーん、ショーン・ライト・フィリップスも代表はずれたしなぁ」
「あとは、ギャリー・ネヴィルくらいかしら」
「由乃ちゃんあんまり守備は得意そうじゃないけど」
「何でサイドにこだわるのかしら……」
走り出したら止まらないからだと思います。
「志摩子は難しいわね」
考え込む黄&白。
仕事はいいんですか。
「ハーグリーブスとかマイケル・キャリックとか……」
「そつないところは近いかもしれないわね」
「開催国をリスペクトしてハーグリーブスにけってー!」
「楽しそうね……」
「次は祐巳ちゃんね」
「祐巳ちゃんかぁ」
「あら、考えるまでもないじゃない」
ついにペンを置いて本格的に話に加わる紅薔薇さま。
可愛い孫に話が飛んだからかもしれない。
誰、と顔を向ける二人に微笑んで口を開いた。
「祐巳ちゃんは薔薇の館の“ワンダーガール”だもの」
「なるほど、そっか」
「確かにね」
「じゃ、祥子はどうする?」
「ランパード」
即答する黄薔薇さま。
「なるほど、“ライオンハート”か。ぴったりね」
「令としっかりとコンビネーションが取れれば心強いわよ」
「なるほど、ね」
勝手に妹の話が進んでしまったが、高い評価にまんざらでもないようだ。
「来年はロサ・キネンシス“クール・ド・リヨン”になるわけね」
「あら格好いい。今から広めておきましょう」
「やめなさい」
「ね、私は?」
「白薔薇さま?うーん、ジョン・テリーとか」
「ウェイン・ルーニーの方がぴったりね。問題児つながりで」
「ひどっ……あ、でも祐巳ちゃんとツートップならそれでもいいかも」
「……ちゃんと適切な距離とりなさいよ」
「蓉子はジェラードだよね」
「そうね、山百合会の中心だもの。ランパードでもよかったけど、祥子に割り当ててしまったし」
「ちょうど赤だし」
「……何言ってるのよ」
二人の素直な高評価に照れてたり。
「おやー?顔も赤いぞー?」
「ほっときなさい!」
じっと黄薔薇さまの顔を見つめる紅白。
「……何?」
そんな言葉に、同時にくすりと笑って口をそろえた。
「「なんでもないわ、エリコサン」」
あとがき
がんばれイングランド