【154】 マリア様がイケイケ  (柊雅史 2005-07-04 21:25:22)


「ごっきげんよー!」
「ごっきげんよー!」
溌剌とした挨拶が、澄み切った青空にこだまする。
マリア様のお庭に集う乙女たちが、今日も天使のような笑顔で、背の高い門を走り抜けていく。
躊躇を知らない思考に浮かぶのは、青い色の信号。
スカートのプリーツは気にせずに、白いセーラーカラーが翻ろうとも、猪突猛進で突き進むのがここでのたしなみ。もちろん、哀愁メソメソで泣き崩れるなどといった、ネガティブな生徒など存在していようはずもない。
私立リリアン女学園・黄薔薇組。
平成16年創立のこの集団は、もとは病弱のつぼみの妹のためにつくられたという、伝統ある病弱美少女系お嬢さまチームである。
東京都下。武蔵野の面影を未だに残している緑の多いこの地区で、令ちゃんに見守られ、幼稚舎から大学まで従順な妹が成長する黄薔薇の園――のはずだった。
時代は移り変わり、心臓が欠陥品から超速タービン内蔵タイプに改まった今日では、三日通い続ければ温室育ちの純粋培養お嬢さまが、イケイケ青信号になって出荷される、という仕組みが確立しちゃったチームである。


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「……なに、これ?」
「今度私たち黄薔薇が主役演じる時のモノローグよ。考えてみたの!」
「なによ、この黄薔薇組って」
「私の私による私のための仲良し集団よ! 今のところ祐巳さんと菜々がメンバー」
「――最悪なチームよね……」
「令ちゃんは入れてあげないからっ!」


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