【1575】 天邪鬼なカップル放課後の薔薇の館で  (IMFujiko 2006-06-03 12:03:06)


「小さい頃、ミッ○ーマウスってねずみの種類だと思っていたんですよね、私」
「ねずみの種類?」
「ええ。ネズミ目ネズミ科ミッ○ーマウス属みたいな。ミッキーとミニーも、動物図鑑でいう雄と雌みたいな存在で、数多居るミッ○ーマウスのサンプルとしてとりあげられているものだと」
「まあ、それは興味深いアプローチね。そういうの、嫌いじゃないわ」

薔薇の館の会議室で脈絡無く始まった紅薔薇姉妹の会話、冒頭部。
いつもは微笑ましい熱々姉妹振りを見せてくれる二人の会話であるが、この日に限っては何故かややシュールな話題が祐巳さまによって振られ、そして祥子さまも躊躇することなくそれに乗っかったのだ。よりによって、お二人以外には瞳子しか居ないこの状況で。

「例えば…

『それじゃ現場のJim、そっちのほうはどうなってる?』
『Oh my god! ここオハイオ州のトウモロコシ農場ではミッ○ーマウスの異常発生によって大量の収穫前のトウモロコシが被害を受けています!Jesus!すごい数だ!Ouch!なんてこった、パンツの中に入ってk』
『おや、映像が途切れてしまったね。それにしても凄い映像だったねぇ。実は僕の実家もミッ○ーに散々かじられていて大変なんだ』
『あらCharles、あなたデトロイト出身でしょ?』
『いやあ、弟のMickeyがいつまでもすねかじりで困っていてるんだ』
『『Ahahahahahahahah!!』』

…みたいな感じで、アメリカのニュースショーで取り上げられていそうね」
「アメリカンジョークかどうかさえ疑わしい下りはひとまず置いておいて、深いですねお姉さま。流石です。なんかトウモロコシを一かじりだけして、地味に嫌な被害を与えている光景が目に浮かびますよ」

すごい。無邪気な顔でこんな会話が出来るとは、恐るべし紅薔薇姉妹。無邪気で天邪鬼。いや、ほんとすごいね。『邪』が二つもついてて。
いろんな意味で近寄りがたい薔薇の館です。前紅薔薇様が見たらどんなにお嘆きになることか…

「そういえば、ドナ○ドダックにも懐疑的でしたね。昔家族で某ランドに行ったときに、広場に佇むアヒルのブロンズ像をじっと見上げている私を写した写真があるんです。お父さんが付けだ題は『ドナ○ド、一緒に遊ぼうよ』です。まあ、ネーミングセンスに突っ込みたい気持ちは分かりますが、スルーしてください」

むしろ突っ込みどころが多すぎてお父様のネーミングセンスなんかどうでもいいです。

「真相は、少々おしゃれなだけのアヒルが偉そうにブロンズ象として鎮座ましているそのランドにますます失望の色を隠せないで居る6歳の私、といったところでしょうか」
「私も、あの生き物については許せない部分が昔からあるわ。もはや言語として認識していいのかすら疑わしい喋り方で捲くし立てるあの姿は痛々しいとしか思えないもの。嘴なんだから無理して喋るなよ、と優しく教えてあげるのが、私達人間の使命じゃないかしら」
「とても慈愛に満ちた試みですね。流石ですお姉さま」

なるほど、すごいところに着地しましたね祥子さま。なんか人間やってるのが馬鹿らしくなってきますね。それはそうと、祐巳さまはが幼少期の回想をしている一方で、祥子さまは現在の思想を語っているように思えるんですが気のせいでしょうか?

とりあえず、これ夢オチだよね。だってこんな黒い祐巳さま、私の祐巳さまじゃない…。え、違うの…?

と、混乱し始めた私の背後で

ガチャリ
「ごきげんよう。遅くなりまして」

白薔薇姉妹がようやくのご到着。

「ああっ、乃梨子さん!ようやく正常な頭のベクトルを持つ方が来て下さって助かりましたわ…!」
「はぁ?あんたの頭のベクトルこそ、渦巻いてるじゃない」
涙目で駆け寄る友人に対してその反応はちょっと考え物ではありませんこと?
これは私が今までどんな恐怖を味わっていたかを小一時間ほど語って差し上げないと、
…と意気込んだのだが。
「あら?」
ふと、乃梨子さんが脇に抱える何かに気付いた。
どうやら本のようだ。
「これは?」
「それは私が貸してあげたの。面白いから」
白薔薇様が横からそう言う。
そして乃梨子さんはちょっと照れてから、その本を胸の前にかざして見せた。
てっきり仏像関係の本かと思っていたけれど、まさかこれは…これは…

「これ、空想科学読本シリーズ。瞳子は知らない?」

「いやぁぁぁぁぁ!」


その後、紅薔薇姉妹は言わずもがなすんごい食い付いた。

そして数分後、黄薔薇姉妹が加わり、そのうち書籍そのものへの批判論議に突入、永田町の先生方にも見習って欲しい位熱の入った議論が繰り広げられた。
そんな感じで空想宴もたけなわの頃、よろよろと危うい足取りで薔薇の館を一人あとにする松平瞳子嬢の姿があった。

そして、マリア像の前で叫んだ。

「なんなんだこの山百合会わ!」

憧れと現実の狭間で青春のほろ苦さをかみ締めた松平瞳子、十六の秋。

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えーと、これは果たして天邪鬼…?あと、何もマリみてキャラにやらせなくてもいいようなことですよね。


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