(ほんとかしら? 【No:1484】で、つづかないって言ったじゃありませんか、スグルお兄様)
- そういうわけで、ドリーポッターと賢者の石なんだけど、なあ、瞳子。
(なんですの? 額に肉のお兄さま)
- 油性マジックを落とす方法しらないか。
(それは、酢漬けとかおろしニンニクとか米ぬかとか、いろいろありますわよ。可南子さんも試してみたことですし)
- 焼き肉の下ごしらえしてるんじゃないんだけどね。しかたない、とにかく始めるぞ。
† ドリー・ポッターと賢者の石 つづき †
「ほら、これが、リリアン魔法学校に入学するために必要なもののリストよ、ドリー」
「えー? こんなものが、全部吉祥寺で買えるんですか? 江利子さま」
「だいじょうぶ、リニューアルした『一店逸品街』吉祥寺サンロード商店街ならなんでも揃うわよ」
「……ローカルなネタ……」
「ところで、あなたがドリーで私が江利子っていうのもどうかしらね、エグリットとでも呼んでちょうだい」
「エグリット……えぐいお名前ですのね」
「うぐ。まあともかく。ドリー、あなたいろいろ聞きたいことがあるんじゃないの?」
「そうです。エグリッド、わたしく何も知らずに育ったのですわ」
「さて、私が知ってることをあなたに話すのがいいでしょうね。……でも、すべてを話すことはできないわよ。まだ謎のところがあるのよ」
「はい」
「事の起こりはね、瞳子ちゃん、ある人からなの。名前は……あ、だめね、わたくしたちの世界ではみんな知ってるのに……」
「誰なんですの?」
「うーん、できれば名前を口にはしたくないのよ」
「どうしてなんですの?」
「どうもこうも、ドリー、いまだにみんな恐れているのよ。ある魔法使いがいてね、悪の道に走ってしまったの。悪も悪、とことん悪。その名前は K……」江利子は一瞬息を詰めた。が、声にならなかった。
「姓から順番に書いてみたら?」ドリーが促した。
「姓はね、ないのよ。姓はな・い・の」
「怖いっ!」ドリーは叫び、エグリッドは身震いした。
「名は……忘れたからどうでもいいわ、たぶん重要じゃないのよ」
「はあぁ」
「二度と言わせないで。そういうことよ。われわれの世界をそいつが支配していたの。もちろん立ち向かうものもいたけれどみんな殺された。 のこされた数少ない安全な場所がリリアンだったの。シスター上村だけは、『姓・の・あ・の・人』も一目置いていたから、学校にだけはさすがに手出しができなかったのよ」
「『姓のあの人』?」
「『姓のないあの人』じゃめんどくさいでしょ。You-Know-Whoを『例のあの人』って訳にするのも悩んだって訳者が書いてるくらいだから、むずかしいの」
「ぜんっぜんかんけいないとおもいますけどぉ」
「さーて、一通り必要なものは揃ったかしら。あとは杖だけね。うーん、何か忘れてるわねえ。そうそう、あなたに誕生祝いを買ってあげなくちゃ」
「そんなことしなくていいのに。そんなものが屋根裏部屋にあると、ミンチン先生に叩かれて取り上げられてしまいます」
「いきなり世界の違うところへ飛ばないの! そうねえ。動物がいいかしら。あなたゴ○ブリは好き?」
「きゃあああああぁぁぁぁぁ」
「あ、そう。諜報活動にはもってこいなんだけどなあ、わたしも触るのはいやだけど。あとはだいたいヒキガエルとかネズミとか定番がいるんだけど、ほれ」
「きゃあああああああぁもういゃぁぁぁ。なんで使い魔ってこんなんばっかりなのよおおおぉ」
「そりゃ、魔ですもの。ああ、そのニシキヘビなんてのもいいかも。ちょっと肩にかけてみる?」
「いーやーでーすぅぅ。あああ、あっちの、あの、黒猫なんか、かわいくていいんですけど」
「あれなの? ほんとにあれがいいのね。ちょっとねこちゃん、こっちへいらっしゃい。新しいご主人様の前で化けてちゃだめですよー」
ぽんっ
「たーぬーきー」
「かわいいでしょ。役に立つわよ。郵便とかを運んでくれるし」
「なんでたぬきが郵便はこぶんですかああああぁ。だいたい昨日からタヌキが空を飛んでましたけど、なんでタヌキが空を飛ぶんですかああ」
「あら、知らないの? たぬきの××××袋は千畳敷って」
「き、き、き、××××袋ですってー。いやあ」
「だから、あのしわしわの袋をのばすでしょ、そうすると畳千畳くらいあって、それを広げて滑空して飛ぶの」
「うそだあぁ」
「モノもたくさん運べるわよ。ちょっと問題はあれだけど」
「あれって」
「ニオイ」
「うがああああああ」
「でも、このタヌキかわいいですわね」
「ぽこー」
「瞳子はぽこーとか言われても知りませんわ」
「ぽこぉ」
「そんなすがるような目で見なくても」
「ぽこ?」
「あーん、もう連れてってあげるから、そんな目をしないでくださいませ」
「たぬきの勝ち」
「江利子さままで〜」
「お礼はいらないわ」
「さて、杖よ」
「『弓子の店』ってなんだか気むずかしそうなおばあさんが」
「いらっしゃいませ、おや? あなたは? おお、ドリー・ポッターさん、まもなくお目にかかれると思っていましたよ。杖ですね、そう杖杖」
「そうそう、杖の前に、リリアンには絶対必要なものを忘れていたわ」
「なんですの?」
「白ポンチョ」
「出たぁ」
「そう、採寸しなくゃいけないわね、いひひひ。景さん、景さんや」
「はーいー。あら、かわいい子。はい、採寸しますからねー、脱いで」
「へ?」
「へ、じゃありません。白ポンチョは裸の上から着るんですからねー、はい採寸、採寸♪」
「け、けけ景さん?」
「じゃ、脱がせてあげるわー。やらせて。いいえ、むしろやりたい」
「ななな、なんかセリフ間違えてませんか〜。だいたい巻き尺が勝手に採寸してくれるんじゃなかったんですかああああ」
「そう言ってる間に脱ぐっ」
「きゃああ」
「あなたは、このフリフリレースの白ポンチョと、薔薇の刺繍いり白ポンチョと、ただの白ポンチョ、どれを選びますか?」
「どれでもいいから早く着せてくださいっ」
「じゃ、フリフリレース刺繍いり、X線防御も完璧の一品」
「それじゃ、レントゲンに写らんだろーがあ」
「冗談ですよ冗談。はいこれ」
「白ぽんちょというより、ウエディングドレスのベールみたいなんですけど?」
「気に入らない?」
「気に入りましたわ」
「じゃ決定」
(いいんだろうか、これでいいんだろうか)
「じゃあ、杖を選ぶのね」
「ふーむ。ポッターさん、拝見しましょう。どちらが杖腕ですかな?」
「わたくし左利きですわ」
「腕を伸ばして。そうそう。景さん?」
「はあい、採寸採寸♪」
「きゃあ、ちょっとー、キャラ違ってませんかあ」
「ポッターさん、弓子の杖は一本一本強力な魔力を持った物を芯に使っております」
(スルーしましたわね)
「ユニコーンのたてがみ、不死鳥の尾の羽根、一つとして同じ杖はない」
ドリーは景さんが勝手にあっちこっちの寸法を測っているのにハッと気づいた。
「なななな、なんでそんな寸法が要るんですかあ」
「あーら、これが楽しみでこの仕事してるのに、取っちゃいやよ」
「なにもんですかあんたは」
「ふーん、16歳にしてはちょっと「そこまでぇえええ。個人情報を明かすなああ」
「はいはい。でも、まだ大丈夫だから。お姉さんが揉んであげ「だあからキャラが違うってばー」
「もういいわよ、景さん」
「ええー」
「ほれ、入り口に美少女が来ておるが」
「あら、ほんと? 美少女美少女♪」
「……」
「なんか、最近、名前が似た悪い友達ができたみたいでなあ、心配しておる」
「……」
「で、杖じゃ杖。これをお試しくださいポッターさん。ブナの木にドラゴンの心臓の琴線。9インチ。良質でしなりがよい。手にとって振ってごらんなさい」
ドリーは杖を取ってちょっと振ってみた。弓子老人はあっという間にそれをもぎ取ってしまった。
「楓に不死鳥の羽根。7インチ。楓、あれ? 楓? なんか忘れているような。まあいいか。どうぞ」
「あ、だめか。いかん。次は黒檀とユニコーンのたてがみ、9インチ」
弓子老人が何を期待しているのかさっぱりわからないが、ボツの杖の山がだんだん高くなってゆく。それなのに新しい杖をおろすたびに弓子老人はますますうれしそうな顔をした。
「難しい客じゃの。心配しなくても必ずぴったりのを探しますからな。」
「さて、次はどうするかな……おお、そうじゃ。めったにない組み合わせじゃが、柊と不死鳥の羽根、11インチ、良質でしなやか」
ハリーは杖を手に取った。急に指先が温かくなった。杖を頭の上からひゅっと振り下ろすと赤と金色の火花が花火のように流れ出して散った。
エグリッドは「おーっ」と声を上げて手を叩き、弓子老人は「ブラボー」と叫んだ。
「すばらしい。いや、よかった。さて、さて、さて、……不思議なこともあるものよ、まったくもって不思議じゃ」
「あのう、何がそんなに不思議なんですか?」
「柊……楓……柊……」
「柊……
「柊」
「柊ですわ」
「「「「『柊さま〜 がちゃがちゃSS掲示板 一周年、おめでとうございまーす』」」」」
どんどんどん、ぱふぱふぱふ。どっかーん、って花火あがってるし。
「パーティー会場はここですかー? あ、江利子ー」
「あ、蓉子、聖、こっちこっち」
「聖、なによさっきの。あなた景さんになにしたの?」
「い、いや、蓉子さまわたくしはなにもですね」
「瞳子〜、似合ってるわよ、その白ポンチョ」
「きゃああああ、まだわたくし白ポンチョ一枚だったのですわ」
「まあいいじゃないの、主役はそれくらい、サービスサービス」
「って、うしろから触ってるのはだれですの〜〜〜〜」
「てへへへへへ」
「ゆ、ゆみさま。な、な、な、なにを」
「スキンシップ」
「あああああ」
「あ、どうも上村佐織でございます」
「二条菫子です。どうも、うちのはねっ返りがいつもお世話になっておりまして」
「令ちゃんはどこ? ケーキがないのよケーキが」
「令さまならさっき、割烹着の謎の男に、『勝負だ』とかいって拉致されましたけど」
「あの、ばか兄〜〜〜〜〜」
「しまこさ〜ん、穏便に。あの、殺さないように」
「さて、では乾杯の音頭を瞳子ちゃんに取っていただきましょう」
「わ、わたくしですか? では、なにがなんだかわかんないけど『乾杯!』」
「瞳子ちゃん」
「あ、祥子お姉さま」
「今は、祐巳×祥子と祐巳×瞳子が一冊おきだけれど、祐巳との姉妹が無事できあがったらまたわたくしのシリーズに戻るのよ。いいわね」
「お言葉ですが、祥子お姉さま、これから出番が増えるのは私ですわ。一冊おきから、でづっぱりになるのは瞳子の方ですのよ」
「甘いわね。スーパードルフィーにもなっていない瞳子ちゃん」
「うー。『エクスペクト・パトローナム』
「ちょっとー、瞳子、それはずーっと先にしか使えない召還呪文……」
どどどどどどどどどど
「あ、なんかでた」
「大魔神?」
「半魚人」
「巨神兵だあ〜」
「ずももももももももも、って、なんで毎回私は巨神兵なのよお」
「いらっしゃいませ、可南子さん。それはがちゃSではさかのぼれば柊さまがキーワードをなぎ払うツールを作ったときからデフォルトなのですわ」
「で、どうするの?」
「もう、なんでもいいから焼き払えっ!」
「きしょー」
「きゃあああ、なんでこうなるのよ」
「がちゃS発足の時から、祐巳さまとの間がぜんっぜん進展していないからいけないのですわああ。薙ぎ払えっ!」
「ほぎゃー」
「ちょっとー、瞳子に何飲ませたのよ」
「えーと、果実のお酒? おい、なにすんねんって、アブナいってー」
「きしゃーきしゃー」
「えー、リポーターのダドリー・日出美です。豚のしっぽはちょっとかわいくないから、ネコ耳としっぽがいいなー、矢印つきの黒い尻尾でも小悪魔ちっくでいいなあとか、えへ♪ (ちゃんと報道しなさいよ) はい、真美さま。えっと、失礼しましたぁ。 瞳子ちゃんが怒ってる2006プロジェクトでは、小説、コミック、アニメ、OVAなどを通して、これ以上、おあずけを食わされるたびに、一冊ごとに巨神兵が破壊の限りを尽くすぞ、というむちゃくちゃな活動をしてまいります。今後の瞳子ちゃんが怒ってる2006プロジェクトにご期待ください。リリアン瓦版特派員、ダドリー・キュート・日出美@笙子ちゃんには負けないぞ、でした」
(真美? 妹にしたの後悔してない?)
(…………このシリーズもまた、腐海の底に沈むわね………)
(深い……)
(……)
† †
………出番があるまでつづく……K
そのとき、どどどどど、と、乃梨子さまにつっこまれ隊が乱入し、額に『出』のはんこをぺちょ、と押すと、どどどどど、と無言で去っていった。
………こんなんが出番なんて、やだ〜〜〜〜〜〜
やっちゃった。