目が覚めたら、窓の外は海だった。
なんでも水位が急激に上昇したんだとか。
難しいことはよく分からないので、とりあえず朝ごはんを食べて学校へ行くことにした。
「祐巳って割と能天気だよな」
「失礼な」
ジャブジャブと水を蹴ってバス停に着いたら、バスは定刻通りきちんとやってきた。
「実は水陸両用なのさ」
と運転手さんは誇らしげに言ったが、バスを水陸両用にしておくのは英断と見るか勇み足と見るかは微妙なところだ。
だがまあ、こうしていつも通り走ってくれるのに感謝こそすれ文句を言うのは失礼というものだ。
波の音の中でマリア様に祈るのは初めてだったが、中々どうして悪くない。
「ごきげんよう、紅薔薇のつぼみ」
「ごきげんよう」
みなの挨拶も普段通りだ。
歩きにくそうではあるけれども。
薔薇の館にはお姉さましかいなかった。
「ごきげんよう、お姉さま」
「ごきげんよう、祐巳」
ざあ、と流れる水の音に耳を傾けつつお姉さまの隣に足を進める。
窓から下をのぞくと、心なしか水位が上がっているように思える。
「どうかしら、祐巳」
「どう、って何がですか?」
「昨日、海に行きたいって言ってたでしょう?」
「ええ」
「でも行く時間がないって」
「そうですね」
「だから、海をつれてきたわ」
昼ごろには泳げる深さになる、とか砂浜も作りたいわね、とかお姉さまは言うが、正直どうでもよかった。
見上げると、雲ひとつない蒼穹が目に映った。
もはや太陽をつれてきたのも雲を取り除いたのもお姉さまだと言っても信じられる気がする。
とりあえず家に帰って水着を取ってこよう。
あとがき
今年の夏はちょっと大胆に