山百合会からのお知らせ:このSSは最新刊「薔薇のミルフィーユ」のネタバレを含みます。
「聞きました?」
「聞きました」
白薔薇のつぼみが謎の女子大生に校門の前から連れて行かれたその後で、生い茂った低木の裏から二つの影が現れた。
「謎の女子大生に連れられる白薔薇のつぼみ。しかも先ほどの白薔薇さまの事件の真相を知っていそう。ぜひ話を聞きたいわ」
「でも、人目の避けて場所を変えられましたからね」
「たぶん私達が追いかけては気付かれてしまいますね」
「それにしても、白薔薇姉妹のただならぬ雰囲気を撮ろうとこの茂みに身を隠した時には、まさか先客がいたとは思いませんでした」
「いやはや。私もあなたが現れた時には、ギョッとしたものです」
「興味の向く方向が同じというわけですね」
二人は笑いながら、腰を伸ばし、肩を回した。ずっと同じ体勢でそこに潜んでいた証拠である。
「私達のお姉様なら二人に気付かれることなく追跡できるんでしょうけど、残念ね」
「ちょ、ちょっと。蔦子さまはまだ私のお姉様というわけじゃないですよ」
「まだ? そういえば、いつも蔦子さまにくっついて、最近はカメラまで頂いたとか。そのカメラそうなんでしょう?」
ふわふわのセミロングの首から提げたカメラを指して、手帳を閉じて尋ねた。
「うう、いじわるですね。でも、そうなったら私達、茶話会が縁で結ばれた姉妹ということに」
「お姉様がそう呼ばれるの嫌がってるの知っていて言ってらっしゃるのね」
お互いに顔を見合わせ、笑い出した二人の名は、高知日出実と内藤笙子という。二人はかつて別の茂みで同じような会話をした少女達がいたことを、このときはまだ知らない。