【1604】 君がいつか欲しがった踊る拡声器SP  (砂森 月 2006-06-11 20:29:40)


未使用キー限定タイトル1発決めキャンペーン第2弾
踊る拡声器って何ですか。。(苦笑)



「あら、優さん」
「さっちゃん、入学おめでとう」

 リリアン高等部の入学式が無事済んだその日、優さんはわざわざ入学祝いをもって小笠原家まで訪ねてきた。

「そんな、入学といっても繰り上がりみたいなものよ」
「それはそうだけど。めでたいものはめでたいだろう」

 はい、入学祝いといって優さんは紙袋を渡してくれた。

(紙袋?)

 それに妙に重い。それに入学祝いの定番とは明らかに違う感じがする。

「ねえ、出していい?」
「ああ、いいよ」

 そういわれて紙袋の中身を取り出した私は絶句した。なぜならその中身は……。

「な、なんなのこれは?」
「試作型自律行動式拡声器『ダンシング・ラウドボイススペシャル』さ」
「………………」
「ほら、さっちゃん昔踊る拡声器が欲しいっていってただろ?」
「い、いつの話なの?」
「初等部の頃かな。1年生か2年生くらいの」
「そ、そんなの覚えているわけないじゃない」

 そんな私の様子は一切関係無しに優さんは拡声器のスイッチを入れた。
すると拡声器はひとりでに動き……もとい、踊り出した。

「す、優さん?」
「ところでさっちゃん、大事な話があるのだけれど……」

 私が若干怯えているのを全く気にせずに、いつの間にか手元に無線機らしき物を持って話を切り出す優さん(声が拡声器から聞こえてくるからマイクなのかしら?)。


 それから約1年半、私と優さんが会う事はなかった。あんなふざけた入学祝いでああいう話をされたら誰だって会いたくなくなると、今でも私は思っている。


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