【1628】 実感実はスゴイ  (亜児 2006-06-20 23:45:46)


私とお姉さまは使い終わったファイルを1階の倉庫へ運ぶために階段を下りている。
持っているファイルはそれほど重くはないけど、足元が見えずらいので
ゆっくりと慎重に下りてゆく。残り数段のところで、お姉さまが足を滑らせた。

「きゃっ!」
「お姉さまっ!」

 私はファイルを投げ出してお姉さまの腕をつかむ。しかし、重力にひかれて
2人でそのまま階段から転げ落ちる。お姉さまをケガさせる訳にはいかないと
思った私はお姉さまをしっかりと抱きしめた。

「痛っ・・・。」

 少しだけ腰を打ったみたいだけど、お姉さまにケガはなかった。
下敷きになっている私に柔らかいものが当たっている。もしかしてこれは・・・?
リリアンの制服は体型がわかりづらいとはいえ、制服の下にこんな『わがままボディ』を隠していたなんて。
それに比べて私は・・・・・と自分の貧弱な体のラインを思い浮かべて
ため息をついた。

 私は体をそっと起こしてお姉さまに膝まくらする。お姉さまはまだ目を覚まさない。
これは神が与えたもうたチャンスなのか。ごめんなさい、マリア様。
二条乃梨子は悪い子です。私はお姉さまの胸に触れる。

柔らかい!おっきい!あったかい!

ふにふに。その感触に酔いしれて触っているとお姉さまが目を覚ました。

「・・・乃梨子?」

 私は反射的に手を引っ込めて頭を下げる。気絶してる間にあんなことを
するなんて最低の妹だ。お姉さまもきっと軽蔑するだろう。

「手をかしてもらえる?」
「は、はいっ!」

 お姉さまと一緒に立ち上がる。そして周りに散らばったファイルを拾い始める。
私も近くに落ちているファイルを拾い集めると倉庫へと向かった。
倉庫の段ボールにファイルをしまって2階へ戻る途中でお姉さまがふいに呟いた。

「まさか乃梨子があんなことをするなんてね。」
「えっ?!お姉さま、まさかあの時気づいていたのですか?」
「うふふふ。それはどうかしら?」

 頭を抱え込む私にお姉さまは耳元でそっと囁いた。

「触ってもいいけど、次からはちゃんと言ってね。」

 私はこうしてさらに藤堂志摩子という人に魅了されていくのだった。


(終わり)


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