【1661】 思いはすれ違う泣け  (六月 2006-07-05 00:10:33)


「祐巳、ちょっと良いかしら?」

放課後の薔薇の館に今日はお姉さまと二人きり。
静かな時間を過ごしていた時に、ふとお姉さまが何かを思い出されたようだ。
「今度の日曜日にお出掛けに付き合って欲しいのだけれど、時間は空いているかしら?」
「あ、はい。えーっと、特に用事は無かったと思います」
「そう、それじゃM駅前に10時ね」

ふふふふ、お姉さまとお出掛け。自然と顔が緩んでいくのがわかる。
どこへ行くのかな?
「えーっと、どのような御用なのでしょうか?もしかして小父様や小母様の頼まれものとかですか?」
「いいえ、昨夜、お母さまと一緒にテレビを観ている時に紹介されていたお店に行ってみたいの」
おー、お姉さまがテレビとは珍しい。
でも、超高級店とかだと私のお小遣いではお供できなくなるかもしれない。そう考えていると、表情に出てしまったようで。
「心配しなくても私達のお小遣いで行けるくらいのお店よ。経済情報番組で出ていたのだけれど、私もお母さまもそんな有名なお店だと知らなくてビックリしたの」

私達のお小遣いで行けて有名なお店?
「日本国内に一千店舗以上も展開するチェーン店だそうだけれど、ちょっと作法が分からなくて、教えてくれる?」
「は、はい!お姉さまのためでしたらどのようなお店でもお供致します」

懐かしいなぁ、あのバレンタインデートの時のお姉さま。ハンバーガー屋でナイフとフォークを探してたっけ・・・。
普通の高校生らしさに憧れるお姉さまだから、庶民のお店に行きたいのかな?
「ところで、どちらのお店に参られるのですか?」
「ちょっと待ってちょうだい・・・えーっと」
そう言ってカバンの中を探して、四つ折りされたメモ紙を取り出した。
「これ、このお店」
「拝見しますね。えっと・・・・・・」

そこに書いてあったのは、庶民の味方の超有名店、UNI●LO、100円均一、吉●家と書かれてあった。

「今月のお小遣い、残りが30万円ほどしかないのだけれど、足りるかしら?」

足りますよ、足りますとも!私のお小遣い何年分だよ!山ほど買ってもお釣りがきますってば。
これだからブルジョアは・・・私の肩は小刻みにプルプルと震え、なぜだか悔し涙が零れ落ちそうだった。


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