「あなた方をだしにしたのよ」
洗礼堂での、元リリアン生で『リリアンの歌姫』の異名を持つ蟹名静によるワンマンショーの後。
紅薔薇のつぼみ福沢祐巳は、
「あのあの、私もやっていいですか?」
と、期待に満ちた目で静を見た。
「構わないと思うけど……。ちょっと待って、聞いてみるわ」
再びイタリア美人に問い掛ける静。
なにやら二言三言言葉を交わすと、静は振り向いて、左手でOKサインを出した。
祐巳は、洗礼堂の片隅に置いてあった椅子を運んで来ると、どこからともなくノコギリを取り出し、椅子に座って、ノコギリの握りの部分を太股に挟み、先端を左手で摘んで、右手に持った木琴用のばちを構えた。
そして、ノコギリの歯を揺らしながら、ばちで軽く叩けば、
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
『お〜ま〜え〜は〜、ア〜ホ〜か〜』
………
横山ホット○ラザーズで御馴染みののこぎり音楽が、洗礼堂に響き渡った。
(アホはお前だ……)
心の中で、そっと呟く静だった。