【1681】 彷徨う心大切に想うほどに  (計架 2006-07-14 00:49:37)


とっとっと、と。
石段を叩く足の音。
少し長めな神社の石段。
上りきればほら、綺麗な朝日が雲間に輝く。
火照った体に風が気持ちいい。
今日もきっと、一日晴れになるだろう。
神社から眺める街並み。
薄暗い街の中、ちらほら見える明かりは早起きなお母さんが朝食でも作っているのか・・・
今日は日曜日。
でも、今日は平日と変わらないくらいに多くの明かりがともっている。
私立リリアン学園。
今日は高等部の学園祭。
お年頃の娘さんを持つお母さんは、日曜日なのに大変だなぁ、と思いました。










軽く運動をして、家に帰宅。
我が福沢家はシンと寝静まっている。
現在午前6時ちょっと過ぎ。
日曜日は基本的に別々に起きるから、あと2、3時間は誰も起きないかもしれない。
休みの日にはルーズな一家なのだ。
私は両手両足に巻いていたアンクルをはずしてテーブルの上にポンとおく。
別に体を鍛えるつもりも無いけれど。
カウンセラーというのはアレで結構体力がいるのだ。
精神的にも、肉体的にも。
だから、休養と体力向上のために始めたこの運動。
帰ってきて数日はやらなかったのだけど、習慣になっていた為、目が覚めるのだ。
ぼー、としているだけなのはアレなので、結局今も続ける事にした。
それに、やってみると結構楽しい。
色と音を消して体を動かし、如何動かせばスムーズに動けるのかを研究したりとか。
初めの内はお母さんに心配されたりしたんだけど・・・
ほら、朝起きるのが突然早くなったから・・・
そんな事を取りとめも無く考えながら、着替えを箪笥から出し、汗で湿った服を脱いでシャワーを浴びる。
鏡に映る自分の姿を見て、そろそろ髪が伸びてきたな、と思う。
そういえば、帰ってきてから一度も美容院に行ってない。
まぁ、たった一ヶ月ほどなので気にするほどでもないかもしれないけど。
いや、そういえば私はどのくらい髪を切っていないんだろう?
帰ってくる前に切りに行ったのは何時なんだこの時代の私?
まぁ、聞いても答えが返ってくるわけでもないんだけどね・・・
今髪の毛は肩と肘のちょうど中間くらいまで伸びている。
高校に入ってからは肩にかからないくらいの長さにしていたはずだけど・・・
中学の時はどうだったかな?
まぁ、このくらいの長さでも困る事は無いから、もうしばらく伸ばしてみようか。
と、髪の毛を洗いながら考える。
うん。
まぁ、髪の毛伸ばしてみるのも悪くないかもしれない。
そういえば私、ロングにした事無かったし。







お風呂から出て。
時間を確認すれば6時半。
外来の受付は、確か9時からなのでまだまだ時間はある。
とりあえずご飯が炊かれているのは確認したので、冷蔵庫を開けて何があるか見てみる。
まぁ、そういったことに関しては手を抜かない母なので、冷蔵庫の中身が空になるなんてありえないんだけど・・・
ふむ。
卵と、野菜と・・・あ、ハムがあるか。
それなら、と。
野菜とハムをみじん切りにして、バターを入れて中火で暖めてあるフライパンに投入。
野菜に火が通るのを待つ間に適当にちぎった野菜をお皿に並べておく。
ある程度火が通ったところで弱火にして溶き卵を入れる。
クルクルと箸を回しながら卵がある程度固まるのを待つ。
手首をぽんぽんと叩きながら、固まり始めた卵をくるくる回すように形を整えて・・・
お皿に移してケチャップをかければ、朝食のオムレツ完成。
ご飯をよそって・・・今日の朝食はライスとオムレツ、それからサラダ。
あぁそうだ。
牛乳ももってこないと。
テレビをつけてニュースを見ながら朝食。
・・・この辺も習慣だよね。
大学入ってからは一人暮らしを始めたし・・・







7時。
着ていく服を決めて(あえて制服はやめておいた。在校生は制服着用と決まってる訳ではないので)髪型を整える。
何時も通りツインテールで良いか、とも思ったんだけど。
それじゃあつまらないから、違う髪形にした。
首のすぐ後ろで髪を縛り、髪の先端付近でもう一度リボンで縛る。
上のリボンの結び目を大きく、下のリボンを小さめにするのがコツ。
カウンセラーになって、美容院に行く時間が取れなくて髪が長くなった時にしていた髪型。
長いと邪魔なんだ、ツインテール。
後は・・・伊達眼鏡でもかけてみる?

・・・私は変装してるのか?

さすがに眼鏡はやめました。


因みに。


お母さんには一瞬私だって気づいてもらえませんでした。







チケットがちゃんとあるかを確認して、バッグに財布、ハンカチ、ティッシュ、携帯電話を入れて家をでる。
携帯電話はこっちに来て真っ先に買ったもの。
型は古いけど・・・仕方ないか。
時間は8時少し前。
ここからなら30分程度で学園までいけるから、まだ時間に余裕がある。
ゆっくり歩いていこうか・・・
そう思い、随分と久しぶりな朝の街を散策する事にした。

思い出にある景色と、随分違っている。

仕方ない。
私の記憶はどんどん書き換えられていったのだから。
また、あのとおりの景色になるのか、もうわからない。
私一人で何が変わるのか、とも思うけど、私一人で変わる事も、やっぱり少なくは無いだろう。
人間関係についても、同じ。
私がここに来た事で、前に付き合いの無かった人との絆が、今出来ている。
同じように、絆が出来ない人もできるのかもしれない。

それは・・・とても寂しい事・・・

でも。
私は覚えてる。
あの記憶を。
信じてる。
あの人たちを・・・

記憶が変わろうと時間が変わろうと。

私達の絆は、また結ばれる。
また、結ぶ。
なくしたくない。
変わるかもしれないけど。
私が知っている人じゃないかもしれないけど。
でも、私達の絆が、この程度のことで消えてなくなるなんて、思わない。
お姉さまは言った。

何処にいても、どんな姿でも、私を見つけると。

それは、幻想のようなものなのかもしれない。
いや、今ここにいること自体、夢なのかもしれない。
でも、今ここにいることを信じて。
あの世界を信じて。
私は歩いていく。
一歩。
また一歩。

あの輝かしい未来へ向かって・・・




後書き
終わりません。
何か最終回っぽい終わりかたしてますけど、まだ続きます。
次回は学園祭。
今回は祐巳独白に戻りましたけど、次回は一気に人増える予定です。

あと、毎回コメントありがとうございます。
コメントに返信したいとは思うのですけど・・・
確認する時には遥か下までログが流れてしまっているので・・・
週間なら何とかなるかもしれませんが、日刊はちょっと無理っぽいです^^;
それから、一読者様の言う事はもっともなので一行開けない事にしました。

ではまた次回お会いしましょう。


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