がちゃSレイニーシリーズです。
このお話は琴吹が書いた「【No:1705】素朴な疑問」の続きとしてかかれています。
お姉さまは私の目をじっとのぞき込んだ。
「えっと………瞳子ちゃん。私のことをお姉さまという資格が無いって。」
その言葉にお姉さまの綺麗な眉がぴくりとつり上がった。
誤解がないように、あわてて、私は言葉を続ける。
「瞳子ちゃん。志摩子さんのロザリオをちゃんと返していなくて、だから、そのロザリオを返すまでは、私の妹になる資格はないって」
わたしは、お姉さまの顔をじっと見つめていった。
「瞳子ちゃん言ってましたから。『そのロザリオは後で必ず返してもらいますから』って。だから、大丈夫です」
『志摩子さんのロザリオを返したら』心では納得しているし、瞳子ちゃんとしっかりと約束はしている。でも、この場に瞳子ちゃんがいなくて、お姉さまにちゃんと報告できないのは本当はとっても寂しかった。でも、あの時の瞳子ちゃんの言葉は信じられる。あの時、あの瞬間はまだ、私の妹だったのだから。
「祐巳はそれでいいの?」
少し固い声でそう聞いてきたお姉さまの言葉にしっかりと頷く。
「そう、祐巳がいいのならいいの」
お姉さまはそう言って、いすに座った。
「一人分無駄になってしまったわね。まあ、とりあえずお茶にしましょうか」
そう言いながら、いつの間に準備したのか、机の上のティーコジーを取って、カップにゆっくりと紅茶を注いだ。
紅茶の香りがゆったりとあたりに広がった。
しばらくの間、二人の間には、おだやかな沈黙の時間が訪れていた。
その沈黙を思い出したかのように破ったのはお姉さまだった。
「で、瞳子ちゃんは、いつカナダに出発するのかしら?」
「え?」
「妹になるのに、何も聞いていないの?」
お姉さまが何でそんなことを言っているのかわからなかった。瞳子ちゃんは私の妹になる。だから、カナダに行かない。私はそう思っていたから。
「どうして、そんなこと聞くんですか? 瞳子ちゃんは私の妹になるんですよ?」
その言葉にお姉さまが眉をしかめる。
「瞳子ちゃんはあなたの妹になって、なおかつ彼女はカナダに行く。私はそう考えていたけど、違うのかしら?」
「そんなことって………」
考えもつかなかった。いや、それは、触れないようにしていた話題だったのだ。
確かに、瞳子ちゃんは私の妹になるといってくれた。でも、カナダに行かないとは一言も言っていなかった。
瞳子ちゃんはカナダに行ってしまうのだろうか………。
私はただ、ロザリオを握りしめることしかできなかった。