このお話は琴吹がかいた【No:1524】「もう一度近くに居て欲しい存在」のつづきになります
夜が明ける。
山の端から光が差しあたりが闇に包まれた世界にゆっくりと光が行き渡る。
時間が止まっている世界なはずなのに、空が変わる。
それは私がそうなることを望んでいたからだろうか?
丘の上に立った私たちは、かなり長い間そんな風景を見つめていた。
太陽が山よりも高い位置まで顔を出し切った頃、わたしは、彼女に言った。
「ここは、居心地がいいところだった。綺麗なところだった。でも、寂しいところだった」
「そうなの? ここはあなたが望んだ世界だったのに」
「そうかもしれない。でも、ここに来てわかったことがあるの」
その言葉に彼女はとても寂しそうな顔を浮かべる。
それは私が次に述べる言葉がわかっているとでも言うように。
「私は、ここで生きてちゃいけないって。あの場所に帰らなきゃいけないって」
「あなたのことだから、きっとそう言うと思っていた」
彼女はうつむきながらそう言った。
「でも、ここに来たのはあなたの意志だったのよ?」
「それはわかってる。でも、この場所を旅してわかったんだ。私にとってあの場所がどれだけ重要な場所かが」
「そう」
「わがまま言ってごめん。でも………」
「それ以上は聞きたくないわ」
「ごめん」
「いいの。最後に確認させて。あの場所に帰る。それがあなたの願いなのね?」
私はその言葉に力強く頷いた。
「わかった。それがあなたの願いなら………」
彼女はそう言って、私から一歩離れた。
「さよなら。私の大好きな………」
「みんな。今度の日曜日はあいてるかしら?」
仕事が一段落して、みんなでお茶を飲んでるときに、お姉さまがそう聞いた。
その言葉を私はぼんやりと聞いていた。
お姉さまのその問いに、肯定的な返事を返したのは、蓉子と紅薔薇さまだけだった。
黄薔薇さまは差し迫った、試験があり、江利子と、蓉子の妹の祥子は家の用事が、江利子の妹の令は部活があるということだった。
「聖はどうなの?」
私はただ、特になにもないですとだけ、答えた。
「じゃあ、4人で行きましょうか」
「どこに行くのですか?」
当然の質問を蓉子がお姉さまに投げる。
「遊園地の招待券をもらったのよ。期限が迫ってるからみんなと行こうと思って」
「そうですか。喜んで、お供させていただきます」
そうお姉さまに言葉を投げかけた後、蓉子は心配そうに私の顔を伺った。
わたしは、そんな蓉子から目を背け、窓の外を眺めた。
そこにはいつもの学園が広がっていた。
あとがき
とりあえず、シリーズ名はまりおねってことで。
最後まで行けるかわかりませんが、がんばって書いてみようと思います。
後は気長にのんびりやろうと思っています。