まりおね第3話―――このお話はまりみて×ONEのクロスオーバ作品のつもりです。
【No:1524】−【No:1718】
今日も、忙しい日々を過ごす。
時間は、ただただ流れていく。
人一人いなくなったぐらいでは、学園はなにも変わらない。
いなくなった人は、次第に時の流れに埋没し、人々の記憶から忘れ去られていく。
例え私が彼女のことを忘れないとしても、その記憶は、時の中に埋もれてしまう。私は彼女を失ったとしても、私は彼女のことを忘れたくなかった。
時の流れに埋もれ行く未来が嫌だった。
でも、光のように過ぎ去る時の流れを、止めることなど出来るわけがない。
それが出来るのは、神か、この世ではない別の世界。
時が止まった世界。なにもない世界。誰もいない世界。でもそんな世界などあるわけない。
あるわけがないのだ。
ぴんぽーん
遠くからチャイムの音が聞こえた。
誰か来たみたいだ。
その音で、私はほんの少し浮上する。
睡眠という海にたゆたっていたわたしは、母親の言葉に飛び起きた。
「聖ちゃん。蓉子ちゃんが来たわよ。まだねてるの?」
蓉子が? 朝っぱらから何のよう? 今日は何にも予定がない………。
………今日は、お姉さまたちと遊園地に行く日だった。
そう思い出して、私はあわてて飛び起きた。
「そんなにあわてなくても良いわよ」
そんな声と共に、部屋の扉があいた。
「絶対にまだ寝てると思って、少しはやめに来たから」
「それはどうも」
そういってにっこりと笑う蓉子に私は不機嫌を押し隠さずそう返した。
蓉子というのは本当に気が聞く人間で、彼女がきたのは待ち合わせの1時間30分前。のんびりと準備をしても余裕で間に合う時間だった。
目覚まし時計がならなかったのも当然で、私が設定した時間は彼女が来る30分後だったのだから。
準備が終わり、蓉子と一緒に家をでる。
自分一人なら自転車を使うところなのに、蓉子が来たから、バスで行くことにする。
空は青く、日は暖かい。
風が吹かない限りは、外でものんびり出来る。いわゆる小春日和という奴だ。
遊園地で遊ぶには、絶好の日和だろう。
遊園地に行くのはいつ以来だろう。考えてみてもぜんぜん記憶にないから、相当昔なのかもしれない。
「今日は、楽しみね」
そう言いながら、彼女は、わたしの腕をとり、しがみついてきた。
私は、びっくりして、まじまじと蓉子を見つめた。
そんな私を見て蓉子はくすりと笑った。
その笑顔が今の私にはすごく眩しくて、だから、私はその蓉子の視線から目をそらした。
「重い。離れてくれない?」
「まあ、たまにはいいじゃない」
「………まあいいけど」
しばらく考えて、なおかつ、あさっての方向を見ながら私はそう答えた。
蓉子にしがみつかれている腕に、何となく温かいものを感じていた。