私は賢者蓉子。三賢者(通称Magi)のうちの一人、赤の賢者(マギ・キネンシス)である。
バイトで、何だかんだあった(No.148)が、なんとか旅費が貯まり再び旅に出ることになった。
そんなある日。
「う〜〜〜ん、と」
朝起きて、一番にすることは、背伸びをすること。眠気を吹き飛ばし、気を引き締める。あの、おちゃらけ二人組と旅の最中なので、朝から気合をいれておかないといけない。油断したら魔の手、だ。さっそく洗面所に顔を洗いに行く―――
「なんじゃこりゃあーーー!!」
つい、はしたない言葉を発してしまったが、この状況では無理というものだ。だって、だって……
「何で、私が聖になってるのよ!?」
鏡に映った私の顔は聖の顔だったのだから。
「おっはよ〜ん、蓉子♪」
やけにハイテンションな私が、聖の姿をした私に挨拶をしてきた。
「貴方、もしかしなくても聖ね。」
「そうだよ〜ん♪いやぁ、でも、さすがにびっくりしたねー。なんせ、朝起きたら蓉子になってたんだから。」
そう言いながら私の体(本体)を抱きしめる聖。
「ちょ、ちょっと!人の体で何してるのよ!!(////)」
「…遂に、蓉子の身体を手に入れたわ。」
そう言って私の体を撫でまわす。
「変な言い方をするなー!!」
聖を止めたい!だが、あれは私の体だ。不用意な事は出来ない。こういう場合は原因を叩くのが一番。
「…こんな事が出来るのは、江利子しかいないわね。」
何せ、彼女は魔導神だ。
「そうよ。私がやったのよ。」
背後からした声に振り返ると、そこに江利子が立っていた。実に楽しそうだ。
「いきなり背後から出てきて、さらに反省の色なしかよ!それよりこれはどういう事よ、江利子!!」
「それね。この地方に封印されていた古代魔法を手に入れるついでに見つけた魔術よ。面白そうだったから、貴方達で実験してみたのよ。」
「人の体で実験するなー!それより、早く元に戻しなさいよ!!」 引っ張り出して来た古代魔法とやらも気になるが、とりあえず置いておく。
「その魔術は自然に解けるのを待つしかないわ。大体、二週間ってとこかしら。キリストの生誕祭には間に合うわね。」
という事は二週間、私はずっとこのままで、すなわち、聖もこのままという分けであって………
「それより、良いの?蓉子。聖が貴方の体でナンパしてるわよ。」
「ええーーーっ!?」
元に戻れるまで、後13日……。