がちゃSレイニーシリーズ【No:1561】の続き。
というより、ほとんどロザリオ授受の後、第二部スタートのノリですが。
そう、私は舞台女優。
仮面、と言われようとかまわない。それは誉め言葉。
でも、薔薇の館はそれを変えてくれるかもしれない。すこしの間だけ、そう思わせてくれた。いい、夢を、見た。
薔薇の館の住人たちは、私の仮面をマスクと思わない、それどころか仮面があることを気にしさえしなかった。
最初から、仮面なんか気にしちゃいない由乃さま。
『つまり、紅薔薇さまと血のつながりはないんじゃない』
でも、親戚には変わりないでしょ。
『遠縁、という名のね』
真っ向から面だけを打ち込んでくる。
祥子お姉さまのように、私を手のひらで転がす黄薔薇さま。
すぱこーん!
『なーに寝ぼけたこと言ってるの』
『瞳子ちゃん、いい? あなたはあくまで部外者。主導権握るっていうのはおかしいよね』
『ああいうのの扱いには慣れてるからね』
祐巳さまに心を開かれた祥子お姉さま。
『瞳子ちゃんを見ていると、以前の私を見ているようで辛いのよ。素直に生きるのはとっても勇気の要ることだけど、その分得るものも多いのよ』
天敵、細川可南子でさえ。
『ばかドリル!!』
『自分だけで暴走してどうすんのよ。』
そして、志摩子さま。
『乃梨子に貸してあげたロザリオ、あなたに又貸ししたってぜんぜん構わないわよ。』
そんな無茶な!
『無茶じゃないわ。このロザリオをあなたの首にかけたとするわね。そうしたら私の妹はだれ?』
……乃梨子さん、ですわ。
『正解。でもね、その正解がわかっていない祐巳さんだったら、瞳子ちゃんは渡さない。』
いつの間にか、仮面の内側を見抜かれていた、乃梨子さん。
『祐巳さまのこと、どう思っている?』
『祐巳さまの妹になりたいと思っている?』
祐巳さまには関係ありません!!
『そのむきになりかたが、関係あるって言ってるようなもんだよ。』
『瞳子っ。それでいいのか。ほんとにそれでいいのかよ。』
そして。
『瞳子ちゃん。私の妹になってください。世界のどこにいてもあなたは私の妹でいてくれるって信じてる。』
はい。瞳子はいつまでもあなたの妹です。
でも、祐巳さまの妹は、わたしであってはいけない。
この場所にいたい、と、思った。
いつまでもこの場所にいたいと、思った。
でも、ここを去らなければいけないのならば、この人たちを悲しませてはいけない。
だれかが、紅薔薇のつぼみにならなければならない。それは、私じゃない。
嫌われればいい。妹なんかにしたのを後悔させればいい。
『どうして?』って聞かれたら、
不敵な笑いを浮かべて、
『それが何?』って答えればいい。
笑みを浮かべたまま、敵役らしく去っていけばいい。
祐巳さま、行・き・た・く・な・い・よ。
でも、それでもどうしても行かなければならないのなら。
微笑みを崩さない。
『ごきげんよう、私にはあなたなんかより素敵な未来があるのよ』って、
振り向かずに歩いていくのが、松平瞳子という役。
わたしは、女優。
わ・た・し・は、女優よ。