【176】 水着選び一日戦争  (柊雅史 2005-07-07 01:47:10)


※このお話は【No:174】ビキニプリンス優様感染危険 の続きのような、無関係のような、微妙なお話です。



女の子にとって、水着選びは勝負の時である。
例えそれが、一緒に行く相手が弟と変な仲間たち(正式に誘ってなくても絶対来る変態王子含む)という、ロマンスのロの字も期待できない珍道中用だとしても。

「うーん……目移りしちゃうなぁ」
水着コーナーの一角、可愛いワンピースタイプの水着がずらりと並ぶコーナーで腕組みしつつ、祐巳は唸った。
「今年の流行は寒色系だそうですわ。こちらなんていかがですか?」
祐巳と同じコーナーに足を向けた瞳子ちゃんが、2着ほどを選び抜いて祐巳に見せてくれる。
「え……なんかこれ、結構角度がキツクない?」
「それが良いんじゃありませんか! 祐巳さまのふっくらとした太もも! 魅惑のVゾーン! ふおおおお!」
「と、瞳子ちゃん!?」
「……こほん。確かに少々、祐巳さまには大胆だったかも知れませんわね。そもそも男どもに祐巳さまの太ももとVゾーンを見せてたまるものですか」
なんか今、瞳子ちゃんが目と口からレーザー出して叫んだ気がするけど……再び水着選びを開始した瞳子ちゃんは、いつも通りの瞳子ちゃんだった。
きっと祐巳の見間違いなのだろう。
「甘い、甘いわね瞳子ちゃん!」
「ひっ!」
いきなり並んだ水着の間から、にゅっと顔を出したのは由乃さんだ。
真剣に水着を吟味していた瞳子ちゃんは、突如現れた由乃さんに驚いて、顔を引きつらせて仰け反った。
「流行色、大いに結構。しかしそれでは祐巳さんの魅力を引き出している、とは言えないわね。角度はOKだったけど」
「む……」
「というわけで、祐巳さんには暖色系の水着よ。この淡い黄色かオレンジのワンピースなんてどうかしら祐巳さん?」
由乃さんが手にした2着の水着を手渡してくる。
「え……なんかこれ、背中が大胆じゃない?」
「それが良いんじゃない! 祐巳さんのほっそりとした綺麗な背中、整った肩甲骨! ふおおおお!」
「よ、由乃さん!?」
「……おっほん。確かに祐巳さんには大胆すぎたかもしれないわね。そもそも男どもに祐巳さんの背中と肩甲骨を見せてたまるもんか」
なんか今、由乃さんの三つ編みが黄色いオーラをまとってごーっと直立したような気がするけど……再び水着選びを開始した由乃さんは、いつも通りの由乃さんだった。
きっと祐巳の見間違いなのだろう。
「うーん……悩むわねぇ。私は絶対祐巳さんには暖色系、型はおとなしげに見えて微妙にセクシーでドキドキが良いと思うんだけど」
「確かに迷いますわね。私は祐巳さまなら流行の寒色系も着こなすと思うのですけれど。型はギリギリで照れる祐巳さまウォッチングの一石二鳥が良いと思いますわ」
「いや、でもねぇ……それだと風情がなくない?」
「ですけど、照れる祐巳さまのテレテレ笑顔と夏の日差しは熱中症注意ですわ」
「まぁそうなんだけど……」
喧々諤々と議論を始める瞳子ちゃんと由乃さん。
なんだか微妙に変な単語も混じりこんでいる気がするけれど、きっと祐巳の聞き間違いだろう。
だって二人はあんなにも真剣に、祐巳の水着選びを手伝ってくれているのだから。
「うーん、埒が明きませんわ。――乃梨子さん、来てくださいまし!」
「なに、どうかした?」
「乃梨子さんはどの水着が祐巳さまにはお似合いだと思いますか?」
「うーん……この辺り?」
乃梨子ちゃんが選んだのは、淡いピンクを基調とした、可愛いデザインのワンピース。
これなら祐巳も安心して着られそうだ。角度も背中も。
「なによ、つまんないわねー。ちょっと志摩子さん、こっち来て!」
「どうかしたの?」
「志摩子さんも選んでみてよ。祐巳さんに似合いそうな水着」
「え……? そうねぇ……」
志摩子さんが軽く首を傾げつつワンピースのコーナーをぐる〜と見回し――それから、とてとてとビキニコーナーに足を向けた。
「――って、ちょっと待ってよ志摩子さん! 私、さすがにビキニの水着は――」
慌てて呼び止める祐巳の視線の先で。
志摩子さんはビキニコーナーも素通りして、足を止めた。


「――祐巳さんには、スクール水着よ」
「「「「「「「「「 それだっ!! 」」」」」」」」」


そこで全会一致ってどーゆうこと……?


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