暑い日差しが、照りつけていた。
私は令ちゃんと商店街を歩いていた。
私と令ちゃんの間には、今重い沈黙が広がっていた。
どうしてこうなったかは省略する。もう、思い出すのもいらいらするから。
今の状況だけ簡潔に説明すると、令ちゃんがでれでれで、令ちゃんのばかーで、由乃がずんずんという状態なのだ。
しばらく、無言のまま街を歩いていた。
額から汗がこぼれ落ちる。この天気じゃ日に焼ける。
日傘を持ってきていたが、それは令ちゃんが持っていた。
悔しいから後ろは見ないけれども令ちゃん私の背中をじっと見ながらついてきている。手には私の日傘を持って。
いつもの通り、謝ってくればいいのに。そうすればすぐに仲直りしてあげるのに。
実際、けんかの理由としては、自分の方が明らかに悪かった。
でもこれは、いつものじゃれ合いの一つ。私はそう考えていた。
だから、謝ろうという気は毛頭無かった。
日差しは変わらずにぎらぎらと私たちを照らしていた。
暑い! とうとう我慢できなくて、ぎらぎらと光る太陽を思わずにらみ返した。
目がちかちかした。
一瞬目の前が真っ白になったとき、背中のある一点に強烈な刺激が走った。
「イタっ!」
おもわず、網の上で焼かれたあたりめのように体を反らした。
「なにごと!?」
「由乃ちゃん、ごきげんよう」
そこにいたには、何故か江利子さまだった。しかも、なぜか私の日傘を右手にもっていた。
「何で、ここに江利子さまが? そしてなんで、私の日傘もってるんですか? それに今何したんですか?」
敵の登場に思わず私の声も大きくなる。
「ここには、たまたま。夏休みの商店街ですもの私がいてもおかしくないでしょ? それから、後の質問は、かわいい妹の願いを聞き入れたのよ」
かみつく私をどこ吹く風と言う感じで江利子さまはにっこりと笑って言った。
「令ちゃんの願い?」
令ちゃんの顔を見ると決まり悪げに視線をそらした。
「令ちゃんいったい何を願ったって言うの?」
わたしがそういうと、令ちゃんはおそるおそる上を指さした。
「そら?」
ふるふると令ちゃんが首をふる。
「太陽? 雲?」
その言葉にもふるふると令ちゃんが首をふる。
「じゃあ、何を願ったのよ!?」
令ちゃんは目をそらし上を指さしながら小さい声で言った。
「タイトル」
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