※レイニーブルーで祥子のお祖母さまが亡くなった後、手紙を残していったというIFで
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こんな手紙を残していってしまって、御免なさいね。
でも、貴方にはどうしても伝えておきたい事があるの。
『ありがとう。』
何遍言っても足りない程の愛を、私は貴方から貰ったわ。
清子が嫁いで、そして貴方が生まれた。その日から、貴方こそが私の生きる喜びになったの。
元々、体が強くない私は、リリアンの学校行事を見学には行けなかったけれど、貴方が写真を持って訪ねて来てくれる事がとても嬉しかった。
そこには、私がいた頃と少しも変わらない『リリアン』があったから。
写真を見ることで、私は、甘く苦しい刹那さと共にあの頃に戻ることが出来たから。
でもね、祥子さん。
貴方は、そんな私の刹那さ、『後悔』すらも消してくれたのよ。
それは『弓子さんとの再開』
叶わないはずだった私の願い。
それを叶えてくれたのは貴方と、貴方の大切な人。
『福沢 祐巳』ちゃん
弓子さんに会って、ここに来るきっかけになった話を聞いて、私にはすぐに分かったわ。
これは、貴方達が起こした『奇跡』
旅立つ私への最後の、そして最高のプレゼント。
本当にありがとう。
だから、私達からも貴方にプレゼントを返すわね。
これは私と弓子さんから、貴方達への贈り物。
祐巳ちゃんは祥子さんの事が好きよ。
たとえ喧嘩しても、すれ違っても、大切な人を『好き』という気持ちは決して変わらないわ。
私と弓子さんが言うのだから、これは大変な御墨付きでしょう?
だから、ね、祥子さん。祐巳さんとは必ず仲直り出来るわ。
これが、私の新しい『願い』
祥子さんと祐巳ちゃんなら、きっと叶えてくれると信じているわ。
ありがとう、祥子さん
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「・・・御免なさい、お祖母さま」
日の光すら射さない暗い部屋で祥子は細く呟く。
「私には、勇気がありません。・・・祐巳に会うのが・・・怖いの」
祥子は自らの肩を抱きしめうずくまる。
「だって・・・私は許されるはずがないわ・・・」
祥子が最後に見た祐巳の光景が頭に浮かぶ。そこにいたのは、雨に打たれ泣きながら祥子の名を呼ぶ祐巳。
その祐巳の心の叫びを、私は、無視した。
「・・・祐巳」
祐巳の笑顔を思い浮かべる。最後に笑いかけてくれたのはいつだったろう。
「・・祐巳」
祐巳の体温を思い出す。最後に祐巳を抱きしめたのはいつだったろう。
「祐巳」
目を閉じれば浮かぶ祐巳の笑顔が、とても想像とは思えなくて、祥子は無意識に手を伸ばす。
けれど、その手は何をも掴む事は無く空をきる。
『祐巳はもういないのだ。』
祥子は泣いた。床に座り込みベッドに背を預け、しゃくりあげるのも気にせずに泣いた。
どうしたらいいか分からない。何をしたらいいのか分からない。こんなはずじゃなかった。自分は何をまちがえたのだろう、それすらも分からない。
だから、祥子は泣いた。泣きつづけ、やがて祥子の時間は止まる。
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「お姉さま・・・・」
その声で私の時間は動き出す。
けれど、これはきっと夢。何回も飽きる事なく続く、私の都合の良い夢。
でも、体が反応する。例え夢であっても、それは私の望みだから。夢と分かって失望したとしても、そこに祐巳がいるのだから。
「お姉さま」
繰り返される言葉が、祥子の心を満たす。
その声はとても夢とは思えなく、祥子は顔を上げ声のした方を見るが、部屋は暗闇に閉ざされていて、何も見ることが出来ない。
それでも、祥子は言葉を投げかけた。すがるような声で。
「祐巳・・?」
風が吹く。カーテンが翻り日差しが入る。その日差しに照らされて『祐巳』がいた。
これはきっと、お祖母さまがくれた『奇跡』
勇気を出せなかった私へのプレゼント