まりおね第4話―――このお話はまりみて×ONEのクロスオーバ作品のつもりです。
【No:1524】−【No:1718】−【No:1719】
運転手以外誰も乗っていないバスに乗り、駅へとむかう。窓際に座った私は、蓉子に構われたくないので、すぐに、視線を窓の外へとやった。
今日は道路が空いているのか、ぶんぶんと対向車線の車が通り過ぎていく。
少し離れた歩道には、公園にでも遊びに行くのか、5歳くらいの男の子と3歳くらいの女の子が手をつないで歩いてた。
もしかしたら、彼女たちは小さな大冒険中なのかもしれない。
そんな二人を私は自分と栞に重ねた。
私はあの小さな冒険家たちのように栞と冒険にでたかった、窮屈な今を飛び出し、二人きりの未来を目指したかっただけなのに。
ただそれだけなのに。
やがてバスは、あっという間そんな探検家たちをに追い越し駅へと向かう。
バスから降りて集合場所に着くと、そこにお姉さま方がいなかった。
時計を見ると少し早くついたようで30分前だ。
「まだ来ていないわね」
まあ、時間も早いし、当然だという口調で、蓉子がそう言う。
私はそれを聞いて、何も言わずに歩き出した。
「ちょっと。聖、どこ行くの?」
それに答えず、そして速度もゆるめずに私は歩く。
向かう先は、ファーストフード。
お姉さま方を待つとはいえ、わざわざ30分も寒い中で待つことはない。
そう思ったとき、ふと、脳裏にあの日の蓉子が目に浮かんだ。
店の前で、純粋に私を心配しじっと遠くを見つめ、私が来るのを待っていてくれた。
私が寒さを感じなかったあの日。蓉子はどれだけ長い時間、外にいたのだろうか? 彼女は私と同じように、寒さを感じなかっただろうか?
もし私があのまま栞と外の世界に飛び出したのであれば、彼女はずっとあの時と同じように私を待ち続けたのだろうか?
私は小さくため息をつくと、振り返って言った。
「待ち時間でお茶でも飲もう。わざわざ迎えにも来てくれたし、おごる」
私は蓉子の返事も聞かずに、店のレジに並んだ。