「怪盗紅薔薇ファイル。【No:181】の続きなの? ですわ。」
「で、でちゃったよお、瞳子ちゃん、リロード2発で。」
「で、出ちゃいましたねえ、祐巳さま。」
「これは、書くしかないですわね。最近このパターンではまってるんですけど。」
「そうは言っても、静さまよ。イタリアまで行くの?」
「ふふふふ。そんな必要はございませんのよ。」
「なにそれ? DVD?」
「そうですわ。かけますわよ。」
「これはオペラ?」
「そうです。イタリアオペラアカデミーの新人歌手によるオペラなのですよ。」
「えー、それじゃあ。」
「イタリアにいる友人が送ってくれるのですよ。」
「へええ。瞳子ちゃん、オペラ好きなの?」
「好きですし、女優の必修科目ですわ。」
「ふーん。静さまが出ているの?」
「そうらしいのですけど、私もまだ見ていないのです。プッチーニの『トスカ』ですのよ。」
「なにこれ、字幕ないの?」
「日本でテレビ放送されたわけじゃないですもの、そんなものありませんわ。」
「イタリア語なんてわからないよ。」
「これ、手紙で送ってくれたあらすじですわ。」
「さっすが瞳子ちゃん、用意がいいわね。」
「『舞台はナポレオン戦争時代のローマ。』」
「『イケメン画家カヴァラドッシがこっそり、教会の中で祈っている伯爵夫人の絵を描いていた。そこに伯爵夫人の兄で脱獄共和派のアンジェロッティが逃亡してきた。イケメンが脱獄兄をかくまおうとする。』 だれよ、このあらすじ書いたの。」
「友達です。イタリア暮らしが長い、はずなんですけどねえ。『そこへイケメンの恋人トスカ登場』」
「わ、瞳子ちゃん、静さまだ!!!」
「主役ですわね。」
「すごい!」
「『いろいろあって妹&女装して逃げた脱獄兄に嫉妬したトスカ。それを疑った警視総監にあおられて、ぶち切れてイケメンの家へ向かったトスカは、総監の部下にあとをつけられてしまう。』」
「うーん、おやじな警視総監ね。どことなく聖さまに似てるんですけど。これ、なんて歌ってるの?」
「アンジェロッティとトスカを両方とも手に入れてやる、って下心まるだしなのですわ。」
「静さまを狙って、聖さまがあーしたりこーしたりまあそんなことまでしてやるって歌なのね。」
「……まあ、そんなようなものです。」
「あ、イケメンつかまっちゃった。脱獄兄は助かったらしいわね。」
「そこで警視総監が画家を拷問してその声をトスカに聞かせるのですわ。」
「いんけーん。すけべおやじー。『トスカ』ってこんなB級ネタなの?」
「実はそうなのですわ。でも、音楽は一級ですわよ。」
「静さまは脱獄兄を密告してイケメンを助けようとするのね。」
「でも警視総監はトスカの体と引き替えって言うのです。」
「わ、静さま危ない。」
「おー、静さまのアリア。この曲聴いたことあるー。」
「『歌に生き恋に生き』ですわね。」
「静さま、輝いてるわ。けど、この静さまの顔、いつか見たような……。」
「なんですの?」
「いたずら好きなのよ。絶対、なにかたくらんでる顔よ。」
「『聖さまは静さまと引き替えを条件に、イケメンと静さまの通行証を書く。書き終わったところで静さまに迫る聖さま』」
「名前を読みかえないでくださいっっ。」
「その方が迫力出るわよ。」
「『通行証さえあれば聖さまに用はない。静さまはナイフで聖さまの胸を刺す。』」
「ナイフで胸を刺す。」
「ナイフで胸を……」
「ナイフで……」
「あ、パラソル。」
「と言うより和傘ですわね。」
「刺した。」
「仕込み杖かいっ。」
「はああああ。」
「この話、最後まで悲劇で突っ走るんですけどぉ?」
「最後になんか書いてあるわよ。」
「シズカ・カニーナはその歌唱力、美貌とともに、仕込み傘を使ったニンジャの末裔として大喝采を受けた。」
「あーあ。静さまらしいわ。」
「キーワードが出ちゃったからって勢いで書いても無理なのよねえ。」
「私たち、『投稿する』ボタンを押さない勇気が必要なのかしら。」
「うーん。」