「ごきげんよう。お邪魔します」
そこにいたのは、瞳子ちゃん。
電動ドリルのような縦ロールを揺らして、にこやかにほほえんだのだった。
「では改めて。まず、書かれている内容の………」
新たに参加した演劇部所属の一年生、松平瞳子ちゃんにもプリントを渡し、改めて説明し始めた英恵さん。
「………進行して参ります。それでは」
英恵さんが第一項目を読み上げようとした時、部屋の外が再び騒がしくなった。
一旦中断して、廊下側に顔を向ける一同。
「また? もう、気になるわね」
英恵さんがつぶやき、今度は自分の脚で直接調べに行こうとした。
しかし、それより早く。
「ごきげんよう、遅くなってごめんなさい」
息を切らして駆け込んで来たのは、なんと驚いたことに、写真部所属の二年生、武嶋蔦子さん。
カメラとメガネのレンズが、窓からの明りをキラリと反射させた。
「不肖私も、無謀を承知で立候補しますので、説明会に参加します」
などと、度肝を抜くようなことを口にした。
私も含めて、この部屋にいる全員(もちろん蔦子さんは除く)が、心底驚いた顔をしたが、それも一瞬のことで、これは強敵だわ、といった雰囲気の警戒した眼差しで、彼女を迎え入れた。
「では改めて。まず、書かれている内容の………」
新たに参加した写真部のエース、蔦子さんにもプリントを渡し、改めて説明し始めた英恵さん。
「………進行して参ります。それでは」
英恵さんが第一項目を読み上げようとした時、部屋の外が三度騒がしくなった。
一旦中断して、廊下側に顔を向ける一同。
「またなの? もう、気になるわね」
英恵さんがつぶやき、自分の脚で直接調べに行こうとした。
しかし、それより早く。
「ごきげんよう、遅くなってごめんなさい」
息を切らして駆け込んで来たのは、なんと驚いたことに、新聞部所属の二年生、山口真美さん。
愛用の手帳と、カエルシャーペンを手にしている。
「不肖私も、無謀を承知で立候補しますので、説明会に参加します」
などと、度肝を抜くようなことを口にした。
私も含めて、この部屋にいる全員(もちろん真美さんは除く)が、心底驚いた顔をしたが、それも一瞬のことで、こいつは曲者だわ、といった雰囲気の鋭い眼差しで、彼女を迎え入れた。
「では改めて。まず、書かれている内容の………」
新たに参加した新聞部部長、真美さんにもプリントを渡し、改めて説明し始めた英恵さん。
「………進行して参ります。それでは」
英恵さんが第一項目を読み上げようとした時、部屋の外が再び騒がしくなった。
一旦中断して、廊下側に顔を向ける一同。
「またかいな? もう、気になるわね」
英恵さんがつぶやき、自ら直接調べに行こうとした。
しかし、それより早く。
「ごきげんよう、遅くなってごめんなさい」
息を切らして駆け込んで来たのは、なんと驚いたことに、テニス部所属の二年生、確か………桂さん。
だったっけ? テニスラケットを持ってるし。
確か本名はえーと………まぁいいや、思い出すのも面倒くさいし。
「不肖私も、無謀を承知で立候補しますので、説明会に参加します」
などと、度肝を抜くようなことをほざき…口にした。
私も含めて、この部屋にいる全員(もちろん桂さんは除く)が、心底嫌そうな顔をしたが、それも一瞬のことで、まぁせいぜい頑張ってくれや、といった雰囲気の生暖かい眼差しで、彼女を迎え入れた。
*****
「ただ今より、来年度の生徒会役員選挙の結果を発表いたします」
掲示板に紙を貼り終えると、覆っていた白い紙が剥がされた。
「──」
唖然とした表情で掲示板を見つめる、紅薔薇のつぼみ福沢祐巳、黄薔薇のつぼみ島津由乃、白薔薇さま藤堂志摩子。
それもそのはず、当選を示す紅い花のシールが、三人の誰にも貼っていなかったのだから。
だからと言って、松平瞳子に貼っているわけでもない。
なんと驚いたことに、当選シールが貼っていたのは、武嶋蔦子、山口真美、そして桂だったのだ。
『………どうゆうこと?』
落選者4名が、期せずして同時に呆然と呟いたが、歓声が上がっている掲示板の前では、自分自身の耳にしか届かないのだった。
『納得イカーン!?』
既に人が居なくなった掲示板前では、祐巳、由乃、志摩子、そして瞳子の4人だけが、無駄に大声を張り上げていた。
こうして来年度の生徒会、山百合会の幹部は、写薔薇さま(ロサ・カメラ)武嶋蔦子、記者薔薇さま(ロサ・プレス)山口真美、並薔薇さま(ロサ・カツラ)の三人に決まったのだった。