「祐巳」
「なんですか?」
「一つお願いがあるのだけど」
「お願い…ですか?」
「ええ、昔から一つだけやってみたかったことがあるのよ。協力してくれるかしら」
「わ、私に出来ることなら何でもします!!」
「ありがとう祐巳。じゃあさっそくこれを」
「……な、なんですかこれは」
「ナニって…見ての通りよ。これをあなたと…」
「お姉さま、こんなの駄目ですっ!!」
「あら、なんで?」
「な、なんでって…」
「いいから、早くしましょう?令たちが来てしまうわ」
「で、でも」
「いいから。私に恥をかかせる気?」
「……わかりましたお姉さま、そこまで仰るのなら」
「ど、どうしたの!?」
遅れること2分、薔薇の館に来た由乃たち出迎えたのはうだるような夏の暑さと、充満するナニかが腐ったような酸っぱいような苦いような臭い、テーブルの上にある半分こされた真っ黒なバナナ、顔面蒼白でお腹を押さえ悶える紅薔薇姉妹だった。
のちに祥子は語る。
「二日鞄の中に入れといただけでバナナがああなるなんて知らなかったのよ」