マリア様の下に集いし乙女達は、今日も今日とて純粋培養お嬢様になるべく学園生活を粛々と送っている。
勉学に励み、心身を鍛え、親しい者同士が親交を深める。
そんな、いつもと変わらぬ日常を送る乙女の園…だった……つい170とか171の前までw
「「 なんじゃコリャ〜〜〜〜〜!!!! 」」
薔薇の館にそぐわない絶叫が響き渡る。
声の主は、由乃と祐巳のコンビ…なぜか二人とも腹部を抑え苦しげなポーズを決めている。
「祐巳さん!ようやくキマッたね!」
「…ええ…はえてなかったり、はいてなかったりしたからね…(遠い目)」
伝説のポーズをコンビで決めきり、晴れ晴れとした表情を浮かべている由乃と対照的に、祐巳の表情は暗い…というかやさぐれているw
*まぁ、なんだ、色々あったからねww…時間軸変だけど気にするな、がんばれ祐巳(まて
「ほら祐巳さん!いつまでもいぢけてないで、今はこれよコレ!!」
そう言って、影線貼り付けた祐巳に由乃が突きつけたのはいつもの爆弾…もといリリアン瓦版だった。
『 本誌独占! 』
『 緊急スクープ!! 』
『 白薔薇の蕾が激白!! 』
『 体育祭新企画情報入手!!! 』
『 その名も… 超天然スクール水着大運動会!!! 』
リリアン瓦版1面ブチ抜きの物騒な見出し&どこぞの漫才コンビらしきスクール水着を着た2人のツーショット写真は、タモ○さんがいんぱくち満点くれそうなできであった…
「ど・ど・ど・どうして、私と由乃さんのこんな写真が載ってるの〜〜〜〜!!?」
写真には御丁寧に目線が入っていたが、誰がどう見ても紅薔薇の蕾と黄薔薇の蕾である事はバレバレ。
というか、下手に目線なんか入っているせいで、何気にいかがわしさだけ大爆発であった。
「落ち着いて祐巳さん、これ私達じゃないわ」
「うがぁーーっって、ホント?」
「そうよ、だって写真に撮られてるような事して無いじゃない」
そう言って、再び由乃が件の爆弾をユミの眼前に突きつける。
「……そういえば、そうか」
自分でも思い当たる節があるのか、今度は落ち着いてまじまじと瓦版を眺める祐巳。
そこには、祐巳(と思しき人物)と由乃(これまた思しき人物)が、スクール水着姿で腕を組んで寄り添っている。
目線が入っている為、全体の表情から感情を読み取るのは難しく、それにより微笑をたたえた口元が強調されアブノーマルな雰囲気をかもし出している。
「ぅぅう… 嫌な写真だよぉ〜由乃さん〜〜」
「同感よ!そうじゃなくて気がつかない?ここ!この風景!!」
「うぐぅ… って、プール?違う!あれ??どこ??これ!?」
写真にはニセ祐巳&ニセ由乃の背後に、少しボケているが一見、学園のプールサイドらしき情景が写っている。
しかし、よくよく見ると、飛び込み台の配置や奥手に見えるフェンスの金網が、慣れ親しんだ学園のプールの設備と異なっていた。
「由乃さん!これ、リリアンのプールじゃないよ!」
「でしょ?で、私と祐巳さんは、そんな見も知らないプールサイドで仲良くスクール水着で腕を組んだことあったかしら?」
「ないないないないないない!!」
「そこまで嫌なのか藻前は… まぁ、いいわ…あのね、これは合成よ、合成写真!!適当なグラビアに私たちの顔だけ貼り付けてあるの!」
「えええぇぇぇ!ごうせいしゃしん?!そんな…ものすごい本格的なんですけど…」
パソコンで簡単に画像処理ができる昨今、こんなものはお茶の子さいさいなのだが、そこはそれ、幼稚舎から純粋培養お嬢様として育てられたリリアン嬢。合成写真なんぞは、ドラマや映画のお話に出てくるものだと思っている。
生まれてはじめて手にした〔ごうせいしゃしん〕なるものを物珍しげに眺めていると、なにやら目の端に違和感を捕らえた。
「…………よし、の…さん……」
「なに?」
なにやらガサゴソと荷物を漁っていた相方由乃に、ギギィっと機械的に顔を向ける祐巳。
「…………これ…」
目を点にした祐巳が震える指で指し示す場所。写真の隅。おそらく意図的であろう、ちょうど、飛び込み台の影になり暗い色合いをした部分に隠れるようにその文字はあった。
【写真はイメージ画像です by蔦子】
「あ・の・あま〜! 盗撮だけぢゃ飽き足らず、アイコラにまで手ぇ〜出したか!!!」
「由乃さんんっ!!! 殿中! 殿中でござるうぅぅ!!!」
荷物の中から愛刀村雨丸(剣道部練習用木刀 命名:祐巳)をぶっこ抜き、敵事務所にカチコミかけようといきり立つ由乃を、呆然一転すがりついて止める祐巳。
「離してくれ祐巳殿! 拙者!もう我慢ならん!」
「なりませぬ!どうか! どうか御自重を!!」
「武士の情け!お見逃し下さい!! 吉良を討てば拙者もこの〆鯖丸で…(祐巳命名「村雨丸」却下「〆鯖丸」確定)」
「しかしそれでは黄薔薇家は断絶! 何卒この場は!この場は収めて下され!!!」
「くぅぅぅ〜〜〜〜〜〜 吉良!! 吉良ぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ちょっと早めの年末行事に突入していた舞台に、はえていない(もとい)はいている(くどい)お姉様が降臨した。
「…ごきげんよう」
「「志摩子さん!!」」
もう、二次創作の世界ではおなじみとなったほんわかぽけぽけオーラを纏った白薔薇様こと藤堂志摩子は、時代劇モードに逝ってる漫才コンビに動じるはずも無く、ニコニコとした笑顔を向けている。
「「……………………やっぱりこのパターンか」」
「ごめんなさい、よろしければ討ち入りが終わるまで待ちますわ」
「「…………いえ、もうイイです…」」
「あら、残念。それでは…」
入ってきた扉から一旦退出し、すぐにまた入室する志摩子。
「…ごきげんよう」
「「やり直し??!」」
「うふふっ… 冗談よ、冗談♪」
「ハイハイ、もう十分でしょ、毎度毎度同じパターンだから少しは学習したわよ」
「由乃さ〜ん、そんな投げやりにならなくても…」
「はえてたり、はいてなかったりしたからね!したくない学習はばっちりよ!」
「お二人とも、私の為にケンカをするのはよして下さい」
「「違うって!!」」
由乃&祐巳によるどつき漫才with志摩子の開演かとおもいきや、ため息と共に由乃が自ら幕を引いた。
「……はぁ、もう疲れたわ。 乃梨子ちゃ〜ん!いるんでしょ?入ってきなさいよ」
「由乃さんどうしたの?いつもみたいに後先考えない凸っぷりがないよ?!」
「……祐巳さん…後で話があるから体育館の裏に来てね♪」
「よしのんかわいくでだいすきだお〜〜〜」
「ナゼに棒読み?ま、いいわ。あのね祐巳さん。3度目だよ3度目!もういいかげん飽きたの!わかるでしょ?肩こったの!!」
「…肩こり??? わかる?志摩子さん??」
「うふ、祐巳さん。世の中にはね、分からないままにしておいたほうが長生きできる事ってあるのよ」
「志摩子さんの目がとても怖いので、分からないままにしておく所存です!サー!」
その時、頃合を計っていたかのように、仏像スキー乃梨子が入室してきた。
つかつかと歩みより、もはや見慣れてしまった辞書を、これまたいつも通り無言のままズビシッと突きつけた。
白薔薇姉妹が退室し、再び二人きりになった薔薇の館で、祐巳&由乃は辞書を開く。
「スクール水着と大運動会は外していいよね」
「そうね、この語句の中で怪しいのは超天然だと思うわ。まさか、スクール水着が運動会するはずが無いし」
「ちょうてんねんか…蝶? 違うかな? 天然のほうかな??」
「ああーー!もう!待ってよ祐巳さん! どうせくだらない引っかけなんだからあせらせないで!」
いつもは乃梨子が答えを指してくれるのだが、今回はただ辞書を置いていっただけなので、予想以上に手間がかかっていた。
「なんだろう… まさかスクール水着のほうかな?巣来ーる? あ!大運動会じゃなくて、おお!運動かい?とかだったりしてw」
「うきーーー!超も天然もスクールも水着も全部調べても別の意味なんて出てこないわ〜〜〜!!!!」
「うわ!またしても由乃さんの持病の発作が!!」
「むきーーーーーーーーっ!!! なんなのよ! 超天然スクール水着大運動会ってぇぇぇぇ!!!」
由乃が辞書に向かって癇癪を起こし始めた時、どこかに挟まっていたと思しき一枚の紙切れがスルリと落ちた。
「んんっ??!」
「由乃さん、これって……」
その2つ折りにされた薄紫の上質な便箋らしきものを開くと、丁寧な字でこう書かれてあった。
『 どれだけ考えてもオチが思いつかなかったの
だから、超天然スクール水着大運動会は祐巳さんと由乃さん2人の出し物として
白薔薇の力を使ってでも演目に入れますので、御安心下さい。
超天然スクール水着はつてがありますので私が用意します。
ぶ〜とぅんホワイト 藤堂志摩子 』
「……」
「………」
「由乃さん、超天然スクール水着ってなんだろう」
「……知らない」
「私達何やらされるのかなぁ…」
「…知りたくない!」
「……」
「………」
「まぢ?」
「ゲキマジ…多分」
「…」
「…」
「あれやる?」
「そうね…」
のろのろと立ち上がり、憂鬱な表情のまま並ぶ2人。
少し前かがみになりお腹に軽く手を添える…
どちらともなく、しかしピタリと一致したタイミングで叫ぶ!それはまさに魂の慟哭!!!
「「 なんじゃコリャ〜〜〜〜〜!!!! 」」
閑散とした校内を並んで歩く白薔薇姉妹
どこか遠くから聞き覚えのある雄叫びが聞こえたような気がする
「本当にうらやましいコンビよね♪」「はぁ…そうですか?」
「ふふ、乃梨子も早く相方を見つけないとね」「(相方って…)ところで、お姉様?」
「なぁに?乃梨子」「超天然スクール水着ってなんですか?」
「あら?!興味があるの?そうね…乃梨子用にも用意しないとね♪」「げっ!い、いや…どんなものか分かればそれで…」
「なぁに?遠慮なんかしなくていいわよ」「遠慮じゃなく拒絶…」
「いい事!乃梨子!!」「うひゃ!ま、また、そんなに顔を近づけられると…!」
「スクール水着の素材はね種類が少ないの!」「ち、近いよ、志摩子さん!」
「最近ではポリエステルとポリウレタンが幅をきかせてるの!!」「息が、髪が……」
「それに比べてブ○マはいまだに綿100%とか羨ましいことを平気で!」「睫毛に瞳…あぁもう駄目かも…」
「乃梨子には分かるでしょ!この悔しさが!」「ひゃい…志摩子ひゃんは綺麗です…」
「分かるのね♪さすが私の妹だわ」「はぁ、はぁ、あ…危なかった……もう少しで渡河完了するとこだった…」
「……でね、乃梨子…乃梨子?」「あ…はい!」
「んもう…聞いてなかったの?」「えぇっと、スミマセン…」
「あのね、この話多分終了だから超天然スクール水着の事はまた今度、コンマ以下の可能性があれば…ね」「いやもう、それは願ったり叶ったり…」
「…………もう少しがんばって乃梨子には着てもらおうかしら」「ゴメンナサイノリコハワルイコデシタ」
「はい、よくできました♪」「……」
「でも、現実は残酷ね、眠いし肩こったし、お腹空いたという怨念がどこからともなく降って来るの」「それはまぁ、今回も寝る間際にボタン押すからでしょう」
「そうよね…これもマリア様のお導き…」「そうでしょうか……?」
「題名Keyタブはね押す為にあるの、乃梨子もきっとその日が来るわ」「(ぜって〜来ないって)」
「さぁ乃梨子、マリア様に祈りましょう」「はい」
「美味しそうな単語登録が減りますように」「…え?」
「投稿お題の続編じみた単語がリロード二回で出たりしませんように」「……はい??」
「忙しかったり眠かったりする時にジャックポットするのは仕様で塚?マリア様?」「………ロザリオ本当に返してもいいですか?マリア様」
:後日談:
理由は不明だが「超天然スクール水着大運動会」の企画は没になったらしい
体育祭では黄薔薇の蕾が白薔薇様に玉をぶつけまくっていたらしい
なぜそのような行動に出たのか、その理由を知るものはごくわずからしい…