「その場で百数えなさい」
「数え終わるまで動いちゃダメよ」
「……百」
瞳子は目を開けた。
辺りを見回したが、祐巳さまの姿はもうどこにもなかった。
そこにいたのは、マリア様だけだった。
瞳子ちゃんが百数え終わったみたいだ。
周りをキョロキョロ見渡している。
あっ、こっちを見てる。みつかっちゃったのかな?
違うみたい。瞳子ちゃんは三年生の校舎の方に向かった。なんで三年生校舎なんだろう?
しばらくすると、瞳子ちゃんが校舎から出てきた、お姉さまと一緒に。
瞳子ちゃん、考えたわね。お姉さまに聞くつもりなんだ。でも、さすがのお姉さまも知らないと思うけど。
瞳子ちゃんはしばらくお姉さまと話をしてたけど、案の定、お姉さまは知らなかったみたいで、がっくりと芝生の上に膝をついた。
瞳子ちゃん、大げさだよ。お姉さまが知らなかったのがそんなにショックだったの?
ん、いつの間にかお姉さまがいなくなって、乃梨子ちゃんが瞳子ちゃんの側にいるよ。
瞳子ちゃんの手をとって慰めているみたいだ。
あっ、瞳子ちゃんが立ち上がった。二人でこっちに来るみたい。
瞳子ちゃんは乃梨子ちゃんの手をしっかりと握って、「乃梨子、乃梨子」ってつぶやいている。
って、おーい、通り過ぎちゃったよ!しかも二人で校門の向こうに消えちゃった!
瞳子ちゃん、ひどいよぉ。オニが帰っちゃったら、ここに隠れている私の立場はどぉーなるの?
当然のことであるが、瞳子ちゃんは祐巳が自分とカクレンボをしている(つもりになっている)なんて、ちぃ〜〜っとも気づいていなかったのだった。
翌朝、呪いのように【No:1920】を呟いている福沢祐巳がマリア様の後で発見され、リリアンかわら版にさらされた。