【1947】 思いのままに  (オキ&ハル 2006-10-21 04:06:38)


もちもちぽんぽんしりーず。
【No:1878】ー【No:1868】ー【No:1875】ー【No:1883】ー【No:1892】ー【No:1901】ー【No:1915】ー【No:1930】ー【No:1929】ーこれ



「由乃からロザリオ返されたことを報告しただけなんですけど。」

「えーーー!」


時計の針を少し巻き戻す。





新聞部に所属する『山口真美』は今日もリリアンかわら版の発行に追われていた。
とりあえず、まずすべきは目の前の人物を現実に戻すこと。
「美しいわ。このレイアウト、自分の才能が恐ろしい。」
ため息が出る。
この人の才能は認めるがこの癖だけはどうにかならないだろうか。
「お姉さま、さっさと現実の戻りませんと、明日までに刷り上りませんよ。」
陶酔する築山三奈子の目の前に、さっき刷り上ったばかりの試し刷りを突きつけた。
「わ、わかってるわよ。・・・せめて島津由乃の半分くらい。」
「何か言いました?」
ぼそぼそと何か言ったようだけど、今はそれどころじゃない。
なにせ締め切り前なのだ。
「あれ?」
席に戻ろうとすると、お姉さまが声を上げた。
「これ間違ってない?黄薔薇さまの趣味が編み物、好きな本が少女小説?」
確かに自分の中の黄薔薇さまのイメージと異なる。
「誰かと入れ替わってしまったんでしょうか?」
「ああ、たぶんこれよ。」
近づいた私に指でさして示した。
「島津由乃さんの趣味がスポーツ観戦、好きな本が剣客ものって書いてあるもの。」
「黄薔薇さまの好きな言葉は『まごころ』、由乃さんが『先手必勝』。」
なるほど、入れ替わってるとすれば納得できる。
「え?でも、見てください。」
話を聞いていた他の部員がアンケート用紙を掲げると、端をクリップで留められている。
それでは混ざるわけはない。
「たぶん、お二人が一緒に書いて、その時混じってしまったんじゃないかしら?」
「では、どうしましょう?」
私の問いにお姉さまは少し考えると
「一応確認しないといけないわね。真美は薔薇の館に行って。私は武道館に行くから。」
「はい。」
愛用のメモ帳とペンをつかむと、部屋を飛び出した。



同時刻


武嶋蔦子はカメラ片手にふらふらと歩いていた。
文化祭までは展示をするために、ある程度気をつけて撮っていたが、終わってしまったので適当に被写体を探していた。
女の子とか、女の子とか、女の子とか。
どこに行こうか考えていると、前方に見知った顔を見つけた。
「江利子さま。」
黄薔薇の蕾、鳥居江利子さま。・・・けど。
足取りがなぜか安定していない。
「ごきげんよう、どうかなさったんですか?」
「・・・別に、何も無いわ。それより何か用?」
軽くため息をつきながら、物憂げな姿が艶っぽい。
「いえ、単にお見かけしただけですから。」
「・・・そう、もう良いかしら。」
基本的に笑顔を振りまくこと無い方だが、今日はさらに無愛想。
気だるげと言うのがぴったりかもしれない。
何があったのだろうか?
好奇心がうずく。
「ええ、失礼しました。」
一応、別れようとすると
「ねぇ、あなた。」
「はい?」
踏み出そうとした状態で顔を向けた。
「川をね、ボートで流されていて、その先に大きな滝があるの。でも、滝を下りないと我が家に帰れないの。」
「えーと?」
何かの例え話なのだろうか?
「オールはあるのよ。どっちへ行けば良いと思う?」
話は続いているらしい。
「帰る方法がそれしかないんでしたら降りるしかないんじゃないですか?」
特に裏を読むことなく、普通に答える。
「そう、ありがとう。」
何を言うわけでもなく、そのまま歩いていってしまった。
「?」
一体なんだったのだろうか?
まぁ、何であろうと構わない。
少しその場に留まると、笑みを浮かべて江利子さまの後を追った。


「あら?」
蔦子と真美は同時に声をあげた。
「なんで蔦子さんがここに?」
「それはこっちも聞きたいけど、今はそれより。」
「そうね、それより。」
2人は今、薔薇の館の陰に隠れている。
目の前では、黄薔薇さまと江利子さまが話しをしている。
「〜〜〜〜〜。」
声が小さすぎてここまで聞こえない。
それでも、黄薔薇さまが江利子さまを問い詰めているよう。
ついには江利子さまの二の腕を掴んで壁に押し付ける。
おかげで、少し近づいた上に黄薔薇さまが激昂したおかげで声が大きくなった。

「『約束』したはずよ。」
「私は確かに約束を果たしたはずですが。」
「・・・・・・ロザリオを返して。私が由乃を妹にする。」
「それは出来ません。由乃にも、それはするな。と言われました。」

江利子さまの言葉に黄薔薇さまは掴んでいた手を離すと、ふらふらと歩き出した。
ちょっとした凹凸に足をとられると、そのままひざをついてそのまま横に寝てしまった。
江利子さまは歩み寄ると、周囲をぐるっと見渡した。
陰に隠れていた2人はあわてて顔を引っ込める。
「呼んでくるか。」
そう残して薔薇の館の中に入っていく。
「スクープよ。急がないと明日に間に合わない!」
真美はメモを片手に走り出した。
その姿は、淑女と言うよりは新聞記者で。
「やれやれ、真美さんったら。」
そうは言いながらも、倒れている黄薔薇さまの写真を撮る蔦子もやっぱり蔦子だった。








「令、令。」
肩を揺さぶられる振動に目を開くと、祥子をはじめとした面々が私を覗き込んでいた。
「あれ?私。」
何でこんなところに寝てるんだろう?
「貴女、江利子ちゃんから由乃ちゃんがロザリオを返したことを聞いてショックで倒れたのよ。」
ため息と一緒に出た言葉に、何があったか思い出す。
「江利子は?」
慌てて上半身を起こすと、祥子は小さく悲鳴を上げて尻餅をついた。
「帰ってもらったわ。」
スカートについた砂をはたく祥子の代わりに静かが教えてくれる。
「何で!?」
聞きたいことが山ほどあるのに。
「貴女がそんなだからよ。」
「・・・。」
何も言い返せない。
「祐巳ちゃん、先に上がってお茶入れ直してくれない?」
「あ、はい。」
「待って、私も行くわ。」
蓉子ちゃんと祐巳ちゃんが薔薇の館に向かって歩いていく。


いつか、祐巳ちゃんもロザリオを返したくなるんだろうか?

「黄薔薇さま。」
聖ちゃんが手を貸してくれた。
「ありがとう。」
立ち上がると、パラパラと砂が落ちる。
「令ったら、背中が砂まみれよ。ちゃんと落として入って頂戴。」
文句を言いながらも祥子と静が叩いてくれる。
「ごめん。」
それしか言えなかった。


2階に上がると、先に上がった2人が紅茶を配っていた。
「今、丁度入れ直し終わったところです。」
「ありがとう。令、これを飲んだらもう帰りなさい。」
蓉子ちゃんには笑顔で、私にはちょっと怒った顔で。
「えっ?でも、まだ仕事が・・・。」
たいした量ではないけど、まだ少し残ってるはず。
「そんな顔でいられたんじゃ、こっちが迷惑よ。」
ばっさりと。
それでも、どこか気を使っているのが感じられて。
「ごめん。」
素直にそうすることにした。
自分の席に戻ると、やりかけの書類をまとめて祥子に手渡す。
蓉子ちゃん、祐巳ちゃん、いつもならどっちが入れたか分かるのに、今はどちらか分からない。
「は〜。」
無意識にため息をついたことに気付く。
これは、確かにいるだけで迷惑になりそうだ。
さっさと居なくなろうと、まだ熱いのに出来る限り早く飲み干した。



帰ってまず向かったのは、自分の家じゃなくて隣の家。
「こんばんわ。」
しばらくしてパタパタとスリッパを鳴らして由乃のお母さんが出てきた。
「おかえり、令ちゃん。どうしたのかしら?鞄も置かずに。」
「いえ、今日は姿を見なかったので心配になりまして。」
嘘じゃない。
確かに姿は見ていない。
私の心配そうな言葉に叔母さんは嬉しそうな顔をした。
「これから言いに行くって、本人が言ってたんだけど。」
「はぁ。」
何があるか分からないけど、この表情からすると良い事のようだ。
「由乃の手術の日取りが決まったの。」
「え!?」
予想していなかった。・・・とまではいかないけど、まさか本人が突然言い出すなんて。
「い、何時ですか?」
「聞いてなかったの?」
私のあまりの驚きぶりに叔母さんは不思議そうな顔をした。
「はい。」
「私はてっきり・・・。」
「とりあえず、上がらせてもらっていいでしょうか?」
「ええ、由乃なら自分の部屋よ。・・・あら、いけない。」
火をかけっ放しだったのか、急いで台所に戻っていった。
いまさらながらだけど、今日は夕飯は由乃の好物の肉じゃがらしい。

「おかえり〜。」
私の顔を見た由乃の第一声がそれだった。
「おかえり〜、じゃなくて、手術が決まったって本当?」
「本当よ。」
言うと、自分の周囲を示した。
「明日から入院。」
「明日!?」
入ってきてから由乃しか見ていなかったけど、改めて見ると大きな鞄に着替えやら小物を詰めていた。
「何で急に?」
由乃の前に座り込むと、由乃もこちらを向いて座りなおした。
「だって、昨日決まったんだもん。」
「そういう意味じゃなくて。」
畳んでいたパジャマを隣に置くと、ため息をついた。
「令ちゃんは、駄目だって言うの?」
まっすぐに私の目を見て。
「・・・そういう訳じゃないけど。」
相談くらい・・・。
私は目をそらして、由乃の視線から逃げた。

「令ちゃんもう卒業でしょう。その前に、手術をしたかったのよ。」










「・・・じゃあ、何でロザリオを返したの?」
本来ここに来た目的はそれを聞くため。
「それは、もう一度考えたかったから。」
横に置いたパジャマを取って、また折りたたみ始めた。
「考える?」
「そうよ。『約束』で姉妹になったけど、私にそれが相応しいか考えたいの。」
「でも、何も返すことは・・・。」
「丁度良い機会だから、リセットしたかったの。」
「・・・でも。」
「令ちゃん。

・・・解って。」

もう何も言えない。
そう言われてしまっては
「うん。」
そう言うしかないじゃない。
「多分、2週間はかからないと思うから、会いに来ないで。」
「そんな!?」
「ほんの一寸の間だから。」
宥めるような口調で。
これじゃ、どっちが年上か分からない。
「うん、ごめん。」
続ける会話も無く、私は部屋を出て行く。
帰り際、叔母さんから多く作ったと言う肉じゃがをもらった。
確かうちの味付けより甘めだったような気がする。





今、薔薇の館の中に居るのは水野蓉子と佐藤聖だけだった。
黄薔薇ファミリーで騒動があって、明けて次の日。
朝から号外が配られた。


―――黄薔薇革命―――


そう銘うった一連のあらすじが推測交じりで書かれている。
曰く、私が居るせいでお姉さま方がギクシャクしてしまった。
強く責任を感じた由乃ちゃんは、二人の仲が戻ることを祈って泣く泣く身を引いた。
・・・感想としては、うまく書けた小説。
すべて「〜であるようだ。」とか「〜と思われる。」なのに、全体で見ると由乃ちゃんの心境まで書かれていて、これを書いた人は良い小説家になれそうだ。
おかげで、朝から視線が感じられて仕方ない。
薔薇さま方は全員聞き辛いし、志摩子ちゃんもそう。
江利子は何時にもましてアンニュイで。
「祐巳ちゃんは大丈夫かしら?」
お弁当を食べながら、ふと思った。
「そんな心配なら連れて来れば良かったのに。」
隣では、聖がマスタード・タラモサラダ・サンドをほおばっている。
「もう山百合会の一員なのよ。そんなことは出来ないわ。」
「蓉子らしい。」
どこか笑っているような言葉だけど、当たってる。
「これから色々起こるかもしれないわね。」
「多分ね、でも私たちはスーパーマンじゃない。」
「解ってるわ。何も出来ないわ。」
俵型のおにぎりを転がした。



「でも、何があっても自業自得でしょう。」


「・・・そうね。」


最後の一口を食べながら、吐き出すような言葉を否定する力を私は持たない。



そして、黄薔薇さまがおそらく無意識下でこぼしたであろう。



「・・・『約束』したのに。」












『約束』という言葉は、まだ彼女を縛っている。


















支倉令は、食事を終えるとふらふらと歩き回っていた。
本当なら学校にも来ず、病室で由乃の傍に居たい。
でも、「来ないで。」と言われた。

見上げれば秋晴れの空。

あの時の由乃を思い出す。

まっすぐな瞳。




小さいころから一緒だった。





いつかこんな日が来るとは思ってた。







何時までも一緒に居ることは出来ない。









それでも








寂しいって思うのは











私の我侭なんだろうか。











はい。騒動起こしました。?白薔薇なんとかしないとなぁ。その前にテスト勉強頑張らないとな。笑(オキ)
最近体力が落ちてます。テストは良いんですが、テスト勉強がいつの間にか酒飲みながら徹麻になるのがきついなぁ。(ハル)


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