【198】 パニック悶え死に  (daisy 2005-07-11 23:46:50)


今日は瞳子は薔薇の館でのお手伝い。ところが部屋に来てみると、誰もいない?

  「とーこちゃん♪」
  「ひっ」

突然、後ろから抱きつかれて驚いてしまいました。
声ですぐ分かりますが、このようなことをするのは祐巳さましかおりません。
日々スキルアップして、最近では、足音を殺して後ろに近づく技を身に着けてしまって、
本当に困ったお方ですわ。ここは凛と抗議をいたしましょう。

  「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、祐巳さま。い、い、いきなり後ろから、だ、だ、抱きつかないでください。」

抱きつかれたままのためか、ちょっと声が震えてしまいました。
決して動揺しているわけではありませんわ。

  「とーこちゃん抱き心地いいんだもの。減るもんじゃないし、ちょっとぐらい、いいじゃない?」

祐巳さまはとんでもないことを言われる。
このまま、野放しにすると、他の方に抱きつきそうで、抱きつくのは私だけに・・じゃなくて、
薔薇様になると言う方が、それでは困りますわ。
やはり、ここは私一人が犠牲になって、我慢しましょう。

  「分かりました、少しだけですよ。」
  「わーい、瞳子ちゃんの許しをもらえた〜。でも、瞳子ちゃん顔真っ赤だよ、大丈夫。」

こ、これは、幸福のあまりに真っ赤になってるのでは決してありませんわ。
きっと祐巳さまが私に抱きつくことで血液の流れが阻害されて・・

  「どれどれ、熱は?・・わー、とーこちゃんのホッペすべすべ。」

!!
祐巳さまが私に抱きついたまま、私の右頬に左頬を並べてすりすりさせているではありませんか。
突然、このようなことされると、理性が・・
あー、これが祐巳さまの頬の感触・・
・・

(プチッ)・・何かが切れる音・・

ふっ。もうこうなれば・・やるしかありませんわ。
祐巳さまは後ろから私の右頬にすりすりしているから、ここで、私が右を向けば・・
キャー
祐巳さまのホッペに私の唇が、嬉し恥かしの初キッス。
事故チューと言い張れば、単純な祐巳さまは信じてくれますわ。
頭の中で2回ほどシミュレーションして、これで完璧。

瞳子、勇気を出してゴーですわ。

よし。えい。

  「うーん、ちょっと熱いかな?逆側のホッペは・・
   瞳子ちゃん、いきなり横向いたら逆側のホッペ見れないじゃない。」

私が横を向く一瞬前、祐巳さまは顔を引っ込めてしまいました。
おかげで計画がガラガラと崩れてしまいました。
私の勇気が・・。

  「そうか、体温はおでこでみないとね。」

私が呆然としていると祐巳さまは私の方向を90度回転させて・・
え、向かいあわせて・・え、え?
祐巳さまのお顔が近づいてきます。
体は祐巳さまの腕で固定されていて動けないし・・
祐巳さま・・おでこで体温はかるんですよね。
何で、目をつぶるんですかー

祐巳さまのおでこが私のおでこに・・
お顔が近すぎます・・
祐巳さまの眼が・・唇が・・鼻が・・
きゅー

  「熱があるじゃない、瞳子ちゃん。
   え、瞳子ちゃん、あーん、瞳子ちゃんが倒れちゃったよ。」

祐巳さまの声を遠くに聞きながら、私は意識を失ってしまいました。


一つ戻る   一つ進む