【2006】 理由が分からない涙  (杏鴉 2006-11-22 12:46:53)


これは『ひぐらしのなく頃に』とのクロスオーバーとなっております。惨劇は起こらない予定ですが、注意が必要かと思われます。

とりあえずシリーズ名は『藤堂さんに古手さんのセリフを言わせてみる』にしておきます。(長っ!)







もう哀しまないで あなたのあやまちは 私が赦します

もう哀しまないで 何があやまちか分からなくても 私が赦しますから

だから気付いて下さい 私があなたに救いを求めているという事に


                              [ある少女の日記より]








   ――エピローグ1――


「……ハァ…ハァ……うぅ…グズっ……ハァハァ……うぇぇ……グズっ…………」


信じたかった……いや、信じてる……。
今この瞬間だって、信じてる……。
でも薄々は気付いてる……。

信じないのは認めたくないだけなんだって……。


「……うわあぁああぁ…………」


泣いているのは私だけだった。彼女は泣きもしなかった。
彼女に私の為に流す涙がないのなら、私だって彼女らの為に流す涙など、いらないはずなのに……。

それなのに……どうしてだろう……?
私の眼から途切れることなく……熱い…涙が溢れるのは……。


私はいったい何を間違えたのだろう……?


「……うえぇっ…………何で…何でこんな事に……」


タイを直してもらえて……嬉しかった。
叱ってもらえて……嬉しかった。
時折見せてくれる優しさが……好きだった。
そんなあなたが微笑むのが……好きだった。

ひょっとすると……いや、間違いなく……私はあなたの事が…………好きだった。

「うわあぁあぁあぁ…………っ」

『あなたはよく頑張ったよ。だからもうそろそろ楽になってもいいじゃない。誰も責めたりなんてしないよ?』

私の中の、もう一人の自分が優しく語りかけてくる。

そうだ。あと少し、あと少し頑張れば……全てが終わる。
さぁ、祐巳。もうこれで終わる……終われるんだ。

私はソレを掴んだ右手に力を込める。

花を手向けるように。さぁ、心を落ち着けて――


《あなたに贈る 最初で最後の花束》







   ――プロローグ・いつもの朝――


「祐巳ちゃ〜ん。そろそろ起きないと遅刻しちゃうわよ〜」

う〜ん……まだ眠いよぅ……今って何時だろ……?

「――えっ!? な、何! この時間!? 今日は8時までに薔薇の館に行かなくちゃいけないのにーっ!」

私は慌ててベッドから飛び起き、そのまま駆け出してタンスの角に足の小指をぶつけるという今時めずらしいお笑いコンボを決めてしまった。
涙目になりながら自らの狡砲澂瓩鉢牋イ靴澂瓩修靴騰猜阿雖瓩鯤貎討砲屬弔韻拭

「もーっ! どうしてもっと早く起こしてくれなかったのっ!?」
「何度も声をかけたわよ。でも祐巳ちゃん、ちっとも起きてこないんだもの」

くせっ毛をなんとか宥めながら自らのアイデンティティの一つ、ツインテールを作製するのに必死な私は母親への反論をあきらめた。

「あれ? 祐麒は?」
「祐麒なら、もうとっくに家を出たわよ」

おのれ、弟め……姉を差し置いて先に出るとは。通学途中で転んで恥を晒すが良いわっ!!

私は自分でも理不尽だな、と思いながらも今この場にいない弟に八つ当たりをしたあげく、呪いまでかけた。
ちょっぴりスッキリした私は、なんとか形になったツインテールを振り乱しながら家を飛び出した。

「祐巳ちゃ〜ん! 朝ご飯は〜!?」
「遅刻しちゃうからいらない〜!」

我が子にちゃんと栄養を摂取してもらおうとするその姿勢は母の鑑と言えるが、もう少し状況は見て欲しい。
玄関先でこんなやり取りを大声でしたら……ほら、通行人の方々に笑われてるよぅ……あ、あそこにいるの向かいの山本さんだ……あぁ、笑ってる笑ってる……また猝快な福沢一家瓩辰同修気譴舛磴Δ覆 帖張▲魯蓮帖

私は少し遠い目をしながら学園へと急いだ――。


学園内に入ってからはシスターに怒られないギリギリのスピードを死守した。
ちなみに学園内に入る前は……

『スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように』

へ? 何ディスカ? そのニホン語? 私分かりマセン。

という感じだった。目撃者が学園にタレコミをしない事を切に祈るばかりである。
まぁ、その甲斐あって、バスに間に合った私はなんとか遅刻をせずにすみそうなのだが。

自らの行動を振り返りながら早足で歩いていた私は、危うくマリア様の前を素通りするところだった。

危ない、危ない。
マリア様へのお祈り――。
どんなに急いでいる時でもこれだけは忘れてはいけない。
私は立ち止まり、目を閉じ手を合わせる。

――今日も一日、正しく過ごせますように。

ここにたどり着く前に、もうすでに正しくない事をしたような気もするが、そんな些細な事は気にしない。

さぁ、薔薇の館へ急ごう。あそこに行けば皆に会える。お姉さまに会える!




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