もちもちぽんぽんしりーず。
【No:1878】ー【No:1868】ー【No:1875】ー【No:1883】ー【No:1892】ー【No:1901】ー【No:1915】ー【No:1930】ー【No:2011】ー【No:2015】ーこれ
2年生でテニス部の副キャプテン。
といってもキャプテンの下に2人副キャプテンが2人いてもっぱら事務というか予定やら予算等を担任や予算委員会で検討する。
テニスの腕前はそこそこというのがぴったりで特別に上手いわけではなく、生真面目な性格を買われてというのが部員の認識だろう。
容貌は背を低め、肩に触れるほどの髪を下の方で2つに結び、部活動中は横をさらにヘアピンで留めている。
顔は典型的な大人しい顔とでも言うのか。
成績は上の下。
良く学級委員長に選ばれていた。
もっとも自分からの立候補ではなく、他人から推薦され断れないタイプの方だ。
そして、春に『榎本桂』にロザリオを渡し、秋に返された人物。
文化祭が終わった次の日、妹の桂から電話があった。
「明日、朝部室に来てもらえませんか?」
どこか思いつめた声に不安を感じながらも、その場で聞くこともせず
「わかったわ。」
そう答えた。
次の日、不安は的中していた、そういうのが適当だと思う。
「ごめんなさい。」
差し出されたロザリオ
何時からかあった小さな不安。
桂が堪えている様な顔をするものだから
私も溢れそうなものを堪えた。
見慣れた場所なのに自分が何処にいるか分からない。
先輩として、姉だったものとして
「解ったわ。」
桂の提案を受け入れた。
私は自覚している。
自分が引っ込み思案で臆病だということを。
私は知っている。
足を一歩踏み出せばいいことを。
私は嫌悪する。
それをしない自分を。
「何もしないわ。」
紅薔薇さまから強い口調で出された言葉が山百合会の方針だった。
それは黄薔薇ファミリー、今現在学校中で起きている『妹が姉にロザリオを返す』
両方の意味を含んでいた。
今日山百合会に来ているのは、紅薔薇ファミリー、と白薔薇ファミリー、そして志摩子さん。
江利子さまと由乃さんは学校に来ていない。
黄薔薇さまは、紅薔薇さまが帰らせてしまった。
普段キリッとしている黄薔薇さまから想像できない程ボーーっとしていて、書類のあちこちにミスした。
最初はそれとなく直していたんだけど、あまりにも量が多くなったので紅薔薇さまの叱責、白薔薇さまの説得によって帰ることとなった。
それが昨日で、今日はその代わりといっては何だけど、志摩子さんが来ている。
いくら仕事の量が少ない時期だといっても、これから冬に向かい細々とした式典があるから、持ち越すことはできない。
それを見越して、薔薇さま方は密かに打診していたらしい。
「蓉子さま、これはどうすれば良いですか?」
「ああ、ここはこうするの。」
さらさらと手順を示してくれた。
量に加え、まだ仕事に慣れない私がいるのだから、実際5.5人。
(早く覚えなきゃ。)
「聖、これ違うんじゃないかしら?」
白薔薇さまの声にそちらを見れば
「申し訳ありません。」
聖さまが頭を下げていた。
最近、と言ってもここ数日だけど、同じような光景を目にする。
体調でも悪いのだろうか?
「祐巳ちゃん、さっきのやつ終わった?」
「あ、今終わります。」
蓉子さまの声に現状を思い出す。
聖さまの体調が悪くても大丈夫なように少しでも早く力にならないといけない。
―――貴女は紅薔薇の蕾の妹なのよ。―――
初日に言われた言葉。
「はい、終わりました。」
今、目の前のものを終わらせる。
とりあえず出来るのはそれだけ。
・・・
・・・
・・・
「・・・今日はこれくらいにしましょう。」
紅薔薇さまの声に全員が息を吐く。
外はもう暗い。
私と志摩子さんがカップを洗っている間に他の方は帰る準備をする。
「祐巳ちゃん、一緒に帰りましょう。」
「あ、はい。」
夕方も終わりかけると、やや寒い。
セーラー服の上から学校指定のコートを羽織って、蓉子さまと並木道を歩く。
・・・視界内には薔薇さま方がいらっしゃるのだけど。
「あの。」
「何?」
少し小声で話しかけると、それと同じくらいの声量で返された。
「聖さまなんですけど、体調でも悪いのでしょうか?」
その言葉で、蓉子さまの頭に今日もあったことが思い浮かんだらしい。
「・・・聖ね。ん〜最近忙しいから、疲れてるんじゃない?」
「・・・そうですか。」
どこか歯切れの悪い言葉は
「尋ねないで。」
そう言ってるように聞こえた。
「そういえば、もうすぐ期末テストの範囲配られるでしょう?」
「あ、もうそんな時期ですね。」
たわいもない話をした。
「祐巳ちゃん、勉強できるの〜?」
私のからかいの言葉に
「酷いですよ〜。」
ノリの良い返事。
先の聖の質問に対する答えを祐巳ちゃんは不審に思っているだろう。
何故か?
理由は分かっている。
「分からないところがあったら教えてあげるね。」
「え、本当ですか?」
「本当よ。」
苛立っているのだろう。
簡単に返されるロザリオ。
きっと彼女は許せない。
次の日もやっぱり放課後は薔薇の館で書類の処理の予定だった。のだけど。
「祐巳ちゃん。」
今日も残り数少ない講堂の裏で昼食をとっていると、蓉子さまが訪ねてきた。
「ちょっと待ってください。」
急いで口の中に入れていたウインナーを飲み込もうとする。
「ああ、別に急ぎじゃないから。」
一生懸命に咀嚼する私を見て笑っている。
「今日の帰り、ちょっと用事があるから教室で待っていてくれない?」
「あ、ふぁい、(ゴクン)・・・わかりました。」
「くすくす、じゃあお邪魔して悪かったわね。」
口元を押さえながら去っていく蓉子さま。
「?志摩子さん、なにか持って行かないといけない書類ってあったっけ?」
「ちょっと思いつかないわ。」
カシャカシャと写真を撮っていた蔦子さんは、手を止めた。
「相変わらず、かっこいいわね。」
「祐巳さんも来年はああなるのかしらね?」
桂さんの一言で、全員が沈黙。
「「・・・・・・想像できない。」」
桂さんと蔦子さんの声が被った。
「・・・大丈夫よ。」
志摩子さんは苦笑いを浮かべた。
「・・・。」
私は何も言えなかった。
違和感で満ち溢れた私しか浮かばなかったから。
「紹介・・・するまでもないかな?」
放課後、教室に来た蓉子さまに連れられてきたのはミルクホール。
そこには、1人の生徒が座っていて、あまりにも想像していなくて
「美冬さま?」
口からつい名前が出てしまった。
以前に何回かあったことがある。
桂さんのお姉さま『鵜沢美冬』さま。
「知ってるでしょうけど、ちょっと頼まれてね。悪いのだけど、相談があるらしいの。
仕事は、私が出来る限りやっておくからお願いできる?」
本人を目の前にして、しかも知り合いと言えなくも無く、断れるわけも無い。
「はい、分かりました。」
ホッとした顔をすると、蓉子さまは薔薇の館に向かった。
美冬さまの前に座る。
「今回は本当に急でごめんなさい。」
まず、頭を下げられた。
「いえ、そんなことはありません。」
上級生に頭を下げられて、慌てる。
「それで相談というのは?」
「相談というか、なんていうのかしら?会って話をしてみたかったの。」
「え?」
「大したことじゃないの。」
美冬さまは席を立った。
「何か飲み物でも買ってくるけど、何が良い?」
「えっと。」
財布をポケットから取り出そうとすると、押しとめられた。
「良いのよ、私の奢り。私が無理言ってきてもらったんだから。」
強く言うことも出来なくて、イチゴミルク、と伝えると一角にある自動販売機で自分の分であるらしいリンゴジュースのパックとともに買ってきて下さった。
「ありがとうございます。」
受け取ると、ストローを差し込む。
「祐巳さんは、桂のこと一言で言うとどんな感じ?」
リンゴジュースのパックを銜えた。
「んー、・・・好きな人?」
一番パッと思いつく言葉を言ってみる。
「嫌いなところってある?」
「無いですよ。」
「・・・桂に言ったら、『ある』って言ってたわよ?」
「え?」
ちょっとショック。
だけど
「仕方ない・・・かな?」
目の前の美冬さまの顔が泣きそうな、困ったように歪んだ。
「?どうなされました?」
「どうして、そんな風に思うの?」
対応が気になりそうになりながらも、質問に答える。
「悪いところなら、私のほうが多いですから。」
他人に言うことじゃないだろう、と我ながら思う。
「・・・ごめんなさい。嘘ついたわ。」
美冬さまは深々と頭を下げた。
「桂も同じように答えたわ。祐巳さんに嫌いなところは無いって。」
「はー、良かった。」
胸に手を当てて安堵。
「試してごめんなさい。」
「頭を上げてください。どうしてこんなことを?」
内容よりも理由のほうが気になった。
美冬さまは頭を上げても俯いたまま、両手でジュ−スのパックを掴む。
「桂が貴女のことをとても信頼していたから、羨ましくて・・・」
「・・・理由は分かりましたけど、もうこんなことはしないで下さい。
桂さんが私のことをどう思っていたとしても、嫌いになったら、友達でいたくなくなったら、
きっと、ちゃんと言ってくれるとおもいます、そして私もちゃんと受け入れます。
だから、桂さんの気持ちを蔑ろにするようなことは怒ります。私でも。」
「・・・ごめんなさい。」
今度は本当に泣いているような声だった。
「分かっていただけたなら良いです。」
なるべく優しい声で言った。
「・・・ありがとう。羨ましいわ、貴女と桂が。」
「いえ、きっと皆さんもそう言うと思います。」
まだ、顔を上げなかった。
「でも、嫌いなところは無くも無いんですよ。」
美冬さまは顔を上げて、問うような顔。
泣いてはいなかったけど、とても悲しげで。
「それは、とても当然なことで、でもやっぱりその人を思ったときに好きだな。って思ってしまうんです。」
言った後に恥ずかしくなってしまって、笑ってしまった。
「私って、やっぱり桂の姉の資格は無いのかしら?」
その言葉で、桂さんがロザリオを返していることを思い出す。
「桂さんのことお嫌いなのですか?」
目を見て尋ねると、意図が分かってくれたのか、きちんと目を見て返してくれた。
「・・・いえ、大好きよ。」
「・・・じゃあ。」
その言葉を続けるのを止めた。
それを尋ねて良いのは私じゃない。
「ねぇ、紅薔薇の蕾からロザリオを差し出されたとき、失礼だけど分不相応だと思わなかった?」
私は、当たっても無くも無い質問に苦笑した。
自分の過去を思い出す。
「私の妹になって。」
「はい。」
そのとき何を思ったかな?
「わくわくしていました。」
「わくわく?」
「ええ。」
恥ずかしくなって、笑って誤魔化した。
「ここの並木道がきれいでしょう?一緒に登下校できる姿が浮かびました。」
驚いているようだった。
「きっと、その瞬間には相応しいとか、そんなこと思わなかったと思います。
ただ、歩けるんだ!って。」
「くすくす。」
美冬さんは笑い出した。
「変でしょう?」
「違うの。」
笑いを抑えながら、
「祐巳さんって、凄い人だなって思っていたのに、思っていたことが私と一緒だったの。」
「そうだったんですか?私って変かもって思っていたで。」
私も笑い出す。
2人でしばらく笑い、収まると美冬さんは遠くを見ながらつぶやいた。
「桂もそう思ってくれたのかしら。」
「ねぇ、祐巳さん蔦子さん聞いて聞いて。」
「また、桂さんの惚気話よ。」
「良いじゃない、幸せのおすそ分け。」
「要らないわよね。祐巳さん。」
「ちょっと多いかな?」
「酷い!2人とも。」
とても楽しそうだった。
「ええ、きっと思っていたと思います。」
「今日はどうだった?」
薔薇の館の帰り道、蓉子様の隣を歩く。
「ええ、お力になれていれば嬉しいです。」
「そう、祐巳ちゃんがそう思うなら、大丈夫よ。」
特に話題があるわけじゃない。
『わくわくしていました。』
そう言った後だけに、蓉子さまの隣を歩いていることがなんか気恥ずかしい。
このまま行けば、並木道。
ちょっとだけ、蓉子さまに近寄った。
そのとき、蓉子さまも落ちていた落ち葉の塊をよけたせいで、私の方に近づく。
コートの袖が少しぶつかった。
「「!?」」
びっくりして、蓉子さまの顔を見ると、蓉子さまもこっちを見ていて
しばらくして、ふっと顔を前に向けた。
でも、離れたりはしなかった。
その顔は、少し緊張されているようで。
私も前を向いた。
ザッザッとコートの袖が当たる。
「すーはーすーはー。」
深呼吸を小さく2回。
(えい!)
ありったけの勇気を振り絞って、コートの袖から見えていた部分を握った。
瞬間、視線を感じたけどそっちを見ない。
きっと、私の顔は今真っ赤だろう。
「・・・。」
視線を感じなくなると、きゅっと返ってくる反応。
暗い中、一歩踏み出した足が
沿うように木が植えられている道に入り込む。
『並木道を一緒に歩けたら』
自分勝手な私は
蓉子さまも同じように『わくわくしてくれている』
そう思うことにした。
やっと、マリみて主要キャラを出し終わりました。なるべく、出番は作ってあげたいです。オリキャラにしようか迷ったんですが、結局彼女にしました。早く、祐巳と蓉子をいちゃいちゃさせたいな。私たちは祐巳が攻め派です。笑(オキ)
今回、美冬と祐巳の会話を結構いじってしまいました。オキに見せたらオッケーと言われたので、良いのでしょう。これで風呂敷を広げ終わりました。後は、たたむだけです。文章力ともっと量があれば細かく書けるのでしょうが、これが限界です。苦笑(ハル)
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