※ 何かが色々とおかしなSSです
今回も過去のお話しです。
本編
【No:2000】→【No:2003】→【No:2004】→【No:2007】→【No:2021】→
【No:2026】
番外
【No:2031】→の続き
祥子さんは、私の憧れだった。
私こと鵜沢美冬と彼女が出会ったのは、随分と昔のことだ。
それは、幼稚舎の頃にまで遡る。
*
当時、先生たちによって禁止されていたブランコからの飛び降り。
昼休みに、私は数人の友達と一緒に、その言いつけを破って遊んでいた。
数人の友達が飛んだ後、皆と同じようにブランコに乗って、私は勢いをつけて高く飛んだ。
近所の公園で何度も練習していたので、結構得意なはずだったのだが、
この時の私は、無様にも空中でバランスを崩して着地に失敗してしまった。
地面に衝突する瞬間、咄嗟に手と膝をついたので、どうにか最悪の事態を免れたが、
やはり無傷ではなかった。擦り剥いてしまった膝からは血が滲んでいた。
それを見て周囲にいた友達が騒ぎ始めたところで、憧れの人――小笠原祥子さんがやってきたのだ。
「大丈夫?」
「うん」
血は出ているが、痛みはあまりなかったので割とあっさりと私が頷くと、
祥子さんがほっとしたような表情を浮かべた。
けれど、照れ、からだろうか?
すぐに表情を変えて、今度は呆れたように言ってきた。
「先生の言いつけを守らないから、罰が当たったのよ」
そうなのかもしれない。でも、そのお陰で憧れの祥子さんと会話ができたのだ。
むしろ、罰を与えてくれた神様に感謝したいくらいだ。
だって、こんな何処にでもいるような平凡な私が、
祥子さんと会話することなんて絶対に無いと思っていたから。
けれど……やはり罰が当たったのだろう。
お別れは、すぐそこに迫っていた。
*
お別れの理由は、父の転勤だった。
私の幼稚舎での生活は、半年ほどで終わることになった。
母に手を引かれて幼稚舎の敷地内を出たところで、今まで自分が過ごしていた場所へと振り向く。
級友たちのお別れの挨拶なんて、ほとんど頭に残っていない。
この時の私にあったのは、祥子さんの姿を二度と見れなくなるんだ、
という寂しさに似た感情だけだった。
だが……私は戻ってきた。
中学三年生もそろそろ終わり、という時期になって、父が本社に呼び戻されることになったのだ。
それならば、私の進学先は決まったも同然だった。
リリアン女学園高等部の入学試験に合格した私は、約十年ぶりに祥子さんと再会を果たした。
けれど――。
「祥子さん、お久しぶりね」
「どちらかでご一緒したかしら?」
彼女は、私のことなんて覚えてなかった。
それも仕方が無いだろう、と思う。
人というものは、年月が経てば変わるものなのだ。
昔と、少しだけ外見の変わった私と同じように。
外見は同じでも……私の思い描いていた、理想の祥子さんではなかった彼女のように。
*
父の転勤から数年経ち、再びこの地に戻ってきた私は、当然のようにリリアン女学園に入学した。
祥子さんが私のことを覚えてなかったのは、やはりショックではあったが、
それならば、一からやり直せばいい。
けれど、やはり人というものは、そう都合よく変わるものではないらしい。
過去と同じように、私は自分から祥子さんに話し掛けるようなことはできなかった。
そうなのだ。十年経っても私は、彼女に話し掛けることも、近付くこともできなかったのだ。
でも、それでもだ。私はそれでも良いと思っていた。
だって、あの十年間と違い、今は祥子さんの姿を見ていられるのだから。
……けれど、ただ彼女の姿を眺めているだけで満足していた私の前に、一人の少女が現れた。
幼稚舎の頃には知らなかったのだが、祥子さんには実の妹がいたのだ。
その実の妹が、高等部へと入学してきたのである。
彼女の名は、小笠原祐巳。
これといって特徴のない、平凡を絵に描いたような少女だ。
容姿は普通。学力だって、おそらく大したことはないだろう。
……少し親近感を覚えたのは何故だろうか?
まぁとにかく、祥子さんは彼女を選んだ。
他に、いくらでも自分に相応しい妹はいるだろうに、それでも彼女を選んだのだ。
私は、許せなかった。
どんなに望んでも、私には手に入れることのできない、
祥子さんの隣という場所をあっさりと手に入れた祐巳さん。
何の取り得も無い少女なのに、ただ可愛がっているから、という理由で彼女を選んだ祥子さん。
どちらのことも、私は許せなかった。
けれど、ちゃんと分かってはいる。
彼女たちは決して悪くないのだと。
悪いのは私なのだと。
遠くから眺めていることしかできない私が、一番愚かなのだと……。
*
新聞部が企画した、バレンタインデーイベント。
紅、黄、白の三枚のカードをつぼみたちが隠し、
それを生徒たちが見つけるという、一種の (というかそのまま) 宝捜しみたいなものである。
本当かどうかは知らないが、三色いずれかのカードを見つけた生徒は、
その色のつぼみと半日デートができるそうだ。
もし、それが本当ならば、なんとしても紅のカードを見つけなくてはならない。
なにしろ、祥子さんは紅薔薇のつぼみ。
紅いカードを見つけることができれば、彼女とデートができるのだ。
……けれども私は、ちょっとした偶然からゲーム開始よりもずっと早くに、
祥子さんの隠したカードを手に入れてしまった。
早朝、好奇心から祥子さんの後を尾けた私は、彼女がカードを隠す現場を見てしまったのだ。
だから今、私の手元には一枚のカードがある。
素知らぬ顔して、ゲーム終了時に薔薇の館へ持って行けば認めてくれるだろう。
私が、真面目にゲームに参加して、正々堂々とカードを見つけた人物だと。
そうすれば、今よりも少し……ほんの少しは、祥子さんとお近づきになれるかもしれない。
けれど――本当にそれでいいのだろうか?
そんなズルをして、それで祥子さんとデートをして、私は本当に満足できるのだろうか?
それが十年もかけて出す、私の答えなのだろうか?
(違うっ)
そうじゃないはずだ。
確かに、今まで見ていることしかできなかったけれど。
それで色々と悩んだりもしたけれど、それでも私は充分幸せだった。
確かに、祥子さんとデートすれば楽しいだろう。それは、どんなことよりも幸せなことだろう。
けれど、それでは幼い頃の私の気持ちはどうなる?
ただ純粋に、彼女に憧れた幼い頃の私の想いを、現在の私が全部踏み躙るのか?
……返そう、と思った。
元あった場所に返そう、と。
ゲームにだって参加しない。そもそも、その資格は私には無い。
それに、あんな難しい場所に隠してあったのだ。おそらく、誰も見つけることは出来ないだろう。
そう思いながらやって来た古びた温室で、私は彼女に出会った。
小笠原祐巳に――。
*
そこにカードがあるのを確信しているのか、彼女はその場所を掘り起こしていた。
その様子を見て、きっと祥子さんが彼女に隠した場所を教えたのだろう、と思った。
なぜなら彼女が、カードが隠されていた場所を寸分違わず掘り起こしていたから。
けれど……それにしては彼女の様子が変だった。
息が切れていた。
まるで、あちこち走り回ってきたかのように肩を上下させて、凄く辛そうにしていた。
それに、彼女の表情が必死だった。
彼女は、 『箱詰めお嬢様』 なんて言われているほどの超お嬢様なのだ。
そんな彼女が、手が汚れるのも構わずに、必死の形相で土を掘り起こしている。
こんなところに隠してあったのだ。誰も見付けることなんてできないだろう。
ひょっとすると、という可能性もあるかもしれないが、それでも確率はかなり低いと思う。
だから、もっと余裕を持っていてもいいはずなのだ。
この場所に、カードがあることを教えられているのであれば……。
「うーん」
私が見ていることにも気付かず、必死で土を掘り返していた彼女が急に手を止めた。
「ここだと思ったんだけど……違うのかなぁ? でも他に心当たりなんてないし……」
彼女が頬に伝う汗を拭う。その決して綺麗とはいえない指先には、血が滲んでいた。
もう黙ってはいられなかった。
「どうしてそんなに必死なの?」
「ひえっ」
小さく叫んで、酷く驚いた顔をしている彼女がこちらに振り向く。
二分ほど前から私はここにいたのだが、それに気付かないほど彼女はカード探しに必死だったのだ。
私に気付くと、彼女は照れ笑いのような苦笑いのような、何ともいえない表情を浮かべた。
「えっと、何でしょう?」
「どうして、そんなに必死なの?」
「どうしてって……?」
どうやら、質問の意味が分かっていないらしい。
確かに、いきなり尋ねられても分からないだろう質問だった。
だから、私は質問を変えた。
「そこに何かあるの?」
「ここに、お姉ちゃ――お姉さまのカードがあると思ったんだけど、ここじゃなかったみたい」
「どうして、そこだと思ったの?」
彼女が、カードが隠されていた場所の近くに植えられている、背の低い木を指した。
「これが、ロサ・キネンシスだから」
(ああ、そうか。そうだったのか。だから……)
それは、祥子さんの分身といってもいい花の名前だった。
私は全く気付かなかったが、彼女は気が付いたのだ。
だから祐巳さんは、ここを探していたのだ。
「どうして、必死になって探していたの?」
「それは、お姉ちゃんが……」
なんだか言い難そうな表情の祐巳さん。けれど、どうしても聞きたいので先を促す。
「祥子さんがどうしたの?」
「……他の人とデートするのを見たくないから」
彼女の答えに、思わず吹き出しそうになった。だって、理由がまるっきり子供。
でも、とてもよく分かった。その気持ちは、私も一緒だから。
「祥子さんのこと、好きなのね」
彼女が照れた笑みを浮かべる。けれど、その表情とは裏腹にハッキリと答えた。
「大好き」
「……」
彼女の答えに、負けた、と思った。
どうしようもないくらい、完全に私の負けだった。
同時に、彼女を羨ましく思った。
彼女のように、どこまでも真っ直ぐに人を 「好き」 と言える勇気が私にもあれば、
こんなバカなことにはならなかっただろうから……。
*
「あ、もう少しで時間だ」
祐巳さんの声に腕時計を見れば、確かにゲームの終了時間まであと五分を切っていた。
「……」
祐巳さんの探し求めていたカードは、今、私が脇に挟んで持っている手提げ袋の中にある。
けれど、どんなに後悔していても、今更それを差し出すことなんてできるはずがない。
「土、戻さないと」
祐巳さんが、掘り起こしていた土を戻し始めた。
その姿――背中を丸めて、自分が掘り起こした場所を一生懸命に埋めている祐巳さんを見ていると、
キュンって胸が締め付けられた。
(な、何? この胸のときめきは?)
彼女の背中を見ていれば見ているほど、その疼きが大きくなってくる。
その感じはまるで――。
(あ!)
私は、ようやく悟った。
祥子さんが彼女を選んだ理由。祐巳さんが溺愛されている理由。
おそらく、彼女を溺愛しているのは、祥子さんだけではないだろう。
家族は勿論のこと、親戚、友人に到るまで、殆どの人間が彼女を溺愛しているはずだ。
なんということであろうか。
何故、私は気付かなかったのだろうか?
彼女のこと、目の敵にして何度も遠くから見ていたのに……どうしてその時に気付かなかった?
馬鹿だ。私はどうしようもない馬鹿だ。
(今ごろ気付くなんて――)
彼女を見ていると、恐ろしいほどに保護欲を掻き立てられるのだ。
誘われるように、そのキュートでプリティーな彼女の背中に向かって手を伸ばす。
すると、祐巳さんが土を戻している手を止めた。
「あ、そうだ」
何かを思い出したらしく、急に私へと振り返る。
「そう言えばあなたのお名前、まだ聞いて……」
セリフの途中で、祐巳さんが急に怯えた表情になった。
「どうしたの?」
今まで出したことのない、とてもやさしい声と表情で尋ねる。
「そ、その手は何?」
言われて自分の手を見ると、怪しくワキワキと勝手に動いていた。
しかも、祐巳さんに向かって腕を伸ばして。
「持病の発作よ」
「……」
何も言わないので理解してくれたのだろうと思い、私が一歩踏み出すと、
祐巳さんが立ち上がって後ろに下がった。
「何故、下がるの?」
とても哀しいではないか。
「だ、だったら、その手はやめてよ」
「だから、これは発作なの」
「……」
疑いの眼差しで私を見てくる。
でも、そんな表情もグッドでナイスでパーフェクトである。
もう抱き締めたくて抱き締めたくて、堪らなくなった。
けれど、堪えなければならない。ここで飛び掛ったりなんかしたら、人としてどうかと思う。
そうだ。私は堪えなければならないのだ。
そんなこと、よく分かっているのだ。
だけれど……まぁ、たまには理性が飛んでもいいのではないだろうか?
ほら、私って今までずっと大人しかったし。その反動だと思えばいいかなー? と考え直す。
「頂きます」
割とあっさりと理性を投げ捨てて、私は祐巳さんに飛び掛った。
「うわわっ」
何故か、祐巳さんが悲鳴を上げながら避ける。
「どうして避けるの?」
哀しすぎて、私のピュアなガラス・ハートが砕けてしまいそうだ。
「じゃ、じゃあ、どうして抱き付こうとするのよっ」
「この発作は、あなたを抱き締めることによって治まるの」
酷くなる可能性も秘めているけれど。
「なな、な、なんでっ? 発作って、いったい何の発作なのっ!?」
(もう、祐巳さんったら……イジワルね。そんなことを私の口から言わせる気なの?)
私は、薄っすらと頬を桃色に染めた。
(いいわ。聞きたいのなら、答えてア・ゲ・ル)
熱く火照っている頬を手で押さえながら、ピンクの吐息を吐く。
「恋煩い」
「え、えっと……」
私の衝撃の告白に、目をパチパチさせて困っている祐巳さん。
非常に可愛らしい。
いや、彼女なら、どんな表情だって可愛いに決まっている。これは、世界の常識であるッ!
そして、そんな彼女を抱き締めて愛でることができたら、どんなに心地良いだろうか?
(ふッうぁっ、愛でたい愛でたい愛でたい愛でたい、何が何でも愛でたいーーーーッ!)
理性――と言う言葉が、再び私の頭を過ぎった。
けれど、そんなものが、今この場所でいったい何の役に立つというのか?
この場所には、私がいて、祐巳さんがいるのだ。そして、邪魔者はいないのだ。
それならば、私の為すべきことは一つだけだ。
「覚悟ぉっ!」
「ちょ、ちょっと……うひゃあっ」
また避けられた。なかなか素早い。けれど、だからといって私は諦めたりしない。
「待ちなさいっ」
「待てないってば!」
新聞部主催のゲームはもうすぐ終わりを告げようとしているが、
私と祐巳さんの楽しいゲームは――。
(これからだッ!)
*
「ふぅ、ふぅ、はぁッ、はぁ……」
どうやら、祐巳さんと私は身体能力が同程度らしい。
結局、捕まえることも引き離されることもなく、私は祐巳さんを逃してしまった。
「誰かぁっ! 誰か助けてぇっ!!」
「あぁっ、祐巳さん……」
温室から飛び出して行った祐巳さんの背中を、私は胸の張り裂ける思いで見送った。
さすがに温室の外に逃げられては、人目があるので追えない。
けれど、決して諦めたりはしない。
自分の気持ちを真っ直ぐ相手にぶつけることを、私は祐巳さんに教えられたのだから。
そして……幸いなことに、私にはまだ一年あるのだ。
三百六十五日、虎視眈々と祐巳さんを愛でる機会を狙うとしよう――とは思うのだけれど。
私が正面から近付けば、祐巳さんは警戒するだろう。
なにしろ、姿どころか顔まで見られているのだ。
(どうする? どうする? どうする?)
私は悩んだ。悩んで悩んで、悩み抜いた。
(……あ! そうだ)
*
翌日。
「お姉ちゃーん」
家庭科室からの帰り道。
祥子さんの後ろを歩いていると、廊下の向こう側から祐巳さんが駆け寄ってきた。
そんな祐巳さんを見て、祥子さんが厳しい表情を浮かべる。
「何度も言っているでしょう。廊下を走っては駄目よ」
「あ! ごめんなさい」
素直に謝る祐巳さん。イイ! すごくイイ! 鼻血出そう! 魂溶けそう!
「まったく、転んで怪我でもしたらどうするの」
どうやら祥子さんは、規則というよりも、祐巳さんの身が心配なだけらしい。
流石は祥子さんだ。他人とは違う。今日も凄まじくブラボーだ。
あと、祐巳さん。相変わらず可愛い。抱き締めたい、頬擦りしたい。お持ち帰りしたい。
「それで、何の用なのかしら?」
「今度の日曜日のことなんだけど」
「日曜日? ああ、それなら――」
裁縫箱を抱えたまま、祐巳さんと話し込もうとする祥子さんに、 「私が預かるわ」 と申し出る。
祥子さんが、気兼ねなく祐巳さんと話せるように、との配慮からである。
なぜなら、祐巳さんが幸せなら私も幸せで、祥子さんが幸せでも私は幸せなのだ。
彼女たちは、二人揃って私を幸せにしてくれる。
なんという素敵姉妹であろうか。
(ビバ・小笠原シスター! ビバ! ビ……あ、あれ?)
興奮しすぎて頭に血が上ったのか、なんだか目の前が揺れて二重に見える。
私は、気力を振り絞ってそれに耐えた。
こんなところで倒れては、二人の迷惑にしかならない。それは、私の望むところではない。
だから、耐えていられるうちに、一刻も早く退散するとしよう。
「お願いしていいの」
「え、ええ。祥子さんの机の上に置いておくわね」
私たちの遣り取りを、祐巳さんが不思議そうな顔をして見ていた。
(美冬ってば、色んな意味で胸がドッキドキ!)
もしかしてバレてる? と思うと同時に、そんなに私を見詰めないで欲しい、と思った。
これ以上、私を虜にしてどうするというのだろう? もう既に、私は祐巳さんの虜なのに。
(い、いや、今はそれは置いておいて。と、とにかく早く立ち去らなければ……)
興奮しすぎて、身体が震えてきたし。
「じゃあね。ごゆっくり」
祥子さんの裁縫箱を受け取り、脇に冷汗をかきつつ、私は足早に二人の前から立ち去った。
あと二秒ほど遅れていれば、本当に倒れていたであろう。
(ふぅ、危ないところだった)
額の汗を拭いながら、二人から少し離れたところで後ろを振り返る。
そこでは、仲の良い姉妹が、笑顔で何事かを話し合っていた。
私は、小さく苦笑いを零す。
(似た者姉妹)
祐巳さんは、祥子さんと同様、外見が変わった私のことに気付かなかったのだ。
変わった、といっても髪型を変えただけなのだが、大成功である。
……なんだか、ちょっぴり切ない気もするけれど、きっと気のせいだ。
まぁ、それはともかく!
こうして私は、祥子さんと祐巳さんを眺めながら悦に浸るという、
幸せリリアン・ライフを手に入れたのである。
嗚呼っ、幸せすぎて怖いっ――