【2043】 いつも萌えるゴミ  (砂森 月 2006-12-11 12:43:11)


翠様の作品【No:2040】に触発されてしまいました
上記作と自作【No:1499】をミックスしたパラレルワールドです
完全に勢いだけで書いてます
タイトルが酷いですが気にしないで下さい(爆)
(翠様、他美冬好きな方、不快だったらごめんなさい
 私も美冬は大好きですよ、念のため
 それと本編には影響しないはず……)



「うふ、うふふ、うふふふふふ」
 お姉ちゃんが壊れていた。
 バレンタインが終わって最初の週末。従兄弟の美冬にチョコを渡しに来た稔は、当の本人の壊れっぷりにすっかり固まってしまっていた。
「えーと、お姉ちゃん?」
「うふふ、祐巳さんイイ、祐巳さんすごくイイ、祐巳さん最高!!」
 突然シュプレヒコール上げ出すし。今年こそ祥子さんにチョコレートを渡したいって言っていたから、結果報告を聞いてダメだったなら慰めてあげようかなとか思っていたのに。
「ああ、私ってば幸せ者っ」
 あーあ、鼻血まで出しちゃってるよ。
「おばさん、ティッシュ取ってきてください」
「あらあら、ごめんね稔ちゃん。美冬ってばバレンタインが明けてからちょっとおかしいのよ」
 その「ちょっと」の部分、「かなり」に訂正してもいいんじゃないかなって思う。

 最初はいつもの通り(といっても数年開いて去年に久しぶりに再開したわけだけど)チョコレートの交換をして、稔の方がお菓子作り上手なのをお姉ちゃんが悔しがっていたのだけれど。
「あれ、そう言えば稔って髪伸ばしてる?」
「うーん、意識してないけどあまり短いの好きじゃないし」
「ふーん……ねぇ、ちょっと髪型いじってもいい?」
「え? まあ、いいけど」
 思えば、この時既に手つきが少し怪しかった。だから拒んでおけば良かったのかもしれない。

「ちょっとお姉ちゃん、しっかりしてってば」
「あーもう我慢出来なーい」
 とうとう抱きついてくるし。というか髪型いじっただけなのに、祐巳さんって人は稔達に似ているのだろうか(稔とお姉ちゃん、血は繋がってないけど顔似てるし)。
「うーん、やっぱり抱き心地も最高ー」
「いや私祐巳さんじゃないから。というか、祥子さんはどうなったの?」
「祥子さん?」
 ようやくまともに反応が返ってきたので正気に戻ったのかなと思ったのだけれど。
「祥子さんもイイ、妹の祐巳さんもすごくイイ、小笠原姉妹最高!!」
 やっぱりダメダメでした。
「もしもーし、お姉ちゃーん、弟の稔ですよー」
 あんまり自分の事を弟って言いたくないんだけれど(実は女子高生と間違われるのはまんざらでもなかったりもするわけだけれど)、この際だから仕方ない。
「髪型変えただけで気付かなかった小笠原姉妹ブラボー」
 いや、それお姉ちゃんも一緒な気がするよ?
「ビバ、マイリリアンライフ」
 というか意味不明だし。
「祐巳さんの幸せは私の幸せ、祥子さんの幸せは私の幸せ」
 あー、そうですか。
「2人とも幸せなら私は超幸せ。ああ、私はなんて幸せ者なんでしょう」
 えーと、お姉ちゃん演劇部にでも入ったの?
「いや、トリップしている所悪いんだけどなんか私帰るの難しそうだよ?」
「あら本当、大変。着替え探してくるわね。美冬のでいい?」
「はい。サイズは同じはずですから」
 というか鼻血さっきから出しっぱなしなんですけど。稔の服は鼻血まみれなんですけど。
「ああ、その困った顔も最高」
 だめだこりゃ、完全にどこかに行っちゃってる。
「祐巳さーん、私の愛を受け取ってー」
「ちょっ、お姉ちゃん、キスは拙いってばー」
「ああん、どうして拒むのよー。私はこんなに愛してるのにー」
 何か稔までピンチだし。花寺の人達とは別の意味で厄介だし。こんな所でファーストキス奪われるとか嫌なんですけど……あ、そうだ。
「み、美冬さま……」
「祐巳さん! 私の名前覚えていてくれたのね」
 そりゃ弟ですから。というか、稔の事完全に祐巳さんって思っているし。
「美冬さま」
「祐巳さん好き、祐巳さん大好き、私の気持ちを受け取ってー」
「おおお落ち着いて下さい美冬さま。私もその、決して美冬様が嫌いとかそんなことは……」
「ゆ、祐巳さん」
「あ、あの、美冬さま、その……」
「祐巳さん、いいのね、期待しちゃっても良いのね?」
「ごめんなさい!!」
 そう言いながら稔は、お姉ちゃんの後頭部に思い切り手刀を叩き込んだ。

「ごめんね稔ちゃん」
「いえ、気にしないで下さい」
 浴室を借りて着替えながらおばさんとお話をする。
「お姉ちゃんって香り酔いしましたっけ?」
「ううん、平気だったはずよ。だからあれはバレンタインが終わった後からなのよ」
 今回は香り付けにハーブを少し混ぜてみたからひょっとしたらそのせいかもって思ったけれど、やっぱり違うみたい。
「そうですか。あ、透明なゴミ袋と黒のマジック用意して貰っていいですか?」
「いいけど、何をするの?」
「いえ、ちょっとした仕返しを」
「分かったわ。あ、洗濯した服はどうしたらいいかしら?」
「そのうちまた遊びに来るので取って置いて下さい。何でしたらお姉ちゃんに着せてもいいですし」
「そう。まああの子が着たがるかどうかは分からないけど」
「今日の事を引き合いに脅したら嫌でも着るんじゃないですか」
「ああ、その手があるわね」
「よいしょっと。ついでに染み抜きだけ先にしておきますね」
「あら、できるの?」
「まあ一通りは」
「稔ちゃんらしいわね。じゃあその間にゴミ袋取ってくるわね」
「お願いします」
 ちょっと黒い考えを持ちながら、服とパンツ(ズボン)の染み抜きに取りかかった。

「これで良し、と」
「稔ちゃんもやるわねー」
「おばさんも実の娘がされてるのに止めませんでしたね」
 お互い顔を見合わせて、小声でクスクスと笑う。とりあえず気絶しているお姉ちゃんの鼻に栓をして、部屋まで運んでおばさんに着替えさせて貰って。そのまま寝かせるのは何か悔しいから直筆文字を入れた透明なゴミ袋に体操座りの状態にしたお姉ちゃんを入れてみた。もちろん口は縛らないで。
「しかし稔ちゃん、これはナイスね」
「他に浮かばなかっただけです」
「全く違和感がないわ」
「それはそれで問題な気がしますけど……」
 お姉ちゃんの入っているゴミ袋には、大きく「萌えるゴミ」と書いておいた。正しくは「萌え続けているゴミ」なのかもしれないけれど。
「それでは、そろそろおいとまさせていただきますね」
「そう。今日は本当にゴメンね」
「いえ、お気になさらず」
「気をつけて帰るのよ。変な男の人に気をつけてね」
「分かってますよ」
「まあ女装美少年が襲われるのはシチュエーションとしては好きだけど」
「ちょっと、おばさん?」
「冗談よ。時間も遅いしそろそろ帰りなさい」
「はい。それではおじゃましました」

(あー、しかし今日は災難だったなー)
 帰り道、女物の服を見事に着こなした稔は物思いに耽っていた。
(しかも本当にナンパされるし)
 それも花寺の同級生に。偶然通りかかった白薔薇さまに助けて貰ったけれど。
(でも白薔薇さまにも抱きつかれるし)
 しかも稔が男だと分かった上で。まあ花寺の学園祭のお手伝いしてた時にお知り合いになった時から気に入られていたみたいだけど、衆人環境では流石に恥ずかしいものが……。
(まあ、今度静さまと話すネタが増えたと思えばいっか)
 イタリアに留学する静さまとは、来月のコンサートが最後の共演になる。次の合同練習はいつだったかなと思いながら、いつしかすっかり日の落ちた道を歩いて……。
「わっ」
「わ?」
 突然悲鳴を上げられた稔は何事かと辺りを見回した。するとさほど遠くない距離に稔がさせられたのと同じ髪型の少女がこちらを見て怯えていた。と、いうことは……。
「あの……」
「やっ、やだ、来ないで下さいー」
「落ち着いて。似てるけど別人だから。姉が迷惑をかけてごめんなさいね」
「やだー、怖いよー、誰か助けてー」
 お姉ちゃん、一体この子に何をしたんですか。


(続かない/爆)


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