【2045】 島津祐巳だからこその姉妹  (クゥ〜 2006-12-11 22:52:00)


 よく起こる単発で変なSS書きたい病が発生したので、笑って流してね。
 翠さまのSS+福沢祐巳に触発されてます。
                                  『クゥ〜』







 島津由乃と島津祐巳は双子である。
 同じ双子なのに、顔つきが由乃はお母さん似。祐巳がお父さん似なのは二卵性だからで、性格が違うのは由乃が持病を持っているのに、祐巳は持っていないのが原因だろう。
 そんな双子だが、一緒にリリアンの幼等部に入学し、問題なく高等部まで進学した。


 「祐巳!!」
 「あっ、令姉ちゃん」
 祐巳が振り向くと、従妹で隣に住む。祐巳と由乃の幼馴染である令姉ちゃんが走って祐巳に追いつく。
 「これから帰るところ?」
 「うん」
 入学式が終わり、一人で帰る所だ。
 なぜ一人かといえば、由乃が熱を出したから。
 「送って帰るよ、由乃にも用事があるしね」
 「用事?」
 祐巳がジト目で令を見ると、令姉ちゃんは少し慌てた様子を見せる。
 「部活は?」
 「今日はない」
 「薔薇の館には?」
 「そっちも用はない」
 「ふーん」
 「な、なに?」
 「なんでもないよ!!」
 祐巳は令姉ちゃんから距離を置こうとするように離れる。
 「ちょ、ちょっと、祐巳!!」
 ……バカ令姉ちゃん!!

 結局、令姉ちゃんと家に戻る。
 「ただいまー」
 「お邪魔しまーす」
 祐巳と令姉ちゃんの声にお母さんが奥から出てくる。
 「お帰りなさい、二人とも」
 「由乃は?」
 「部屋に居るわよ」
 「うん、わかった」
 二人で二階の由乃の部屋に向かう。
 「由乃」
 「あっ、お帰り。祐巳、入学式どうだった?」
 「どうって、周りに居るのは知った顔ばかりだから、何時もと変わらない。そうそう、令姉ちゃんも着てるよ」
 「令ちゃんも?」
 「あっ、由乃。起きていたんだね」
 「令ちゃん」
 「……」
 祐巳は、令姉ちゃん。
 由乃は、令ちゃん。
 理由は簡単、由乃が祐巳のお姉ちゃんだから。
 ただ、それだけの理由。
 「それじゃ、私は一度部屋に戻るから」
 祐巳はそっと由乃の部屋を出た。
 「祐巳」
 由乃の声がしたが、小さかったから聞こえないフリをした。

 ――かっちゃ。

 少しして隣、由乃の部屋が開く音がした。
 祐巳は部屋に置いておいた竹刀を持つと自分の部屋を出る。
 「令姉ちゃん、帰るの?」
 「うん……て、なにその格好?」
 祐巳は手に竹刀を持ち、防具こそ着けていないが剣道着に着替えていた。
 「練習つけて!!」
 「え?今から?」
 「うん」
 祐巳の目は真剣だった。
 祐巳は、令姉ちゃんの後を追うように剣道を始め、今では令姉ちゃんから一本を取ることさえある。
 「……わかった」
 令姉ちゃんは頷いた。

 「いやぁぁぁ!!!!」
 「はぁぁ!!」
 令姉ちゃんと剣道場で何度も竹刀を合わせる。
 「はぁはぁ」
 「祐巳、どうしたのさ。いつもの動きがないよ」
 「令姉ちゃん……」
 「そんな無茶苦茶な動きだと体力の消耗も激しいんだよ」
 「わかってる!!」
 祐巳はつい怒鳴った。
 「祐巳」
 「令姉ちゃん、由乃にロザリオ渡した?」
 祐巳の言葉に令姉ちゃんは沈黙する。
 「渡したでしょう?」
 「うん、渡したよ」
 祐巳の睨んだような視線に、令姉ちゃんは頷いた。
 「そうか……」
 自分がバカみたいに思えた。
 幼い頃から病弱な由乃。
 何をするときも体が祐巳よりも弱いからと言う理由で、祐巳よりも大事にされてきた。
 お父さんも、お母さんも、令姉ちゃんまでも。
 祐巳が剣道を始めた理由なんて分かっているのだろうか?
 「今日はありがとう」
 祐巳は一礼して、剣道場を出て行った。
 残された令は、祐巳に聞こえないような声で、ただ一言。
 「ごめん」
 と、呟いた。


 家に戻った祐巳は一度だけ由乃の部屋を覗く。
 部屋は暗く眠っているのか静かだった。
 祐巳は、そのまま自分の部屋に戻り。汗まみれの体を洗おうと着替えを持って部屋を出る。
 そして、体を洗い汗の匂いを確認すると部屋へと戻る。
 部屋には由乃がいた。
 「どうしたの?」
 由乃は、令姉ちゃんが祐巳と由乃に色違いでくれたヌイグルミを抱きしめて、ベッドに座っていた。
 「どこ、行ってたの?」
 「道場で練習」
 「令ちゃんと?」
 「うん」
 「そうか」
 「……令姉ちゃんからロザリオ貰ったんだって」
 「うん」
 「そうか」
 双子なのにこうも違う。
 「よかったね」
 「ごめん」
 「何で謝るの?」
 「祐巳も令ちゃんの妹に成りたかったでしょう」
 「……くっ」
 「ごめん」
 「……謝らないでよ」
 「えっ?」
 「謝らないでよ!!」
 祐巳はつい怒鳴ってしまった。
 「何時もそうだよ!!由乃は持病があるから誰からも大事にされて!!私が剣道を始めたのも、由乃よりも令姉ちゃんに近づきたかったからなのに!!」
 「ごめんね」
 「だから、謝らないでよ!!私が、惨めになるだけじゃない」
 「ごめんね」
 座り込む祐巳を由乃がそっと抱きしめる。
 「ごめんね、こんなお姉ちゃんで」
 こんな時は由乃は昔から、ただ、謝り続けるだけだった。
 ……。
 …………。
 「泣き止んだ?」
 「うん」
 「よかった」
 「……お姉ちゃん?」
 ようやく泣き止んだ祐巳は、由乃の様子が変なことに気がつく。
 「お姉ちゃん!!」


 『では、お大事に』
 ドアの向こうからはお医者さんの声が聞こえる。
 祐巳はタオルを濡らし絞って由乃の頭に乗せる。
 「はい、ヒヨコのタオル」
 「ありがとう、祐巳」
 「バカ、無理しすぎだよ。由乃」
 祐巳はそっと布団の上から由乃の上に上半身を寝かせる。
 「重いよ、祐巳」
 「そんなに重くないもん!!剣道で体鍛えているし」
 「じゃぁ、筋肉ゴツゴツ」
 「抱き心地いいもん!!」
 「誰が言ったのよ、それ」
 「由乃の知らない先輩」
 祐巳は布団の下に硬いものがあることに気がついた。
 ……令姉ちゃんのロザリオ。
 「由乃が元気に成って学校に来たら紹介してあげるよ、私のお姉さまに成るかもしれない人だから」
 「ふーん、本当?」
 明らかに疑惑の目。まぁ、確かに、そんな相手は居ない。
 「本当よ、本当」
 「そうなの?でも、私が認めない人とは姉妹に成っちゃダメだよ」
 「何よそれ?」
 「とにかく私が認めた人とじゃないと姉妹にはさせません!!」
 「横暴」
 実は由乃の方が祐巳よりも気が強い。
 「横暴でも何でも、それがお姉ちゃんの務めだから」
 「お姉ちゃんて言っても、数分違いじゃない」
 「それでも、お姉ちゃんだもん」
 少しふてくされる由乃。

 それを見て祐巳は笑い。

 由乃も笑った。


 それは同じ笑いだった。








 


 何でしょうコレ?
 行き当たりバッタリに書きすぎた感じ……。
                                  『クゥ〜』


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