【2068】 これが私の答え  (オキ&ハル 2006-12-21 06:44:41)


もちもちぽんぽんしりーず。
【No:1878】ー【No:1868】ー【No:1875】ー【No:1883】ー【No:1892】ー【No:1901】ー【No:1915】ー【No:1930】ー【No:2011】ー【No:2015】ー【No:2023】ー【No:2042】ー【No:2057】ーこれ









榎本桂


このまま続けてしまえば、と思わないこともなかった。
きっかけは祐巳さんと蓉子さま。
「実は目的があって、妹になったんです。」
そう言ったとき、お姉さまは何も言わなかった。
ただ、顔を歪めただけ。
「ごめんなさい。」
泣きそうになっても泣かなかった。

悪者は明らかに私で、・・・悪者が泣いちゃだめでしょう?

「私だけの個性が欲しくて・・・。」
全てを話した。
お姉さまはやっぱり何もいわない。

無言でロザリオを差し出した。
「解ったわ。」
掌からなくなる重さ。
コツコツと、革靴の音を鳴らして離れていく姿が見える。

悪いのは私です。





「でも、お姉さまのことが大好きです。」



だから、言うことすら許されない。











島津由乃



きっかけは
「由乃ちゃん、それ、楽しい?」
単純に問うような江利子さまの言葉。
令ちゃんが連れて来て以来、度々部活で遅くなる隙をついて訪ねてきていた。
もう何度くらい此処に来ただろう、季節はもう秋になる。
「何がでしょう?」
薄々ながら、私が意図的に大人しく振舞っていることに気づいてはいたらしい。
それにしても、我ながらツンとした口調だった。
「ばれているのを気づかない振りして誤魔化すのは、3流のすることよ。」
もともと長い瞳を細く、まるでチェシャ猫のように笑う。
「ずいぶん目敏いんですね。」
明らかに先と口調を変えた。
もっとも、心臓のせいであまり感情を昂らせられないからであって、仕方のないことだとも言える。
「ふふ、やっぱりそっちが本性?」
「さて、どっちでしょう?」
挑発するように言ってあげたのに、変わらず楽しそうな顔。
「由乃ちゃん、これ、あげとくわ。」
そう言うと、首からロザリオをはずした。
「え?」
「それとこれ。」
学校帰りに寄ったから、学生鞄の中から小さな箱を取り出した。
ふたを開けると、
♪〜〜♪〜〜♪〜〜
『エリーゼのために』か、なんてチープな。
「それで、これ二重底になってるから。」
カタンと音をさせて、私に見えるように中にロザリオを入れた。
「安っぽいなんて言わないでね。
これは、私の死んだ祖母が買ってくれたものなんだから。」
指で軽くつまみベッドの上に出した私の手の傍らに、重力に任せて落とした。
「じゃ、私もう帰るわ。」
鞄を閉じると、ドアの方へ向かう。
「もし、私が今江利子さまがロザリオを持ってないことを令ちゃんに言ったら、どうする?」
ペースを握られっぱなしの嫌味のつもりだった。
「言えば?」
にっこりと、令ちゃんがどんな顔をするか、それすら楽しみというような顔で振り返る。
「くっ・・・。」
何も言えなくなってる私に歌うように

「私、そっちの由乃ちゃん、割と好きよ。」

―――ガチャン―――
残された箱を開くと
♪〜〜♪〜〜♪〜〜
やっぱりさっきと同じ音が流れる。


令ちゃんは、江利子さまのあーゆうところが気に入ったのかな?





「血が近いからって、好みまで似なくても良いでしょうよ。」


口から出た悪態が妙に流れる音楽にマッチしている気がした。











鵜沢美冬と榎本桂



返されてから約2週間。
私は、桂を呼び出した。
「貴女が清算したことに対して、私には何か言う権利があるわよね。」
その際そう言ったものだから、桂はおどおどした様子で姿を見せた。
ほっぺにビンタ位は覚悟しているかもしれない。
「『桂』ちゃん、顔を上げなさい。」
敢えて、呼び捨てにしなかった。
「・・・。」
俯いて何も言わない。
「顔を上げなさい。」
上級生の威厳を使ってあげさせた。
「覚悟は出来てるわよね。」
「・・・はい。」
ゆっくりと目を閉じ、外目からでも歯を食いしばったのが分かる。
やっぱりビンタは覚悟していたらしい。
私は右手を上げた。





「馬鹿。」






そっと、頬を撫でた。
桂は感触に驚いたようで、恐々と眼を開けた。

「貴女が最初、そんなつもりだったなんて気付いていたわよ。」

「え?」
「ずっと一緒にいるのに、気付かないわけないでしょう。」
何故?という顔をしている桂が可笑しい。
「じゃあ、何故・・・。」
「言わなかったか?って?」
言葉を続けると、こくりと首を縦に振った。
「決まってるじゃない。」
不思議そうな顔をしている桂が憎たらしくなって、きゅっとほっぺを抓ってやった。
「私が、やっぱり『桂』が好きだからよ。」
抓られながら、滴を流した。
「お姉さま。」
「馬鹿、もっと早く、言われる前に気付きなさいよね。」
「ごめんなさい。」
私が手を離すと、涙を袖で拭っている。
「もう返さないでよね。」
ポケットからロザリオを取り出す。
これは、桂のものだと決めていたから自分の首にかける気がしなかった。
「・・・良いんですか?」
上目遣いで、確認するように尋ねてきた。
「・・・もう一度抓られたい?」
笑顔で言ってやった。
「いえ。・・・はい、もう二度と。」
かけ易いように首を傾ける。


あるべき物があるべき場所に戻った。


そう思いたい。







「そう言えば、祐巳ちゃんと2人で話をする機会があったの。」
今日は部活は自主的にお休みすることにした。
「そうなんですか?」
「ええ、とても良い友達なのね。」
「でしょう?」
うれしそうに答えた。
「・・・ずいぶん楽しそうね。今日は祐巳さんたちと帰ったら?」
「え、嫌です、嫌です。お姉さまといる方が楽しいです。」
ぷいっと顔を背けたら、あわてて顔を覗き込ませてきた。
解っている、祐巳さんや蔦子さんは私とは比べるものではないことを。
「冗談よ。」
「お姉さまの意地悪。」
くすくす。
今日は、これから何処かへ遊びに行くことにした。
握った手と手。
通いなれた並木道がとても新鮮に感じる。

(桂もわくわくしてくれているかしら。)

「今日は、何処に行きましょうか?」
そう言ってくる桂の顔は笑っていて。


「そうね〜・・・。」
疑問はどこかに飛んでいった。











鳥居江利子と島津由乃



「ごきげんよう。」
久しぶりにビスケット扉を開くと、休む前と同じような風景。
強いて言えば、お客さん扱いだった祐巳ちゃんの前にも書類の山。
「江利子ちゃん、肺炎は治ったの?」
「は?」
その問いは全員の共通した思いだったらしく全員が同じような顔で見てくる。
そういえば、教室でもそんなこと言われたような・・・。
「肺炎なんて患ってないですよ。」
理由の想像はつく。
あの見栄っ張りで過保護な父親のせいだ。
「え?じゃあ、どうしたの?」
「ただ、親知らずを抜いただけですよ。」
「「「は?」」」
面白いぐらい皆の顔が歪んだ。
「・・・なんでこんな長い間?」
やっぱり聞いてきますか、お姉さま。
「病院行くのが嫌でほっといたら熱出しちゃって、そしたら親が救急車呼んじゃったので、世間体のためしばらく入院してました。」
ちょっとかわいこぶった感じで言ってみたけど、あんまり効果は無いようだ。
「それは、大変でしたね。」
祐巳ちゃんの少しずれた意見に冷たい視線が集まる。
恥ずかしいのか俯いてしまった。
「はぁ、まあ良いわ。とりあえず、退院おめでとう。えっと、令、少し分て・・・。」
「あ、ちょっと待ってください。」
髪をかきあげながらの紅薔薇さまの言葉をさえぎった。
「由乃。」
「はい。」
何?と、問われるより早く。
「少し、抜けさせてもらいます。」
よく展開が飲み込めていないメンバーに、由乃はぺこりと頭を下げた。
「じゃ、行きましょ。」
「ちょっと、何処に行くの?」
今の展開をかろうじて理解しかけたらしい人の代表としてお姉さまの声。
一応、全員に向けて言った。
「ちょっと、由乃とロザリオの授受をしてきます。では。」
―――バタン―――
扉を閉めると、すぐ脇に由乃がいた。
「どんな顔をしてるかしらね。」
笑いながら問うと
「驚いてるに決まってますよ。」
笑いながら返してきた。
「そりゃそうね。」
「行きましょう。」
「ええ。」
歩き出す由乃についていく。











水野蓉子と福沢祐巳


「良かったですね。」
「そうね。」
由乃さんと江利子さまがロザリオの授受をしたことをリリアンかわら版に載せてから数日。
復縁を望むスールがロザリオの授受をしているところを見かけることが多い。
「でも、きっかけが私たちだなんて想像もつかなかったわ。」
「そうなんですか?」
はぁー、とため息をつきながらの言葉に蓉子さまを見た。
「私だって何でもお見通しってわけじゃないのよ。」
苦笑いをうかべて、そして何故か立ち止まった。
「ところで、祐巳ちゃんっていじめっ子気質?」
「は?」
私も立ち止まる。
「私、ずっと『お姉さま』って呼んでくれるの待ってるんだけど?」
「・・・あ!」
「・・・忘れてた?」
呆れたような声と顔。
「・・・はい。」
正直に答えると、
「は〜、ずるいわ。
私、ずっと今日かな、今日かなって待ってたのよ。」
片手を頬にあてたまま腕を組んで、悲しげな顔をした。
私はあわてて頭を下げる。
「すいません、蓉子さま。」
「お姉さまよ。」
腰を曲げたまま頭だけ上げると、蓉子さまの顔。
「う〜〜。」
この距離もあって恥ずかしがっていると、ほっぺをぷにぷにされた。
「まだ焦らす気なのね。
じゃあ良いわ、ずっと祐巳ちゃんって呼ぶから。」
くるりと回って歩き出す。
「わっ、待ってください。」
「嫌よ。」
追いかけても冷たい返事。
「〜〜〜。」
いじめられっぱなしは楽しくない。

「待ってくださいってば、『お姉さま』。」
走って追いつくと、腕に飛び込むように抱きついた。
「きゃ、ち、ちょっと危ないじゃないの、祐巳ちゃん。
それと、恥ずかしいから離れて。」
抱きついているせいで見えないけど、周囲を見回してでもいるのだろうか。
でも、知らない。
だって、
「嫌です、お姉さま。」


「・・・もう、少しだけよ。『祐巳』。」

「はい。もう少しだけ。」


見えたお姉さまの顔は赤くて、答えた私の顔もきっと赤い。











もう一度、鳥居江利子と島津由乃



マリア像の前が由乃のリクエストだった。
「さて。」
由乃がポケットからロザリオを出すと私に差し出した。
「これって、返されたって言うのかしらね?」
「さあ?少なくとも掛けてはいませんよ。」
手渡されたロザリオを掛けやすいように輪にする。
「『由乃ちゃん』妹になって欲しいのだけど?」


「お受けいたします。『江利子さま』。」



冬の香り、早くも顔を見せた星空の下、マリア様だけが見ていた。










「そういえばあのオルゴール、祖母からのプレゼントだなんて嘘ですよね?」
「あら、気付いた?」
「裏に値段のシールが張ってあれば気付くと思いますけど。」
「良かった、由乃が気付かないような鈍い子だったら、どうしようって心配になってたところだったから。」





「・・・デコ。」
「何?AAカップ。」



「ふう、私お姉さまのそういうところ嫌いじゃないですよ。」
「奇遇ね、私も由乃のそういうところ嫌いじゃないわ。」

意地でも、好き。と言わないところが私たちらしい。


「「でも、さっきの言葉を次に言ったら絶対に許さないわ(です)よ。」」











えっと、最後のAAカップは、大ファンのいぬいぬさんよりお借りしました。この場を借りてお礼、謝罪申し上げます。はい、黄薔薇革命終了です。長かった。如何に、原作と違う道を行くかに悪戦苦闘ですよ。でも、楽しんでくださったら嬉しいです。さて、恒例?・・・次行って良いですか?良いとおっしゃてもらえたら茨の森ですね。(オキ)

読んでくださってありがとうございます。今現在、オキから何も届いてないので茨の森はゼロ。どうなることやらです。(ハル)

ボタンありがとうございます。


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