「ねえ、乃梨子さん。見るだけでもおかずになる物ってあるのかしら?
私の先輩の友人はイチゴジャムでごはん三杯はいけるとおっしゃる人がいる人がいるのだけど、本当かしら? それとも、その方は、ごはんの上にイチゴジャムをかけてごはんを三杯も食べるのかしら?」
ある日の休み時間。美幸さんとなんてことは無いことを話していたとき、思い出したように美幸さんはそう言った。
「見るだけで? 男の子は良くそう言う話聞くけどねえ………。まあ、人は好きずきだから、ごはんにイチゴジャムをかけて三杯くらいごはんが食べられる人も中に入るんじゃない? 見るだけでおかずになるものもあると思うよ。例えば、祐巳さま。祐巳さまは祥子さまの写真でごはん三杯はいけると以前おっしゃっていたことがあるし、祐巳さまの写真でごはん三杯いける人もいるんじゃないかな?」
そう言って、くるくる縦ロールのお嬢様をちらりとながめる。
「私は、祥子さまや、祐巳さまではとてもじゃないけどごはんなんか食べられないけどね。後どんなに、お姉さまが、綺麗に微笑んでいたとしても私には無理だけどね」
私そう言ったとき、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った
「まあ、それがふつうですよね」
美幸さんはそう言って、納得して席にむかった。
(でもね、うさみみをつけた志摩子さんならごはん三杯は軽くいけるんだな〜。これが)
席に向かう美幸さんを見ながら、内心でそう呟いたのは、私だけの秘密だ。