【2095】 これがリリアン落語研究会  (joker 2007-01-01 00:50:35)


 注:ネタバレ100%です。
 道化の小ネタ13番勝負





?Do you remember me?

 ちょっと忘れられがちだが。
「あらー、祐巳さんモテモテねぇ」
「えっ!? 誰?」
「…………」
 彼女は藤組の桂さんである。






?影に生き影に潜む

「とにかく、ま、がんばってね」
 そう肩を叩いてから、すでに上履きに履き替えていた桂さんは、小走りで教室という、番外の彼方へ消えていってしまった。
 残された祐巳はというと、とりあえず、冥福を祈ってみたりした。






?case A&M

 下駄箱に入っていた二つのチョコレートは、ロッカーの中に置いていくことにした。

「かしらかしら!?」
「受け取り拒否かしら!?」
「私達が愛と哀を込めて作ったのに」
「想いは届かずくずかごへ」
「かしらかしらぁ……」
「悲しいかしらぁ……」

 ……紛らわしい包みや袋を持っていくのは、間違いのもと。去年の大失敗を忘れてはいけない。
 そう自分に言い聞かせた。






?ぶらっくすとまっくぅ

「これは、……びっくりチョコレート?」
 見た目に見覚えがあったから、そう尋ねたのだろう。しかし、今年のは。
「の、第二段です」
「第二段?」
「びっくりするくらい憎悪がこもってます」
「…………」
 青ざめるお姉さまも、とても素敵ですよ。






?一年前の事でした

「ごきげ――」
 だが次の瞬間自分の目に飛込んだ光源に驚いて、思わず扉を閉じた。
 今の何だ。眩しくって目が潰れる。
「祐巳ちゃん?」
 扉の後ろから、江利子さまの声が聞こえた。
「すみません、私っ」
 見てはいけない凸を見てしまった。
「……いい度胸してるわね、祐巳ちゃん」






?以心伝心

 階段を上りながら、志摩子さんが笑った。
「聖さま、今頃きっとくしゃみをしていらっしゃるわね」
 聞いている者がとろとろになっちゃうような、甘い声で。


「ああぁー、志摩子ぉ〜」
 突然、隣にいる佐藤さんが悶え始めた。
「しかも、聖さまだなんてー。嬉しいよぉ〜」
 しかも意味不明な事をほざいている。正直言って、きもち悪い。
「志摩子ぉぉぉぉぉぉ!!」
 私はそんな佐藤さんを無視して、無言で携帯のアドレス帳の「み」の欄を呼び出した。






?催眠実験

(まずは、ありがとうでしょう)
 祐巳は真美さんの後ろに回って耳打ちした。
「まずは、ありがとう」
(とても嬉しいわ)
「と、とてもうれしいわ」
(愛してる)
「あ、あいしてる」
(腕がだんだん重くなる)
「う、腕がだんだん重くなる……」
(瞼がだんだん重くなる)
「まぶたがだんだん重く……」
(あなたは瞳子ちゃんです)
「ギュルルルン!!」

 こいつは使える、と祐巳は心の中でほくそ笑んだ。






?やっぱり貴女はガチだから

 週明けにはケロリといつもの瞳子に戻っていた。
 あれはいったい何だったのだろう。まるで夢でもみていたみたいだ。
「瞳子」
 試しに、呼んでみる。
「なあに?」
 ほら。いつもの様な作り笑顔で振り返る。
「愛してるよ」
「はぁ!?」
 素っ頓狂な声を上げて、また、変なものを見るような目でこちらを見てくる。
「何を言っているのよ、乃梨子」
 乃梨子。
 そこから瞳子のにじみ出る愛情が感じられた。






?ジェイルオルタナティブ

「祐巳と向かい合うの怖い?」
「え?」
「怖いわよね。私も怖いもの」
 祥子お姉さまの口からは、思いがけない言葉が飛び出した。
「あの子は欠けている部分があまりにも多すぎる。だから、一緒にいると自分の欠点を指摘された気分になって、心が揺れる。見たくない、認めたくない、そんな風に」
「祥子お姉さま、それは違う人です」
 因は違えど果は同じ。






?奇跡の人

 彼女は社会科準備室の前で立ち止り、鍵がかかっていない事を確認すると、ノブに手をかけて扉を開いた。その時、初めて顔が確認できた。
(松平瞳子……!?)
 ちさとが心のなかで驚愕していると、突然、瞳子がこちらを振り向いて猛然と走って来る。
 その勢いに動けないでいる、ちさとの前まで近付いた彼女は、いきなり、ちさとの両手をガシッと両手で掴んだ。
「……あなただけです、あなただけです!!」
 なんか大泣きだった。






?触らぬ神に

「けんか売っているのか、われ」
 声に出さなかったが、由乃さんの唇がそう動いたのを祐巳は見逃さなかった。いや見逃してあげることにした。
 「ふぅ……」とため息をついて、なんとなく隣を見ると。
「本ぉ当、おバカさんなんだからぁ」
 ……声に出さなかったが、志摩子さんの唇が嘲笑を浮かべながらそう動いたのを……、何かもう嫌になってきた。






?その黒い衝動は

「でも、宝探しの範囲にここを入れたら、絶対に掘り返されるわよ。イベントの陰で植物達を犠牲にするなんて、よくないと思うけれど」
 さすが、環境整備委員。環境破壊には敏感だ。
「だから、温室の周りに地雷か何かを仕掛ければ良いと思うのだけれど」
 前言撤回。
 志摩子さんは志摩子さんだった。






?ツンデレの末路

「祐巳さま。今までの数々のご無礼、お許しください」
「えっ!?」
 ちょっと待って、何が起こっているのかわからない。
 どうして、そこから「お許しください」につながるのだ。
「その上で」
 そして、最敬礼の姿勢から一旦頭を上げた。
「私を、祐巳さまのいみょ」

 台無しだ。




一つ戻る   一つ進む