【2115】 そんなはずはない  (杏鴉 2007-01-08 12:08:28)


『藤堂さんに古手さんのセリフを言わせてみる』シリーズ

これは『ひぐらしのなく頃に』とのクロスオーバーとなっております。惨劇は起こらない予定ですが、どうぞご注意を。

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「お姉さまが疑わしいとは、どういう事ですか?……いくら蓉子さまでも怒りますよ」

言葉としてはキツイ言い方だったが、震えた声には迫力なんてまったくなく、情けないだけだった。
蓉子さまは私の声なんて聞こえていないかのように話を続けた。

「人を消す。……言葉で言うのは簡単だけれど、実際に行うのは容易ではないわ。一介の女子高生なんかにできるわけがない。でも、小笠原家なら……どうかしら?」

そんな事で……そんな理由でこの人は私のお姉さまを疑うと言うのか……?
ヒドすぎる。私は祥子さまがどれだけ蓉子さまの事を尊敬し、慕っているか知っている。その祥子さまに対して、なんてヒドイ事を……。

「私ね、令と由乃ちゃんが狹捷鮫瓩靴討靴泙辰討ら、気になって調べたの。そうしたら同じような狹捷鮫瓩惑に数件も起こっていたのよ。そして消えた姉妹の、少なくとも片方は祥子と接点があった……」

…………え?

「で、でも! 祥子さまは幼稚舎からリリアンだから、接点のある人なんていくらだって……」
「そうね、祥子もそう言って否定していたわ。……でも全員、祥子と反目、もしくは対立していた人たちばかりなの。こんな偶然ってあるかしら?」

蓉子さまは私が反論する事など、きっと話をする前からお見通しだったのだろう、内容も含めて。
一つ一つ逃げ道をふさぐように、冷静に、着実に、反論の芽を摘み取っていく。

「でも……でも、令さまは黄薔薇のつぼみだったのでしょう? 祥子さまと同じ、つぼみだったのでしょう? 山百合会の仲間だったのではないのですか?」
「えぇ、そうよ。そして祥子にとって親友と呼べる存在だったわ」
「じゃ、じゃあ……!」

私の縋りつくような言葉にも、蓉子さまは淀みなく答える。

「でも花寺との合併話の時は、対立していたのよ。令はいつも祥子を抑えようとしていたわ。祥子はやり過ぎだ、もっと冷静になるべきだって言ってね。……本来なら私がやるべきだった役割をあの子がやってくれていたのよ。私が仕事に追われてできなかった事を、あの子が代わりにやってくれていたの」

その時私は、蓉子さまの表情に痛みが混じっている事に気が付いた。
あぁ、そうか……この人は後悔しているのだ。令さまたちが狹捷鮫瓩靴討靴泙辰燭里蓮⊆分のせいではないかと思い悩んで。
でも、蓉子さまは間違ってるよ……。

「祥子さまは、そんな事をする方ではありません」

確かに好き嫌いは多いし、ヒステリーは起こすし、天邪鬼だし、罰ゲームと称して妹にとんでもない格好を強要したりする困ったさんだけど。
何人もの人を……ましてや自分の親友を消してしまうだなんて事、するはずがない。お姉さまは無関係だ。

私のきっぱりとした言葉に、蓉子さまは「祥子は幸せ者ね」と微笑んだ。
けれどそれはほんの一瞬の事で、すぐにまた痛みの表情に戻ってしまった。

「私も正直言って、祥子が直接かかわっているのかどうかは分からないの。ひょっとしたら、あの子は何も知らないのかもしれない……」

でもそれは、同じようでいて違う表情。
さっきの痛みの名は後悔。今の痛みの名は罪悪感。……妹を疑っているという罪悪感だ。
今になってやっと蓉子さまが苦しんでいる事に気が付いた私は、よく知りもせずヒドイ人だなんて思った事を、心の中でそっと謝っておいた。

「でもね、小笠原家は何らかの形でかかわっていると私は思っているわ」

つい今しがたとは打って変わって厳しい表情で言う蓉子さまの口調は、とても確信めいたものだった。
何か知っているのだろうか……?

「ねぇ、祐巳ちゃん。祐巳ちゃんには祥子の様子をそれとなく探ってほしいの。祥子の疑いを晴らすために、お願い」

ズルイ言い方だ、と思った。ここで断ったら、私も祥子さまの事を疑っているみたいじゃないか。
だからだろう、私が挑戦的ともいえる言葉を返したのは。

「では万が一、探ってみて祥子さまの疑いが晴れるどころか、ますます深まってしまったら……蓉子さまはどうなさるんです?」
「そうねぇ……その時は叱りとばして更生させるわね」
「……へ?」
「妹のあやまちを正してあげるのも、姉としての役目ではなくて?」

自信満々な笑顔の蓉子さまは、間違いなく爐姉さま瓩隆蕕鬚靴討い董帖鳥笋老覿鼻⇒峪劼気泙陵蠅澆魄き受ける事にした。



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