それは、何の予兆もなく、突然起こった。
「ごきげんよう、祥子」
「ごきげんよう、祥子様」
「ごきげんよう、お姉さま」
「ごきげんよう。突然だけど、これを見て」
祥子は、薔薇の館に来て早々にこう言った。
妙に生き生きしている祥子を不審に思いながらも、祐巳・令・乃梨子の三人は、渡されたプリントを読み始めた。
貴方の名前は『』←好きな名前をどうぞ。
貴方には十二人のかわいい妹がいます。
彼女たちは、姉である貴方が大好きです。
「お姉ちゃん、大好き♪」
「おねえちゃま。祐巳、頑張って応援するからね♪」
「おねぇ!ボクと一緒に運動しようよ!!」
「お姉さま、ラブよ♪」
「おねえたま。ゆみね、おねえたまのこと大好きだよ!!くしししし♪」
「姉上様。好きです」
「ねえさま。デザートは姫ですの♪」
「姉貴。資金援助して♪」
「やぁ、姉君…。…生贄なんて…どうだい?」
「姉君様は、私がお守り致します!!そしてその後は…ぽっ♪」
「姉ちゃま、チェキです!!」
「ねえやー。お馬さん、して♪」
*…妹の名前は全て祐巳です。ご了承下さい。
開発者:小笠原祥子
発売日:200×年 ○月□日
価格:29800円(初回限定版39800円)
初回限定版には1/1祐巳抱き枕が付いて来ます。確立は1/12。お目当ての祐巳が付いてきた方はラッキーですね♪
*内容は連絡をせずに変更する可能性があります。ご了承下さい。
連絡先…090−××××−××××
「…お姉さま。これは何でしょうか?」
祐巳が笑顔で姉である祥子に聞いた。
普段百面相をする祐巳だが、ここまで完璧な笑顔は初めてなようで、令と乃梨子は見惚れていた。
しかし、同時に恐怖していた。
いつもなら、どういった感情なのかは簡単に読み取れるのだが、今回は全く分からない。
しかし、祥子は上機嫌すぎて、祐巳の様子に気づいていない。
「あら。ごめんなさい、祐巳。うっかりしてたわ。題名は『ユミユミプリンセス 〜お 姉さま大好き〜』よ」
一人できゃあきゃあ言っている祥子は、年頃の女の子のように無邪気だった。
令と乃梨子はそんなことを考えながら、そっと薔薇の館を抜け出した。
それに気づいた祥子は不思議そうな顔をした。
「あら?二人とも、帰っちゃたのかしら。まあ、いいわ。
祐巳。何か感想はあるかしら?」
「そうですね。では一緒に来てください」
「ええ、分かったわ」
何故、ここでは言えないのか?
このとき祥子は全く微塵も疑問に思ってなかった。
マリア様の像の前。
放課後なのでたくさんの生徒がここを通る。
そして、今日はここに集団が出来ていた。
その中には、新聞部や写真部の姿も確認できる。
「祐巳。何でわざわざここまで来たの?」
「この場所は、お姉さまと初めて会った場所ですから。それに、たくさん人が通ります し。 ここで白黒はっきりさせたいんです」
「祐巳…」
確かにここは二人が始めてあった思い出の場所だ。
しかし、それなら二人っきりになれる温室でもいいのではないか?
さらに、白黒とは?
しかし、祥子は全く気にしていなかった。それほどに、今日の祥子は機嫌が良かった。
祐巳が行動を起こすまでは。
「お姉さま。これが何か分かります?」
祐巳は、笑顔のままロザリオを取り出した。
「もちろんよ。私との姉妹の証でしょ?それがどうしたの?」
祥子は感想の事しか頭にないようだ。
本気で祐巳が喜ぶと信じているのだろう。
祐巳は、そっと祥子の手を、自分の手で包み込んだ。
「…祐巳?」
さすがにおかしく思ったのだろう。
祥子は祐巳の手を振りほどこうとしたが、びくともしない。
それどころか、段々力が強くなってきた。
「痛い!痛いわよ、祐巳!」
周りにいた生徒たちも、これはおかしいと思い始めたのか、二人を引き離そうと一歩近寄った。
「近寄らないで下さる?」
しかし、祐巳から発せられる殺気で、それ以上近寄れなかった。
その結果に満足したのか、再び祐巳は祥子を見た。
「ひっ」
祥子は小さく悲鳴を漏らしたが、祐巳はそれを無視した。
「私、お姉さまの事、大好きでした。お姉さまと過ごした日々は、きっと忘れません」
そう言って、祐巳は祥子の手を離した。
その手にはロザリオは無く、ロザリオは祥子の手にあった。
「祐…巳。これは…」
「さようなら、『祥子様』。もう会うこともあまり無いでしょうけど。廊下ですれ違っ たら、挨拶ぐらいはしますね。後、山百合会の皆様方にもよろしくお伝えください」
そして、祐巳は去って行った。
誰にも止められることなく。
祥子を始めとして、その場に居た生徒・教員を問わず、誰も動けなかった。
〜後書き〜
始めまして。学生Y・Iという者です。
すいません!!『シスタープリンセス』とのクロスでギャグにしようとしたのですが、かなり暗くなってしまいました!要望があったら、いつか続きを書きたいと思います