【2139】 まりりんはお年頃異性的な趣味の分野と交代  (砂森 月 2007-01-24 23:08:59)


※未使用キー限定タイトル1発決めキャンペーン第10弾
 タイトルがタイトルなのでオリキャラで行きます



 思春期の女子高生が休み時間に話すことといえば、大抵は話題のアイドルとかファッションやドラマ、それに男の子の話になると私は思う。思うのだけれど。
「んー」
「どうしたの」
「やっぱり男の子って野球とか好きなのかな?」
「突然何よ」
 多分に漏れず男の子が気になる健全な女子高生(多分)の私は、少しでも男の子の気持ちが知りたくて少年漫画を読んでいた。内容は、いわゆる野球マンガ。
「だって友ちゃん、そういうの詳しそうだし」
「そんなことないわよ」
「ねえ、タイトル教えてよ。今度私も読みたいし」
「だったら買わなくても貸してあげるわよ」
「わーい、友ちゃん大好き」
 そして友人の真理もやっぱりそういうのには興味があるみたいで、私が少年漫画を読むたびに食いついてくる。ここまでは多分、ごくありふれた(学校にマンガうんぬんはおいといて)学校風景だと思うのだけれど。
「2人とも相変わらずね」
「あっ、加奈ちゃん」
「加奈。相変わらずって、やっぱり男子のことって気になるじゃない」
「だからって少年漫画を片っ端から読みあさるのはどうかと思うけど?」
「うっ。い、いいじゃないのよ気になるんだから」
「いわゆるお年頃ってやつ?」
「もーっ、あんたはどうしてそう達観しているのよ」
「だって、私には愛しのお姉さまがいるんですもの」
「はいはい、ごちそうさま」
 女子校だから、そういう話もあるみたい。

 私が男の子のことが気になるのは、なにも興味本位だけじゃなくて。
「邦彦くん、待った?」
「そんなことないよ。僕も今来たところだから」
 実際に付き合っている人が今いるから。ちょっと小柄な彼だけど、なかなかどうしてカッコイイのだ。だからいつもひっついてないと誰かに逆ナンパされないか少し心配でもあるんだけど。
「試合、何時からだっけ?」
「午後1時からだよ」
「じゃあそれまで喫茶店寄ろうよ。私、ホワイトココアが飲みたいなー」
「いいよ、僕はカフェラテにしようかな」
 今日のデートは野球観戦。彼曰く、休日のデーゲームは学生でも見に行けるから嬉しいらしい。外野席が無料なのが経済的にも助かるし。私も野球に興味持ったところだし、楽しみながら一緒にいられるなら大歓迎かな。

「いやー、まれに見る名勝負だったなー」
「そうなんだ」
 試合は白熱した投手戦で、延長12回表にようやく得点が入ってそれがそのまま決勝点になった。球場は最後まですごく盛り上がって、2人もデートなのを忘れるくらいに盛り上がっちゃったりして。
「かたや延長12回まで投げきった投手、かたや11回まで無安打の投手。最後に四球出した後救援が打たれたけど、こんな白熱した投手戦は滅多に見られないよ」
「じゃあ今日の試合見られたのって、ひょっとして凄いラッキー?」
「うん。間違いなく今年の名試合10選に入るんじゃないかな」
「へぇ、そんなのあるんだ」
「いや、しらないけど」
「あはは」
 投手戦で展開が早かったので時間にはまだ余裕がある。ということで近くのファーストフード店にはいることにしたのだけれど。
「あ、加奈に菜摘先輩じゃないですか」
「あら、友美ちゃんに真理ちゃんじゃない。どうしたの、そんな格好して?」
「「……へ?」」
 偶然会った菜摘先輩の発言に、私と加奈は思わず唖然としてしまった。

「えーっと……」
 注文を取ったのはいいんだけれど。流れで4人で座ったのはいいんだけれど、空気は凄く微妙。
「菜摘先輩?」
「うふふ」
 先輩は一人だけ落ち着いて微笑んでるし、邦彦くん?はなんか俯いちゃってるし。
「友美」
「加奈……」
「あなたまりりんとつきあってたの?」
「いや違うから。というかどのあたりが真理なわけよ」
 加奈まで。まあ菜摘先輩の言うことは何でも信じるからね、愛しのお姉さまだから。でもあんた、私が返事するところ影から見てたでしょうに。
「うーん、ボーイッシュな服装だし薄化粧でそれっぽく見せてるから一見わかんないとは思うけど、真理ちゃんだよこの子」
「そんなこと。ねえ、邦彦くんも何か言ってよ」
「その通りです」
 あんですと?
「……ってことは、友美も知らなかったわけね」
「う、うん」
 今日2回目の大混乱。えーと、確か告白されたのは私の方で、ということは、えっと?
「ねーねー友ちゃん、友ちゃんって好きな人とかいるの?」
「あ、あの、先輩?」
 混乱してたら先輩の手がいつの間にか人形になっていた。というか何でそんなの持ち歩いているんですか。
「うーん、今のところはいないかな。なかなか男の子と会うこともないし」
「そっかー」
 しかも人形劇だし。ついでに人形が私と真理そっくりだし。でもってここで友美人形退場。
「やっぱり友ちゃんは男の人が好きなんだよね。どうすればいいのかなー? あ、そうだ」
 真理人形退場。でもって友美人形と、真理人形の代わりに邦彦くん人形。って、なんで?
「あのー」
「えっ、はい、なんでしょう?」
「これ、落としましたよ」
「あっ、ありがとうございます」
 邦彦くん人形退場。
「あれ、でもこんな紙私持ってない……というか、手紙? えーと、『落とし物なんて嘘付いてごめんなさい。時々同じ電車に乗っているといつも目で追ってしまい、最近になってあなたが好きなんだと気付いてしまいました。突然こんなこと言われても驚くとは思いますが、もし良ければ付き合ってもらえませんか?』……って、えーっ!? こ、これってラブレター? しかも私宛? うー、怪しいのじゃないよね? でも、か、かっこよかったし、悪い人じゃなさそうだし……」
 友美人形、1回引っ込んで再登場。この手紙もらったとき、加奈と菜摘先輩に相談したんだよね。
「菜摘先輩も大丈夫って言っていたし、加奈も影で見張っててくれてるし」
 そして邦彦くん人形登場。
「あ、あの、その、私で良ければ……」
「良かった。断られると思ってたから嬉しいよ」
 友美人形、退場。
「よかったー、これで友ちゃんと付き合えるよ。でもいいのかなぁ、こんな形で……ま、いっか。……こんな感じかな?」
 人形劇、終了。というか突っ込みたいところは山のようにあるんですけど。
「な、菜摘先輩」
「なあに、真理ちゃん」
「どうして、わかったんですか?」
「うーん、なんとなく?」
「当たりすぎなんですけど……」
 でも今はこっちの方が気になる。
「真理なのよね」
「と、友ちゃん……」
「私のこと、好きだったの?」
「う、うん。好き。大好き」
「そっか……」
 これがいたずらだったら、あるいはたとえば加奈だったら怒ってたかもしれないんだけど。真理は変なところはあるけれど嘘はつけない性格だし。
「じゃ、付き合っちゃう?」
「ふぇっ? いっ、いいいいいいいのっ?」
「いいよ」
「でっ、でもでも、私女の子だよ?」
「別にいいんじゃない? 好きなんでしょ?」
「そうだけどぉ」
「まあ一般的には恋人同士って言うと男女間をイメージするから私もそうだったんだけど。告白されてみたらそんなの関係なかったわ」
「じゃ、じゃあ……」
「これからよろしくね。好きよ、真理」
「な、なんか改めて言われると照れるよ……」
「あまあまですね、お姉さま」
「そうね、加奈」
 うわ、ギャラリーいるの忘れてた。というか2人ともさりげなく気配消さないで下さい。
「違うわよ、あなた達が2人の世界に入っちゃっただけ」
 それと心を読まないで下さい。
「……そういえば、どうしてそんな人形持っていたのですか?」
「ああこれね。この前2人を見かけたから何となく作ってみたの。こんなこともあるかなーって」
「どんな未来予知ですか……」
 というか見られてたんですね。ついでに気付いてたんですね。なんか菜摘先輩なら何でもありな気がしてきました。
「そんなことないわよ」
 だから心を読まないで下さいって。
「あ、そうだ。今度4人でデートに行きましょうか」
「「「へ?」」」
「遊園地がいいかな。新カップル成立記念に私のおごりね」
「そ、そんな「えーっ、いーんですかー」ちょっと、真理?」
 遊園地という言葉に真っ先に飛びつく真理。らしいといえばらしいんだけど、今の格好だとその態度は似合わないってば。
「えーと、加奈?」
 いいのかなぁという思いと大丈夫かなぁという思いを視線で向けると、加奈は「大丈夫、諦めなさい」という視線を返してきてくれた。
「友美ちゃんは? 悪い話じゃないと思うんだけど」
「そ、それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


 ちなみに後日、本当に遊園地に行きました。もちろん、2人にさんざんからかわれたのは言うまでもありません。


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